当帰
当帰

張仲景の古医書『傷寒論』の解説です。

今回の傷寒論は弁陽明病脈証并治 二百四十章・二百四十一章。
二百四十章では、発汗法・攻下法の選択を脉証により行うことについて。
二百四十一章では、もともと宿食があり、攻下が徹底しなかったため、
再び燥尿が形成されたものの証治について詳しく述べております。


二百四十章

病人煩熱、汗出則解。
又如瘧狀、日哺所發熱者、屬陽明也。
脉實者、宜下之。脉浮虚者、宜發汗。
下之與大承氣湯、發汗宜桂枝湯。二十六。

和訓:
病人煩熱し、汗出ずれば則ち解す。
又瘧状の如く、日哺所に発熱するものは、陽明に属するなり。
脉実なるものは、宜しく之を下すべし。
脉浮虚なるものは、発汗するに宜し。
之を下すには大承気湯を与え、発汗するには桂枝湯に宜し。二十六。


病人煩熱、汗出則解
病人が発汗せず、発熱して気分がイライラしている。
汗出すれば煩熱は治ることから、これは太陽病であることがわかる。

又如瘧狀、日哺所發熱者、屬陽明也
また瘧症のように発熱して、午後三時〜五時頃に発熱すれば
病は陽明に伝入していることがわかる。

脉實者、宜下之(下之與大承氣湯)
発汗法か攻下法かを行う選択には脉の浮沈で決定すればよい。
仮に潮熱があり脉実で有力な場合は陽明腑実証であるから
大承気湯で攻下すればよい。

脉浮虚者、宜發汗(發汗宜桂枝湯)
寒熱が瘧疾のように往来し、脉浮で虚寒の場合
邪は体表にあり、表はすでに虚しているので、
桂枝湯で営衛を調和し汗出させて解いていけばよいのである。

大承気湯
こちらを参照→【古医書】傷寒論: 弁陽明病脈証并治 二百七章・二百八章

桂枝湯
こちらを参照→【古医書】傷寒論を読む:弁太陽病脈証并治(上) 十二章・十三章

提要:
発汗法・攻下法の選択を脉証により行うことについて。

訳:
患者に煩熱があったが、汗が出て症状はとれた。
ところが今度は瘧病のように、毎日申の刻〔午後三時〜五時〕頃に
発熱するようになれば、病は陽明に入ったことを示している。
脈が実なら、攻下法で治療するとよい。
脈が浮虚ならば、発汗法で治療すべきだ。
攻下には大承気湯、発汗には桂枝湯を用いる。第二十六法。


二百四十一章

大下後、六七日不大便、
煩不解、腹滿痛者、此有燥屎也。
所以然者、本有宿食故也、大承氣湯。二十七。

和訓:
大いに下して後、六七日大便せず、煩解せず、
腹満して痛むものは、此れ燥屎あるなり。
然る所以のものは、本宿食あるが故なり。大承気湯に宜し。二十七。


大下後、六七日不大便、
煩不解、腹滿痛者、此有燥屎也。所以然者、本有宿食故也、大承氣湯

陽明腑実証で強い攻下法を行ったあとは、必ず熱実が除かれる。
しかし6〜7日経過しても大便が出ないのは
食べ物が再び腸内に結して宿食(食べた物が停滞)となったからである。
さらに裏では熱が生じ、煩は少しも治らず、
邪熱と宿食が凝結し、再び燥尿が生じた原因が宿食であるとわかった。

これは薬湯が服用したあと津液が充分に回復せず
病人の体力が調わず、しかも養われないことも原因として考えられる。
さらに飲食不節により宿食や穢物が胃腸内に蓄積し、
熱化して燥実となったのである。
この場合、大承気湯で宿食を下せば燥尿は除かれる

大承気湯
こちらを参照→【古医書】傷寒論: 弁陽明病脈証并治 二百七章・二百八章

提要:
もともと宿食があり、攻下が徹底しなかったため、
再び燥尿が形成されたものの証治について。

訳:
強力な攻下を行った後、六七日間も大便が出ず、患者は煩躁して不穏で、
さらに腹が膨満して痛む場合、腸内に燥尿ができている。
なぜこうなるかというと、もともと腸内に宿食があったからで、
大承気湯で治療するとよい。第二十七法。


参考文献:
『現代語訳 宋本傷寒論』
『中国傷寒論解説』
『傷寒論を読もう』
『中医基本用語辞典』   東洋学術出版社
『傷寒論演習』
『傷寒論鍼灸配穴選注』 緑書房
『増補 傷寒論真髄』  績文堂
『中医臨床家のための中薬学』
『中医臨床家のための方剤学』 医歯薬出版株式会社

生薬イメージ画像:
『中医臨床家のための中薬学』 医歯薬出版株式会社

※画像や文献に関して、ご興味がおありの方は
是非参考文献を読んでみて下さい。

為沢

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