こんにちは、本多です。
今回は腹證奇覧に記載している、
十棗湯の證の記事を掲載致します。


十棗湯

十棗湯  / 腹證奇覧より
十棗湯 / 腹證奇覧より


図の如く腹中に堅塊有りて、
其の状方長(細長く)にして、
之を按すも弛まず、時々掣痛する者、
此の證の準据(よりどころ)とす。
且つ、堅塊の状、譬えば胸端おり臍の辺まで長く、
四、五寸廻りの竹の太さを按すが如く、
或は胸より腹に至り細長く引張り、
或は短くして脇下の傍に手に当たる物あり。
其の大小長短によらず、只、掣痛の二字を眼とすべし。
掣は引なり、ビクビクと引痛むなり。
凡そ、痰飲有りて咳する者、
或は四支、腰腹掣痛する者、
その余其々の患を問わず、
胸腹掣痛するの準拠を以って此の方を用いて神効あることを知るべし。
余、此方を用い覚えて、
其の薬効の神なるを以って取ることを有りて云う。
大棗十戔、或は五、六戔を以って水一盞半入れ六分に煎じ、
滓を去りて甘遂の末を入れ、
調和して頓服(直に飲む)す。尤も効り。
但し甘遂末、病毒の浅深によりて分量の多少を考うべし。
或は二、三分、
或は四、五分、甚だしきに至りては戔、
大いに瞑眩して吐下傾るが如し。
必ずしも恐るべからず。

十棗湯の本方
芫花・甘遂・大戟・(各等分)大棗(五分)
右四味、末丸となし、水二盞分を以って、棗を煎じ六分に取り、
滓を去りて散一戔を入れ頓服す。
(克按ずるに、大棗五分の分量、恐らくは伝写の誤ちならん。六戔を用うるに甚だ効あり。)
又、右丸の方ありて、此に記す。
芫花(和物不可なり。薩摩藤と称するもの可なり)甘遂(よく肥たるもの可なり)
大戟(和物不可なり。女大戟と号するもの可なり)
右三味、各等分末となし、大棗の善く肥たる肉を取りて之を丸じ、小豆の大きさの如くす。


【十棗湯:組成】

芫花(げんか)

芫花『中医臨床のための中薬学』より
芫花『中医臨床のための中薬学』より

ジンチョウゲ科のフジモドキの花蕾。
性味:辛・苦・寒・有毒
帰経:肺・脾・腎
主な薬効と応用:
①瀉水除水:陽実水腫の腹水・
浮腫・尿量減少・便秘・脈が実などの症候に用いる。
方剤例→舟車丸
②逐痰滌飲:懸飲すなわち
胸部の痰飲積聚(胸水)による
呼吸困難・咳嗽・胸脇痛などの症候時に用いる。
方剤例→十棗湯
備考:陰寒の水腫や妊婦には禁忌。



甘遂(かんつい)

甘遂
甘遂

トウダイグサ科のドウダイグサ属植物の根。
性味:苦・寒・有毒
帰経:肺・脾・腎
主な薬効と応用:消腫散結・去痰
①瀉水除湿:陽実水腫による、
腹水・浮腫・口渇・尿量減少・便秘などの症候時に用いる。
方剤例⇒舟車丸
②逐痰滌飲:胸部の痰飲積聚(胸水)による、
呼吸困難・胸苦しい・胸肋部痛などに用いる。
方剤例⇒十棗湯
③消腫散結:皮膚の化膿症に用いる。
備考:虚弱者や妊婦には禁忌。



大戟(たいげき)

大戟『中医臨床のための中薬学』より
大戟『中医臨床のための中薬学』より

トウダイグサ科のトウダイグサ属植物の根が古来の正品で、京大戟と称する。
性味:苦・寒・有毒
帰経:肺・脾・腎
主な薬効と応用:
①瀉水除湿:水腫実証の腹水・浮腫・尿量減少・便秘・脈が実などの症候に用いる。
方剤例→舟車丸
②逐痰滌飲:痰飲積聚胸膈(胸水)の胸が張って苦しい・胸肋部の鈍痛・咳嗽などに用いる。
方剤例→控涎丹
③消腫散結:癰腫瘡毒(皮膚化膿症)・瘰癧(頸部リンパ節腫)・痰核(皮下結節)などの症候に用いる。
方剤例→紫金錠
備考:有毒のため、虚弱者には注意が必要。陰寒水腫、妊婦には禁忌。


【十棗湯:主治】
懸飲・実水に対して、
攻逐水飲の効能がある。


参考文献:
『生薬単』 NTS
『腹證奇覧 全』 医道の日本社
『中医臨床のための方剤学』
『中医臨床のための中薬学』 神戸中医学研究会

画像や文献に関して、ご興味がおありの方は
是非参考文献を読んでみて下さい。


本多

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