アクアリウム
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こんにちは、為沢です。
今年も残すところあと僅かになってきました。
皆様 体調崩さぬよう、お気をつけ下さい。


では、張仲景の古医書『傷寒論』の解説です。

今回の傷寒論は弁陽明病脈証并治 二百三十一章・二百三十二章。
二百三十一章では、三陽の合病の証治について。
二百三十二章では、二百三十一章に続き 二種類の予後と転帰があることを指摘している。


二百三十一章

陽明中風、脉弦浮大、而短氣、腹都滿、
脇下及心痛、久按之氣不通、鼻乾、不得汗、嗜臥、
一身及面目悉黃、小便難、有潮熱、時時噦、
耳前後腫、刺之小差、外不解、
病過十日、脉續浮者、與小柴胡湯。十八。

和訓:
陽明の中風、脉弦浮大、而して短気し、腹都て満ち、
脇下及び心痛み、久しく之を按じて気通ぜず、鼻乾き汗を得ず、嗜臥し、
一身及び目悉く黃ばみ、小便難く、潮熱あり、時時噦し、
耳の前後腫れ、之を刺して小し差ゆるも、外解せず、
病過十日を過ぎ、脉続いて浮なるものは、小柴胡湯を与う。十八。


陽明中風、脉弦浮大
陽明病中風証とは陽明病の熱症状であり、
脉弦浮大は三陽合病の脉象である。

而短氣、腹都滿、
脇下及心痛、久按之氣不通、鼻乾、不得汗、嗜臥、
一身及面目悉黃、小便難、有潮熱、時時噦、耳前後腫
陽明の熱邪が内に閉じて、
陽明経中の至らないところがないぐらいに満ち溢れているのである。
それが下方の腹部では、腹部の膨満感として現れ
上方の顔では鼻乾として現れている。
さらに夕方近く旺気するので潮熱が現れる。
熱盛で身体を巡る経気が傷つくので、
身体を横にしてゴロゴロとしている。

熱邪が内に隠れて胸腹腔に満ち、少陽の枢機がスムーズに作用せず、
気機壅滞により呼吸が荒く速くなり、脇下及び心窩が痛み、
少し長い時間押圧すれば気が通じなくなる。

また邪が決瀆の官である三焦を阻むので、
水気がスムーズに流れないために小便不利になる。
胃気が和降せず上逆するので時々からえずきが起こる。
水気が内に鬱して、上方に熱蒸するので身体や目が総じて黃色になる。
三陽経脈は耳の前後を巡る、熱邪は経を巡って上方を攻めるので
耳の前後が腫れているのである。

刺之小差、外不解
↑にある「不得汗」というのは、太陽の肌表が閉塞された証で、
これは三陽の合病の病機であり、陽熱の邪実を泄らすべきであるが
急にこれを緩めることができないので、解表攻裏できないため
ここで鍼治療を施す。
陽気を行らし、経絡の鬱滞するところの熱を泄らす。
鍼をして表が治らなければ、脉と証が少し良くなっても
外邪はまだ去っていない。

病過十日、脉續浮者、與小柴胡湯
十日ほど脉浮が続くと、
少陽病症の表証が依然として残ってはいるが
邪が外において解けんとしているためであり、
小柴胡湯を与え枢機を元通りに回復させるとよい。
小柴胡湯を用いるには、
脇下及び心が痛み、耳の前後腫れる等の偏重の証に用いられる。

小柴胡湯
こちらを参照→【古医書】傷寒論を読む:弁太陽病脈証并治(中)三十六章・三十七章

提要:
三陽の合病の証治について。

訳:
陽明経を風邪が侵襲して、脉象は弦かつ浮大となった。
そして、息切れ、腹部膨満、脇下および心下の疼痛、
押さえるとつかえた感じが増悪、鼻腔の乾燥と身体の無汗、
横臥したがる、全身と眼球の黄染、小便が出にくい、潮熱、
時々しゃっくりが出る、耳の前後の腫脹などの症状がある。
鍼治療を施すと症状は少し改善するものの、外証はまだとれない。
病はすでに十日を経過していても、脉象がまだなお浮であれば
小柴胡湯で治療すればよい。第十八法。


二百三十二章

脉但浮、無餘證者、與麻黄湯、
若不尿、腹滿加噦者、不治。麻黄湯。方十九。

麻黄三兩、去節 桂枝二兩、去皮 甘草一兩、炙 杏仁七十箇、去皮尖
右四味、以水九升、煮麻黄減二升、去白沫、
内諸薬、煮取二升半、去滓。溫服八合、覆取微似汗。

和訓:
脉但だ浮に、余証なきものは、麻黄湯を与う。
若し尿せず、腹満に噦するを加うるものは、治せず。麻黄湯。方十九。

麻黄三両、節を去る 桂枝二両、皮を去る 甘草一両、炙る 杏仁七十箇、皮尖を去る
右四味、水九升を以て、麻黄を煮て二升を減じ、白沫を去り、
諸薬を内れ、煮て二升半を取り、滓を去る。八合を温服し、覆いて微かに汗するに似たるを取る。


脉但浮、無餘證者、與麻黄湯
脉浮だけで、弦大でなければ、
これは少陽病ではなく、陽明病の余症であるから
表を解いていけばよい。それには麻黄湯を与えて病機を助けていく。

若不尿、腹滿加噦者、不治
この急病に対して的を得ない治療を行うと
この状態より悪化し、邪実正虚、中気衰敗となるので
不治の病になることを暗に述べている。

麻黄湯
こちらを参照→【古医書】傷寒論を読む:弁太陽病脈証并治(中)三十五章

提要:
前章に続き、二種類の予後と転帰があることを指摘している。

訳:
ただ脉が浮である以外、その他に何の証候もない場合は、麻黄湯で治療する。
もし小便が出ず、腹部膨満してしゃっくりが出る場合は、これは不治の症に属する。
麻黄湯。処方を記載。第十九法。
麻黄三両、節を除く   桂枝二両、皮を除く  甘草一両、炙る  杏仁七十個、皮尖を除く
右の四味を、九升の水で、水が二升に減るまで麻黄を煮て、
浮かんだ泡を取り除き、残りの諸薬を入れ、二升半になるまでさらに煮て、滓を除く。
八合を温服し、覆って少しあせを出させる。


参考文献:
『現代語訳 宋本傷寒論』
『中国傷寒論解説』
『傷寒論を読もう』
『中医基本用語辞典』   東洋学術出版社
『傷寒論演習』
『傷寒論鍼灸配穴選注』 緑書房
『増補 傷寒論真髄』  績文堂
『中医臨床家のための中薬学』
『中医臨床家のための方剤学』 医歯薬出版株式会社

生薬イメージ画像:
『中医臨床家のための中薬学』 医歯薬出版株式会社

※画像や文献に関して、ご興味がおありの方は
是非参考文献を読んでみて下さい。

為沢

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