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張仲景の古医書『傷寒論』の解説です。

今回の傷寒論は弁陽明病脈証并治 二百九章。
この章では、大小の承気湯の使用法について詳しく述べております。


二百九章

陽明病、潮熱、大便微鞕者、可與大承氣湯。
不鞕者不可與之。若不大便六七日、恐有燥屎、
欲知之法、少與小承氣湯、湯入腹中、轉失氣者、
此有燥屎、乃可攻之。若不轉失氣者、
此但初頭鞕、後必溏、不可攻之、攻之必脹滿不能食也。
欲飮水者、與水則噦。其後發熱者、必大便復鞕而少也、
以小承氣湯和之。不轉失氣者、愼不可攻也。小承氣湯。三。

和訓:
陽明病、潮熱し、大便微かに鞕きものは、大承氣湯を与うべし。
鞕からざるものは之を与うべからず。若し大便せざること六七日ならば、恐く燥屎あらん。
之を知らんと欲する法、少し小承気湯を与え、湯腹中に入り、
転失気せざるものは、此れ但だ初頭鞕く、後必ず溏し、之を攻むべからず。
之を攻むれば必ず脹満して食すること能わざるなり。
水を飲まんと欲するものは、水を与うれば則ち噦す。
其の熱に発熱するものは、必ず大便復た鞕くして少なきなり。
小承気湯を以て之を和せ。転失気せざるものは、
慎んで攻むべからざるなり。小承気湯。三。


陽明病、潮熱、大便微鞕者、可與大承氣湯。不鞕者不可與之
潮熱は陽明病で熱邪が胃に入り、
燥実となった結果現れたものである。
この場合、大承気湯を服用させるのは、潮熱があるからで
もし硬便であっても潮熱がなければ大承気湯を用いてはならない。

若不大便六七日、恐有燥屎、欲知之法、少與小承氣湯
大便が6〜7日も大便が無ければ、先ず燥尿であるかを確かめる必要がある。
それには先ず小承気湯を与えて、少し下させ燥尿であると確かめられれば、それは治っていく。

湯入腹中、轉失氣者、此有燥屎、乃可攻之
湯が腹中に入った後、腸がゴロゴロと動くような自覚があり、
転失気(放屁)があれば、すでに完全な燥尿となっているのである
そのときは再び大承気湯で攻下すればよい。

若不轉失氣者、此但初頭鞕、後必溏、
不可攻之、攻之必脹滿不能食也。欲飮水者、與水則噦

湯を服しても放屁がなければ、まだ完全な燥尿となっていない。
これは大便が初め硬くて出にくいだけで、後は緩んでいるだけなので、
6〜7日便通がなくても、これは大承気湯ではない。
もし攻下を行えば、必ず胃が虚して津が傷ついてしまう。
そしてこの津傷は、よく水を飲みたがるという症状として現れる。
胃虚は膨満感を引き起こし、食欲を低下させ
水を飲むとからえずきが出るようになる。

其後發熱者、必大便復鞕而少也、以小承氣湯和之
誤って攻下法を行ったことにより津が傷つき、邪が内に留まり、
潮熱となった場合、必ず邪は燥化し大便は硬くなっていくはずである。
その場合は、先に攻下しているので、小承気湯でゆっくりと
便通を起こさせて治療すればよい。

不轉失氣者、愼不可攻也
大承気湯を使用する場合は、
放屁しない者は攻下法を行ってはいけないことを
よく認識しなければならない。

大承気湯・小承気湯
こちらを参照→【古医書】傷寒論: 弁陽明病脈証并治 二百七章・二百八章

提要:
大小の承気湯の使用法について。

訳:
陽明病に罹り、潮熱があり、大便がわずかに硬くなっていれば
大承気湯で治療すれば良い。しかし、大便が硬くなければこれを用いてはならない。
もし大便がもう六七日も出ていなければ、おそらくは腸内の燥屎ができていることだろう。
これを調べる方法は、まず患者に少量の小承気湯を服用させてみる。
服用した後、放屁があれば、腸内に燥屎がある証拠で、
この場合は攻下法で治療してもよい。
もし放屁がみられない場合は、大便の出始めは悪いが、
その後は必ず水様便が出るから、攻下法を用いることはできない。
もし攻下すれば、必ず腹部が脹満して食べることができなくなるはずだ。
この時、もし患者が水を飲みたがり、それで水を飲ませるなら、
その後に呃逆(しゃっくり)がおこるはずだ。
もし攻下し後にまた発熱する場合は、大便は再び硬くなり量も少なくなるが、
この時は小承気湯で胃気を調和するとよい。
放屁がみられない場合は、決して攻下してはならない。小承気湯。第三法。


参考文献:
『現代語訳 宋本傷寒論』
『中国傷寒論解説』
『傷寒論を読もう』
『中医基本用語辞典』   東洋学術出版社
『傷寒論演習』
『傷寒論鍼灸配穴選注』 緑書房
『増補 傷寒論真髄』  績文堂
『中医臨床家のための中薬学』
『中医臨床家のための方剤学』 医歯薬出版株式会社

生薬イメージ画像:
『中医臨床家のための中薬学』 医歯薬出版株式会社

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是非参考文献を読んでみて下さい。

為沢

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