紫陽花 / ペン・鉛筆
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こんにちは、為沢です。
紫陽花のイラストを描いてみました。
もうすぐ六月。湿気がこもって梅雨入りしそうな雰囲気です。
皆さま、体調管理に気を付けて下さい。


ここからは、張仲景の古医書『傷寒論』の解説です。

今回の傷寒論は弁太陽病脈証并治(中)百二十章と百二十一章と百二十二章。
百二十章では、誤って吐法を行い胃に虚熱が生じた場合について。
百二十一章では、太陽病で誤って吐法を用いたために、内煩が生じた場合について。
百二十二章では、胃虚吐逆の脉証について述べております。


弁太陽病脈証并治(中)百二十章

太陽病、當惡寒發熱、今自汗出、反不惡寒發熱、
關上脉細數者、以醫吐之過也。
一二日吐之者、腹中飢、口不能食。
三四日吐之者、不喜糜粥、欲食冷食、朝食暮吐。
以醫吐之所致也、此爲小逆。

和訓:
太陽病、当に悪寒発熱すべし。今自汗出で、反って悪寒発熱せず、
関上の脉細数なるものは、医之を吐するの過ちを以てするなり。
一二日にして之を吐するものは、腹中飢え、口食すること能わず。
三四日にして之を吐するものは、糜粥を喜まず、冷食を食せんと欲し、
朝に食して暮に吐す。医之を吐するも以て致す所なり。此れ小逆と為す。


太陽病、當惡寒發熱、今自汗出、反不惡寒發熱
太陽病にあたれば、本来は悪寒発熱が生じるはずなのだが、
いま自汗しているが悪寒発熱の症状はない。

關上脉細數者、以醫吐之過也
関上の脉は中焦を候い、脈状のうち細は虚、数脉は熱を知ることができるので、
関上で細数の脉は、胃に虚熱が生じていることが分かる。
これは医者が誤って吐法を用いて、表邪が裏に内陥したために生じたものであるので
通常の表邪が裏に内伝した場合に生じる陽明の裏熱証とは異なる。

一二日吐之者、腹中飢、口不能食
もし太陽病の1,2日目に誤って吐法を用いれば、胃失和降となり、
食物が食べられなくなってしまうが、脾の運化作用は正常であるから空腹感は強く生じる。

三四日吐之者、不喜糜粥、欲食冷食、朝食暮吐
太陽病になり3、4日目、表が裏に内伝しかけているが、まだ完全に内伝していない時に
誤って吐法を用いれば、熱が心にとどまり、虚燥の状態になるので、
粥よりも冷たい食物を欲しがるようになる。また、脾の運化失調により「朝食暮吐」となる。

以醫吐之所致也、此爲小逆
これは医者が誤って吐法を用いたことにより
脾胃のバランスが崩れ、気機の昇降が失われた結果生じた症状であるが
完全な虚寒証になってはいないから、小逆(軽い壊病)というのである。

提要:
誤って吐法を行い、胃に虚熱が生じた場合について。

訳:
太陽病に罹ると、悪寒発熱が現れるのだが、いま自汗が出て、しかもかえって悪寒発熱もなく、
さらに関脈が細数であるのは、医者が誤って嘔吐させた結果である。
病に罹って一両日のうちに誤って嘔吐させると、患者は腹に飢えを感ずるが
口にはかえって食欲がなくなる。(空腹であっても食べられない。)
病に罹って三四日して誤って嘔吐させると、患者は熱い稀粥をすするのを嫌がり
冷たい飲食品だけを摂りたいと思うようになり、さらに朝に食べた物を晩に吐出する。
これらは全て吐法を誤用した結果であるが、誤治のうちでもまだ軽微なものである。


弁太陽病脈証并治(中)百二十一章

太陽病吐之、但太陽病當惡寒、今反不惡寒、不欲近衣、此爲吐之内煩也。

和訓:
太陽病之を吐す。但し太陽病は当に悪寒すべし。
今反って悪寒せず、衣を近づくるを欲せざるは、此れ之を吐するの内煩と為すなり。


太陽病吐之、但太陽病當惡寒、今反不惡寒、不欲近衣、此爲吐之内煩也
太陽病で吐法を用いた。津液が傷つき、表邪は徐々に微弱になっていくが
裏熱は盛んになっていくために、病人は衣服を着たがらない。
吐法のあと内より熱が生じ、煩となるのは気と津液がどちらも傷ついて陰が陽と和せないためである。

提要:
太陽病で誤って吐法を用いたために、内煩が生じた場合について。

訳:
太陽病の患者を誤って嘔吐させた結果、太陽病でもともと悪寒があったのに、
かえって悪寒しなくなり、また厚着もしたがらなくなったのは、
嘔吐したあと心中に煩熱を生じたからである。


弁太陽病脈証并治(中)百二十二章

病人脉數、數爲熱、當消穀引食、而反吐者、此以發汗、
令陽氣微、膈氣虚、脉乃數也。數爲客熱、不能消穀、以胃中虛冷、故吐也。

和訓:
病人の脉数、数は熱と為し、当に消穀引食すべし。
太陽傷寒のものは、而るに反って吐するものは、此れ発汗するを以て、
陽気をして微、膈気をして虚ならしめ、脉乃ち数なり。数は客熱と為し、
消穀すること能わず、胃中虚冷するを以て、故に吐するなり。


病人脉數、數爲熱、當消穀引食
脉数は熱を意味する。熱があれば食物をよく消化するので空腹感が強く生じる。

而反吐者、此以發汗、令陽氣微、膈氣虚、脉乃數也
しかし、今病人が脉数を示しているが、食べると吐いてしまうのは
医者がひどく発汗させたことで胃腸が損傷→表陽が虚して胸膈の陽気も虚したからである。
表邪がこの虚に乗じて裏に入ったために、脉数をみるのである。

數爲客熱、不能消穀、以胃中虛冷、故吐也
客熱…「客」は「主」に相対する言葉で、一般には外来の邪熱を指すが
ここでは仮熱を指すと理解すべきである。
熱邪が胸膈と胃にあるため「脉数」は、仮熱だけではなく、胃虚を示すものであるから、
必ず押圧すれば力無い脉を示すはずである。
さらに胃虚で消化ができないばかりか、胃中に寒飲が多くあり
これを仮熱が刺激して、嘔吐するのである。

提要:
胃虚吐逆の脉証について。

訳:
患者の脉が数の場合、脉数は熱がある証拠で、
熱があれば当然ながら穀物の消化がよく食も進むはずである。
今それに反して嘔吐がみられるのは、発汗したからであり、
発汗によって陽気が衰微し、胸膈の正気が虚弱になり、そのために数脉を呈するのである。
このような数脉は外邪によっておこった仮熱を反映しているのであって、
食物を消化することはできず、また胃中は虚冷の状態であるので、嘔吐がおこる。


参考文献:
『現代語訳 宋本傷寒論』
『中国傷寒論解説』
『傷寒論を読もう』
『中医基本用語辞典』   東洋学術出版社
『傷寒論演習』
『傷寒論鍼灸配穴選注』 緑書房
『増補 傷寒論真髄』  績文堂
『中医臨床家のための中薬学』
『中医臨床家のための方剤学』 医歯薬出版株式会社

※画像や文献に関して、ご興味がおありの方は
是非参考文献を読んでみて下さい。

為沢

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