特別展「北斎―風景・美人・奇想―」大阪市立美術館HPより
特別展「北斎―風景・美人・奇想―」大阪市立美術館HPより

こんにちは、為沢です。

10月30日より大阪市立美術館で特別展
「北斎―風景・美人・奇想―」が開かれます。
北斎と言えば、有名な作品が数多くございますが
画像に見える赤富士も有名ですね。
昔、中学2年生の頃 美術の時間に
お題は自由だったのですが、
北斎の赤富士を描いてみようと
アクリル絵の具で模写したことがありました。
中学生ながら、なかなか良く出来た思い出があり
個人的に思い入れのある作品です。
生で見たことないので
是非、鑑賞しに行こうかと思います。



では、今回の傷寒論は弁太陽病脈証并治(中)九十二章・九十三章。
九十二章では、表裏の脈証についての治法を述べており
九十三章では、発汗法と下法の順序を間違えたために「冒」が生じた場合について述べております。


弁太陽病脈証并治(中)九十二章

病發熱、頭痛、脉反沈、若不差、身体疼痛、当救其裏。
四逆湯方
甘草
二両、炙 乾薑一両、半 附子一枚、生用、去皮、破八片
右三味、以水三升、煮取一升二合、去滓、分溫再服、強人可大附子一枚、乾薑三兩。

和訓:
病發熱、頭痛し脉反って沈に、若し差えざらば、身体疼痛し、当に其の裏を救うべし。
四逆湯方
甘草二両、炙る 乾薑一両半 附子一枚、生で用う、皮を去る、八片に破る
右三味、水三升を以て、煮て一升二合を取り、滓を去り、二服に分かち、
溫め再服す。強き人は大附子一枚、乾薑三両なるべし。


病發熱、頭痛、脉反沈、若不差、身体疼痛、当救其裏
病で発熱・頭痛の症状がある。表証の症状なのに脉浮を示さず、脉沈を示している。
その後病が回復せず、身疼痛する場合は、まず裏証を治療しなければならない。
四逆湯を与えて温経回陽をはかるのがよい。

四逆湯(しぎゃくとう)

甘草
甘草

甘草
基原:マメ科のウラルカンゾウ、
またはその他同属植物の根およびストロン。
甘草の甘平で、脾胃の正薬であり、
甘緩で緩急に働き、補中益気・潤肺祛痰・止咳・
清熱解毒・緩急止痛・調和薬性などの性能を持つ。
そのため、脾胃虚弱の中気不足に用いられる。
また、薬性を調和し百毒を解すので、熱薬と用いると熱性を緩め
寒薬と用いると寒性を緩めるなど薬性を緩和し薬味を矯正することができる。
ここでは甘緩和中と諸薬の調和に働く。

 

乾薑
乾薑

乾薑
基原:
ショウガ科のショウガの根茎を乾燥したもの。
古くは皮を去り水でさらした後に晒乾した。
乾姜は生姜を乾燥させてもので
辛散の性質が弱まって辛熱燥烈の性質が増強され、
無毒であり、温中散寒の主薬であるとともに、
回陽通脈・燥湿消痰の効能をもつ。
陰寒内盛・陽衰欲脱の肢冷脈微、
脾胃虚寒の食少不運・脘腹冷痛・吐瀉冷痢、
肺寒痰飲の喘咳、風寒湿痺の肢節冷痛などに適し、
乾姜は主に脾胃に入り温中寒散する。

附子
附子

附子
基原:
キンポウゲ科のカラトリカブト、
その他の同属植物の子根。
加工・炮製して利用することが多い。

附子は辛熱壮烈であり、
「走きて守らず」で十二経を通じ、
下焦の元陽(命火)を峻補して裏の寒湿を除き、
皮毛に外達して表の風寒を散じる。
それゆえに亡陽欲脱の身冷肢冷・大汗淋漓・吐利不止・
脈微欲脱てんなどには回陽救逆し、
腎陽不足の陽痿滑精・腰膝冷弱には補火壮陽し、
脾腎陽虚・陰寒内盛の心腹冷痛・吐瀉転筋には温裏散寒し、
陽虚不化水湿の身面浮腫・腰以下種甚には助陽行水して冷湿を除き、
風寒湿痺の疼痛麻木には祛風散寒止痛し、
陽気不足の外感風寒で悪寒発熱・脈沈を呈するときは助陽発表する。
このほか、補益薬と用いると一切の内傷不足・陽気衰弱に使用できる。

・四逆湯について
心・腎・脾の陽気が衰微した陰寒独盛の重症のものに用いる回陽救逆剤である。
大辛大熱の附子は腎陽を温補する第一の要薬であり、十二経を通行して温陽逐寒し、
生用するとより速やかに内外を通達する。
同じく大辛大熱の乾薑は、中焦脾胃を温補して裏寒を除き運化を回復させ、附子を助けて陽気を振発させる。
甘温の炙甘草は温中益気に働き、附子の毒性を弱めるほか、附子・乾薑の辛烈の性質を緩和する。
全体で陰寒を除き陽気を回復し、厥逆を改善する効果が得られる。

提要:
表裏の脈証についての治法を述べている。

訳:
患者に発熱と頭痛があるのに、脈はかえって沈象を呈し、
病証がまだ改善しないなら、身体が痛むという表証があったとしても、
やはりまず裏を治療せねばならず、それには四逆湯を用いる。
甘草二両、炙る 乾薑一両半 附子一個、生で用いる、皮を除く。八片に割る
右の三味を、三升の水で、一升二合になるまで煮て、滓を除き、これを二回に分けて温腹する。
頑強な人では大附子一個、乾薑三両とする。


九十三章

太陽病、先下而不愈、因復發汗、以此表裏倶虚、
其人因致冒、冒家汗出自愈。所以然者、汗出表和故也。
裏未和、然後復下之。


和訓:
太陽病、先ず下して愈えず、因って復た発汗し、此れ表裏倶に虚するを以て、
其の人因って冒を致し、冒家は汗出でて自ら愈ゆ。然る所以のものは、
汗出でて表出て表和するが故なり。裏未だ和せざらば、然る後に復た之を下せ。


太陽病、先下而不愈
太陽病で最初に下法を用いて治療を行ったが治らなかった。
→太陽病で先に下法を行うのは誤治にあたる。

因復發汗、以此表裏倶虚
太陽病に攻下法を施し裏の気血を損傷し、その後で発汗法で表の営衛を損傷。
結果的に表裏ともに虚してしまった。

其人因致冒、冒家汗出自愈、所以然者、汗出表和故也
「冒」とは頭や目がぼんやりして眩暈やふらつきが起こること。
正気が虚していると同時に邪気も弱い状態にあり、
そのままにしておけば、裏の気血津液が自然に回復し、
津液が裏から汗になって表に蒸出するので、表の営衛も正常の調和を取り戻す。

裏未和、然後復下之
裏証が残る場合は、また下法を行えばよい。

提要:
発汗法と下法の順序を間違えたために「冒」が生じた場合について述べている。

訳:
太陽病に、まず攻下法を用いたが治らず、そこで次に発汗法を用いたら
これらの処置によって患者の表裏の気はすべて虚してしまい、
患者はそのために頭がぼんやりして眩暈がする。
このような病態になった場合、もし患者に汗をかかせることができれば自然に治癒する。
この理由は、汗を出すことによって表気を調和させることができるからだ。
もしまだ裏気が調和していなければ、そのあと今度は攻下法で治療すればよい。


参考文献:
『現代語訳 宋本傷寒論』
『中国傷寒論解説』
『傷寒論を読もう』
『中医基本用語辞典』   東洋学術出版社
『傷寒論演習』
『傷寒論鍼灸配穴選注』 緑書房
『増補 傷寒論真髄』  績文堂
『中医臨床家のための中薬学』
『中医臨床家のための方剤学』 医歯薬出版株式会社

生薬イメージ画像:
『中医臨床家のための中薬学』 医歯薬出版株式会社

※画像や文献に関して、ご興味がおありの方は
是非参考文献を読んでみて下さい。

為沢

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