こんにちは、大原です。

『霊枢』のキーワード(と思われる)「終始」の意味について、
九鍼十二原篇(第1)から順番に
読み解いていってます。
(前回記事:『霊枢』の「終始」 その3

さて今回は『霊枢』根結篇(第5)に
出てくる「終始」についてです。
以下、根結篇(第5)のはじめからになります。

<原文>
岐伯曰、
天地相感、寒暖相移。
陰陽之道、孰少孰多。
陰道偶、陽道奇。
發于春夏、陰氣少、陽氣多。
陰陽不調、何補何寫。
發于秋冬、陽氣少、陰氣多。
陰氣盛而陽氣衰。
故莖葉枯槁、濕雨下歸、陰陽相移。
何寫何補。
奇邪離經、不可勝數。
不知根結、五藏六府、折關敗樞、開闔而走。
陰陽大失、不可復取。
九鍼之玄要在終始。故能知終始、一言而畢。
不知終始、鍼道咸絶。

<読み>
岐伯曰く、
天地は相感じ、寒暖は相移る。
陰陽の道は、れが少くれが多きか。
陰道は偶、陽道は奇なり。
春夏に発すれば、陰氣少なく陽氣多し。
陰陽調わざるは、何を補し何を寫さんか。
秋冬に発すれば、陽氣少なく陰氣多し。
陰氣盛んにして陽氣衰う。
故に莖葉枯槁し、湿雨下り帰し、陰陽相い移る。
何を寫し何を補するか。

奇邪、離経は、勝げて数うべからず。
根結を知らざれば、五蔵六府は、関を折り樞を敗し、開闔かいこうして走る。
陰陽大いに失して、た取るべからず。

九鍼の玄要は終始にあり。
ゆえによく終始を知れば、一言にしておわる。
終始を知らざれば、鍼道咸絶かんぜつす。

ちょっと長いですが、
最後の方に「終始」と何回か出てきています。
その最後の部分(<読み>の3段落目)の訳をみてみますと

「さて、九鍼の玄要は本経の『終始』篇に詳細説明してあります。
ゆえに『終始』の道理をよく理解するならば、
一言にして刺鍼の道理を(ことごとく)終えることができますが、
それを知らなくては鍼道は
どこもかしこも分かるものではありません。」
(『鍼灸医学大系 黄帝内経霊枢』第15巻 527ページより引用)

と、ここでは「終始」の意味が広く、
鍼を用いて治療を行う者にとっては
その理解が絶対に必要な重要なものであり、
もし理解していなければ全く話にならない
というようなことが書かれています。

また、
この「終始」が出てくるまでの内容も非常に重要で、
(<読み>の2段落目)
次のように書かれています。

「奇邪による局所的な異常や、
正常の状態からちょっと離脱したような僅かな変調などは、
それらの全てをいちいち数えあげることなど
できるものではありません。
したがって『根結』ということの道理を知らないで、
でたらめな刺鍼をすると、

五臓六腑の精気出入りの門の扉のカンヌキは、その機能を失い、
扉を開閉する心棒はこわれて、扉は勝手に開いたり閉まったりして
精気は走るために、
生体中の陰陽の気は全くそのバランスを失して
取り返しのつかないような状態になってしまいます。」
(『鍼灸医学大系 黄帝内経霊枢』第15巻 527ページより引用)

この内容からも分かるように、
この篇の「終始」は、
鍼の治療における根本的な、かつ、玄妙なもの
という意味であることが推察されます。

続きます。

とある田舎にて。この辺りの土地は、この大きなご神木に守られているようです。
とある田舎にて。この辺りの土地は、この大きなご神木に守られているようです。

参考文献
『鍼灸医学体系 黄帝内経霊枢』第15巻 雄渾社
『現代語訳◉黄帝内経 霊枢』上巻 東洋学術出版社

ご興味のおありの方は、ぜひ参考文献もお読みください。

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