こんにちは、大原です。
今回も中国の文献
『中医内科学(第2版)』の内容を訳しながらまとめていきます。
今回は第2章「心脳病証」の始めの部分になります。

まず「心脳病証」という題名に引っ掛かるかも知れませんが、
五臓の「心」と、「脳」とは関係が深いといわれることがあり、
このような題にしたのだと思われます。
その理由についても
ここで述べられていると予想しながら読んでいきましょう。


心脳病症

心脳病証は情志の損傷によるものを指し、
禀賦りんぷ不足生まれつきの、先天的な不足)、
年老体虚年齢・老化による弱り)、
久病失養長患いによる栄養の失調)などによって
心、脳の機能が
通常の状態を失うもの、および病理変化の病証の一種を指す。
心脳病証は、
心悸、眩暈、中風、失眠、痴呆、かん病、てん病、狂病、
および病等が本章に属す。

心は君主の官で、五臓六腑の大主である。
心はしんを蔵し、神明を主る。
脳は「元神の腑」となし、一切の精神活動と関わりをもち、
また、生死に関わる人体の重要器官の一つである。
心は胸中に位置し、心包が囲んでその外を護る。
心の主要な作用は血脈を主ることであり、
すなわちこれは
心気には推動作用があり、血液が脈管内において全身を栄養する機能を指す。
この作用が正常に行われるには、
心気が充足し、かつ血液が充盛していることによる。

心は「しん」を蔵し、神明しんめいを主るが、これは
血液が神志活動の主要物質の基礎をなすことによるものであり、
心臓が血液の運行をもって体の各臓腑・組織を栄養し
心の作用が正常であれば各臓腑組織は充分な栄養供給が得られ、
神的功能精神活動)も明瞭となるのである。
もし心の作用が常を失すれば、
臓腑・組織は栄養が欠乏し正常な活動をすることができなくなり、
必然的に神的功能精神活動)にも影響が出る。

しん」は一切の生命活動を主宰するもので、
神的功能活動精神活動)に必須の物質であり、
ゆえに心の血液供給には
心の神的功能精神活動)における重要な作用が
備わっているということになる。

この他に心は舌に開竅し、その華は面()にあり、心は汗液を主る。

心病の病因は正虚失養正気が弱って栄養されない)以外に、
特徴的なのは、火熱の邪、情緒不安定、瘀血阻滞、水飲痰濁によって
傷られるところによる。
心病の病理変化は常に陽気鼓動が無力となって表現され、
心痛や脈で短、代、細、濇を引き起こし、
血が心を養わなければ
驚悸、怔忡、脈で結あるいは代を引き起こし、
気血陰陽が虚損すれば心神が失養し、
軽症の場合は失眠、多夢、健忘、
重症の場合は神志が散逸し、譫妄せんもう神昏昏睡、意識障害の一つ
さらに病状が甚だしい場合には卒死突然死)の発生に至る。

心病の治則は
血運失常血を運搬する作用・常態の失調)に対するもので、
一つは心気を補い、心陽を助け、血脈の運行を扇動し、
あるいは心血を滋補し、心脈を充盛し、
あるいは活血化瘀、痰湿を除き血の脈絡を通じさせ、
血を滞りなく運行できるようにする。

神明失主(神明が主を失する=精神活動の失調)なれば、
心血を養い心陰を滋し、あるいは心火を清するなどによって
心神を安じ、使神能守舎物質であるしんに、
精神活動を主り、かつしんの舎(住処)である心を守るようにする)。


ここまでが主に「心」に関する記述で、
ここから後が主に「脳」に関する記述となります。

この中の内容で、
けつ」は血液に近いものとしてイメージしやすいと思いますが、
しん」は「精神活動を主宰する物質である」と書かれていて、
中医学独特の概念だと思います。
ここで「主宰しゅさい」とは
「支配する、中心となる、牛耳ぎゅうじる、左右する」という意味があり、
しんは精神活動にとって
重要な物質であるとされていることが分かります。

次回に続きます。

たまには自然の中でゆっくりするのも良いですね。
たまには自然の中でゆっくりするのも良いですね。

■参考文献
『中医内科学(第2版)』 人民衛生出版社
『Ex-word XD-N7300』(電子辞書) CASIO
『基礎中医学』 燎原

興味がおありの方は、ぜひ参考文献もお読みください。

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