この傷寒論のシリーズは、
当院の修行生によって毎週、水曜日の早朝に開かれる、
自主的な勉強会におけるメモ・備忘録となります。
古典の専門家によるものではなく、
一から学ぶ者の新鮮な目線を共有出来れば幸いに思います。


10/4(水)
太陽病中篇より

(127条)
太陽病、小便利者、以飲水多、必心下悸、小便少者、必苦裏急也。

中篇の最後の条文である。
これまで小便利する者は蓄血証を疑うという内容の条文が続いたが、
蓄血証以外にも小便利する場合があるということを再度述べた条文である。
具体的な内容は73条に述べられている。



(128条)
問曰、病有結胸、有藏結、其状如何、答曰、按之痛、寸脈浮、関脈沈、名曰結胸也。

(129条)
何謂藏結、答曰、如結胸状、飲食如故、時時下利、寸脈浮、関脈小細沈緊、名曰藏結、舌上白胎滑者、難治。

太陽病下篇の始めの条文である。
病には結胸と蔵結とがあり、それぞれの説明がなされている。

(130条)
藏結無陽証、不往来寒熱、其人反静、舌上胎滑者、不可攻也。

前条に続いて、蔵結についての説明である。
蔵結とは「陽証が無く、寒熱往来(少陽病)も無く、燥煩・狂(陽明病)などがなく静かで、
舌上の苔が滑の場合」であり、治療方法としては攻下法を用いてはならないと述べられている。

(131条)
病発於陽、而反下之、熱入因作結胸、病発於陰、而反下之、因作痞、所以成結胸者、以下之太早故也。
結胸者、項亦強、如柔痙状、下之則和、宜大陥胸丸。

本条では、さらに結胸について記されている。
「陽」に発した病を、瀉下法を用いて治療し、熱が入りこむことで「結胸」がおこり、
それに対して「陰」に発した病を瀉下法を用いて治療した場合には「痞(つかえ)」がおこる。
結胸とは瀉下法を用いて治療するタイミングが早かったためであり、
その症状は、首の強ばりや「柔痙」であり、下せば治っていくので、そのための大陥胸丸が良い。

「柔痙」とは金匱要略の条文にその説明が詳しくある。
(金匱要略 痙湿喝病脈証(第2)2条など)
太陽病で発汗過多になり津液不足に陥ることが、柔痙の病理のようである。
この条文では、津液を補いながら表証を取り除く栝楼桂枝湯が良いとある。

傷寒論の本条では、瀉下法を用いて結胸となり、
柔痙の症状がおこるとある。
しかし、条文で「瀉下を用いて」とあるのは
傷寒論の宋版と呼ばれるバージョンよりも後になってからのようである。
それまでは「発汗法を用いて」と記されていたようである。

発汗法によって津液を損傷し柔痙となったという、
宋版よりも前の条文の内容の方が
金匱要略の内容とも合致しているように思う。


参加者:下野、新川、大原、盧

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