この傷寒論のシリーズは、
当院の修行生によって毎週、水曜日の早朝に開かれる、
自主的な勉強会におけるメモ・備忘録となります。
古典の専門家によるものではなく、
一から学ぶ者の新鮮な目線を共有出来れば幸いに思います。


9/20(水)
太陽病中篇より

(122条)
病人脉数、数為熱、当消穀引食。
而反吐者、此以発汗、令陽気微、膈気虚、脉乃数也。
数為客熱、不能消穀。以胃中虚冷、故吐也。

条文の内容:
病人が数脈であれば、その脈は熱証を表すが、
熱が胃にあると食欲が増し、よく食べるようになる。
しかし実際にはこの状態とは異なり、吐いてしまっているのであるが、
これは発汗によって陽気を低下させてしまい、
膈(胃と胸の間に位置する部位)の
働きが弱っていることによる。この場合も数脈となる。
この数脈の熱とは通常の熱とは異なるので「客熱」と表現されているが、
現代でいう仮熱のことであろう。
しかし客熱は数脈を呈しているが、胃は冷えて熱証ではないため
食欲もなく食事も入らない。
そのために吐いてしまうということである。
「膈気」とは何か、解釈がいろいろあるようであり、
「胸郭間の陽気」、「宗気」といった説がある。
また、この条文には方剤が述べられていないが、
小半夏湯(生姜、半夏)を用いて
胃中の冷えや吐気を改善するのが良いといった説がある。


(123条)
太陽病、過経十余日、心下温温欲吐而胸中痛、大便反溏、腹微満、鬱鬱微煩。
先此時、自極吐下者、与調胃承気湯。
若不爾者、不可与。
但欲嘔、胸中痛、微溏者、此非柴胡証、以嘔、故知極吐下也。
条文の内容:
太陽病が癒えて十日余り、心下がやたら温かい感じがし、
吐気をもよおし、胸中が痛み、大便が水様便でお腹がやや膨満感があり、
鬱々と煩燥の症状も少しあるという場合には
これは自ら強く吐いて下した場合であることから
調胃承気湯を与えると良い。
もしこのような状態ではなければ(自ら強く吐いて下した場合でなければ)
調胃承気湯を与えてはならない。
ただ吐気をもよおし胸中が痛み、水様便であれば
一見、柴胡湯の証と思うだろうがそうではない。
吐気をもよおしていることから、現在の症状は、
先に自ら吐き下したことが原因であるということを
推察すべきである。
水様便を呈しているが、この場合は
陽明病のときにいる調胃承気湯が良いという点が
考え所である。
これは、水様便ではあるが、体内に熱があり、
それを排泄すれば症状が癒えるということ、
また、調胃承気湯は胃気を助ける意味合いが強いということが
重要な点である。
96条に柴胡湯の証の症状が記されているが、
大柴胡湯の証では「喜嘔(きおう)」すなわち
肝胆の熱が胃に影響して自ら吐きたくなるということであった。
本条の「欲嘔」は吐いたことで胃気が損傷しているという
状態にあるということに注意が必要である。

(続く)


参加者:下野、新川、大原、盧

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