昨日 中学生のときの担任の先生(以下Fティーチャー)を
梅田のヨドバシで見かけた。
僕は、先生をよく覚えている。
とても印象的な出来事があったために。
ある日僕は、授業の合間にかくれんぼをしていた。
中学生なので ただのかくれんぼとは子供じみている。
たしか、なにかスリリングなルールがそこにはあったように記憶している。
一人はとてもベタな掃除箱に。
僕もこれまたベタに教卓の下にしのんだ。
しかし、教卓の下は空洞があるので少し見えているのだ。
そんな たわいもない遊びの中、
休み時間終了のチャイムがなる。
僕は、ぎりぎりまで隠れているうちにFティーチャーが教室に
入ってくる。
Fティーチャーが点呼をとる、
悪ガキの一人が、僕は保健室に言ったと告げる。
僕はFティーチャーの足元、息をひそめたまま
授業は始まった。。
授業は続く。
Fティーチャーは何一つ気付かぬまま。
しかし、さすがの彼も何かの異変に気付く。
何故か、生徒達が授業に集中していない。
くすくす笑いをこらえているものもいる。
生徒の態度の悪さに我慢したまま彼は授業を続けるが、
俗に言う「堪忍袋のをが切れた」である。
しばらくして、彼はついに切り出した。
「おい、何がおかしい!」
基本的には大人しい(ごく稀にキレる)Fティーチャーが怒鳴り声をあげる。
しかし 生徒は誰も真実を報告せず もう少しその状況を
堪能したいといった様子である。
Fティーチャーも馬鹿ではない。
彼は、生徒達の視線を察し、
目を下にむけ なにかに気付いた様子である。
沈黙 殺気。
さすがに生徒達も息を呑んでいる。
      (続く)
      夏の記憶


僕も状況を察し
ついに観念してFティーチャーの前に
姿を出そうと、小さくたたんだ華奢な体を教卓から出そうと
身を乗り出した、
まさに、その時!
何を思ったかFティーチャーは僕を
蹴り上げた。
ピンボールのように教卓の奥に当たって
跳ね返ってはまた蹴られ、
何度も何度も蹴られまくった。
彼の日ごろの怠慢のせいか、たいした脚力はなく
全く痛くはなかったものの 
恥ずかしさの為に
赤面しながらも苦笑いするしかなく、
でへへと笑いながら自分の席に付いたのを覚えている。
痛くなかったから言えるかもしれないが、
内心は、あの事件のおかげで僕はクラスの話題を独り占めしたので、
悪の化身と戦った英雄のようでとても心地よかった。
そういう意味で、僕にとってあの状況はかなりおいしく
Fティーチャーにとっては、禍々しい記憶に違いないのだが)
我を忘れて僕を蹴りまくった彼は、
僕とその状況を作ったあの頃の良きパートナー、
まるで漫才の相方のように
僕の中で一方的な記憶をかたちどっていた。
そんなFティーチャーが当時となんら変わらない
顔で無表情のまま僕の横を通り過ぎていった。
びっくりするぐらい彼は何も変わっていなかった。
今でも彼は記憶の中のFティーチャーだったのである。
なんとも言えない淡い気持ちがよぎった。
夏の記憶

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