<近日開催予定のイベント>
8月20日(日):第五回、鍼灸学生の為の勉強会〜【医古文・漢文の読み方No.2】〜


中央公会堂
中央公会堂

下野です。
今回も「諸病の主薬」の記事になります。


【原文】
婦人難産、須用芎帰、為主。
婦人産後、悪露不行、須用益母草、為主。
婦人産後、虚熱、須用炒黒乾姜、為主。
婦人吹乳、須用白芷、貝母、為主。
婦人乳汁不通、須用川山甲、為主。

<第三十に続く>


【解説】
難産には芎帰を使用すべし。

産後悪露がめぐらないものは益母草を使用すべし。

産後の虚熱には炒黒の乾姜を使用すべし。

吹乳(乳痛)には白芷、貝母を使用すべし。

乳汁が通じないものには川山甲を使用すべし。

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芎帰きゅうき

川芎せんきゅう

川芎
川芎

セリ科のマルバトウ属植物の根茎。原名は芎藭。
性味:辛・温
帰経:肝・心包・胆
効能:
①活血行気
・気血瘀滞による月経不順・無月経・月経痛など。
方剤例 → 四物湯。
・肝鬱気滞・血瘀の胸脇痛。
方剤例 → 柴胡疏肝散。
・瘀血痺阻心脈による挟心痛。
方剤例 → 冠心Ⅱ号。
・火毒壅盛の気滞血瘀による皮膚化膿症など。
方剤例 → 透膿散。
・打撲外傷による内出血の腫脹・疼痛。

②祛風止痛
・風寒の頭痛に。
方剤例 → 川芎茶調散。
・風熱の頭痛に。
方剤例 → 川芎散。
・風湿の頭痛に。
方剤例 → 羌活勝湿湯。
・血虚の頭痛に。
方剤例 → 加味四物湯。
・風寒湿痺の関節痛に。
方剤例 → 三痺湯。

当帰とうき

当帰
当帰

セリ科の根をいう。
根頭部を帰頭、主根部を当帰身、支根を当帰尾、
帰身と帰尾を含めて全当帰という。
性味:甘・辛・苦・温
帰経:心・肝・脾
効能:
①補血調経
・血虚による顔色につやがない・頭のふらつき・眩暈・目がかすむ・動悸・月経不順などに。
方剤例 → 四物湯。
[組成] 当帰・川芎・白芍・熟地黄
・大出血のあと、あるいは気虚をともなうときに。
方剤例 → 当帰補血湯。
・虚寒の腹痛・冷えなどをともなうときもに。
方剤例 → 当帰生姜羊肉湯。

②活血行気・止痛
・気滞血瘀の疼痛・腹腔内腫瘤などに。
方剤例 → 膈下逐瘀湯。
・打撲外傷による腫脹・疼痛に。
方剤例 → 活絡効霊丹。
・痺証のしびれ痛みにも。
・癰疽瘡瘍にも。

③潤腸通便
・腸燥便秘に。
方剤例 → 潤腸丸。

益母草やくもそう

益母草『中医臨床のための中薬学』より
益母草『中医臨床のための中薬学』より

シソ科ホソバメハジキ、メハジキの全草。
性味:辛・微苦・微寒
帰経:肝・心・腎
効能:
①活血祛瘀
・血瘀の月経不順や月経痛、無月経、産後瘀阻の腹痛、性器出血に。
方剤例 → 益母丸。
・難産や胎盤残留に。
方剤例 → 送胞湯。
・打撲による内出血や腫れ、痛みに。

②利水退腫
・浮腫や尿量減少に。

③その他
・乳腺炎や皮膚化膿症に。

乾姜かんきょう

乾薑
乾薑

ショウガ科のショウガの根を乾燥したもの。
性味:大辛・大熱
帰経:心・肺・脾・胃
効能:
①温中散寒
・脾胃虚寒の腹部冷痛、腹鳴、未消化下痢、嘔吐などに。
方剤例 → 理中湯(人参湯)。

②回陽通脈
・陽気衰微、陰寒内盛の亡陽虚脱で、
四肢の冷えや脈が微弱の時に。
方剤例 → 四逆湯・通脈四逆湯。
・脾腎陽虚の未消化下痢、四肢の冷え、脈が微弱で、
虚陽上浮によるのぼせ、煩燥に。
方剤例 → 白通湯。

③温肺化痰・化飲
・肺の寒飲による咳嗽や呼吸困難、希薄な痰、背部冷感などに。
方剤例 → 苓甘五味姜辛湯・苓甘姜味辛夏仁湯・小青竜湯。

白芷びゃくし

白芷『中医臨床のための中薬学』より
白芷『中医臨床のための中薬学』より

セリ科のヨロイグサなどの根。
性味:辛・温
帰経:胃・大腸・肺
効能
①散寒解表
・風寒による感冒で、額の痛みを伴う時に。
方剤例 → 九味羗活湯

②祛風止痛
・風寒による頭痛に。
方剤例 → 川芎茶調散・清上蠲痛湯。
・風熱による頭痛。
方剤例 → 清上防風湯。
・副鼻腔炎による額の痛み。
方剤例 → 蒼耳散。

③消腫排膿
・皮膚化膿症に用いる。
方剤例 → 仙方活命飲。

貝母ばいも

貝母『中医臨床のための中薬学』より
貝母『中医臨床のための中薬学』より

ユリ科のアミガサユリ属植物各種の鱗茎。
性味:
川貝母→苦・甘・微寒
浙貝母→苦・寒
帰経:心・肺
効能:
①清化熱痰
・外感風邪、痰熱壅肺の咳嗽や咽痛、黄色の粘質痰に。
方剤例 → 貝母丸・二母丸。

②潤肺止咳
・肺熱咳嗽や陰虚の慢性咳嗽に。
方剤例 → 貝母散。

③泄熱散結
・頚部のリンパ節腫や皮下結節に。
方剤例 → 消瘰丸。
・皮膚化膿症の初起に。
方剤例 → 消癰散毒湯。
・痰熱互結や気鬱化熱の胸痛や胸苦しいなどに。

穿(川)山甲せんざんこう

穿山甲『中医臨床のための中薬学』より
穿山甲『中医臨床のための中薬学』より

センザンコウ科ミミセンザンコウの鱗甲。
性味:鹹・微寒
帰経:肝・胃
効能:
①通経下乳
・瘀血の無月経や腹腔内腫瘤に。
方剤例 → 穿甲散。
・産後乳脈不通による乳汁鬱滞、分泌不全に。
方剤例 → 涌泉散。

②消腫排膿
・皮膚化膿症の初期に。
方剤例 → 仙方活命飲。
・化膿はしたが、排膿しない際に。
方剤例 → 透膿散。
・頚部のリンパ節腫や皮下結節に。

③通絡散風
・風湿痺の関節痛や強ばりに。
方剤例 → 透経解攣湯。
・風湿痺の関節変形に。


<参考文献>
『万病回春解説』 創元社
『万病回春.巻之1-8』 早稲田大学 古典籍総合データベース
『中医臨床のための中薬学』 医歯薬出版株式会社
『鍼灸医学事典』 医道の日本社

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是非参考文献を読んでみて下さい。

下野

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