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雨

下野です。
今回は「諸病の主薬」の第七回になります。


【原文】
瀉心火、用黄連、為主。
瀉肺火、用黄芩、為主。
瀉脾火、用芍薬、為主。
瀉胃火、用石膏、為主。
瀉肝火、用柴胡、為主。
瀉腎火、用知母、為主。
瀉膀胱火、用黄柏、為主。
瀉小腸火、用木通、為主。

<第八に続く>


【解説】
心火(心熱の病証)を瀉すには、黄連を使用すべし。

肺火(肺熱の病証)を瀉すには、黄芩を使用すべし。

脾火(証候の多くは胃火と同じ)を瀉すには、芍薬を使用すべし。

胃火(胃熱の病証)を瀉すには、石膏を使用すべし。

肝火(肝気亢盛)を瀉すには、柴胡を使用すべし。

腎火(別名 竜火。腎陽の病的亢進)を瀉すには、知母を使用すべし。

膀胱火(膀胱の熱)を瀉すには、黄柏を使用すべし。

小腸火(小腸の熱)を瀉すには、木通を使用すべし。

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黄連おうれん

黄連
黄連

キンポウゲ科のオウレン属の根茎。
性味:苦・寒
帰経:心・脾・肝・胆・胃・大腸
効能:
①清熱燥湿
・大腸湿熱の下痢や裏急後重に。
方剤例 → 香連丸・芍薬湯・葛根黄笒黄連湯。
・腸胃湿熱の腹満や嘔吐、悪心、下痢に。
方剤例 → 半夏瀉心湯・枳実消痞丸。
・三焦湿熱の潮熱や胸苦しい、口渇、嘔吐などに。
方剤例 → 杏仁滑石湯。

②清熱瀉火
・熱入心包の高熱や意識障害、譫言、煩燥などに。
方剤例 → 牛黄清心丸・安宮牛黄丸。
・火盛迫血妄行の吐血、鼻血に。
方剤例 → 三黄瀉心湯。
・心火上炎の焦燥、不眠、口内炎に。
方剤例 → 朱砂安神丸。
・陰血不足があるときに。
方剤例 → 黄連阿膠湯。
・胃火の消穀善飢、歯痛に。
方剤例 →清胃散。
・肝火胃犯の胃痛や嘔吐、胃酸過多に。
方剤例 → 左金丸。
・肝火上炎による目の充血や腫れ、痛みに。
方剤例 → 当帰竜薈丸。
・胸中積熱・腸中有寒の腹痛、嘔吐に。
方剤例 → 黄連湯。

③清熱解毒
・熱毒の高熱、煩燥、目の充血、腫れ、咽喉の痛み、皮膚化膿症に。
方剤例 → 黄連解毒湯・普済消毒散。
・火毒による目の充血や腫れ、痛みに。

黄芩おうごん

黄芩
黄芩

シソ科のコガネバナの周皮を除いた根。
内部が充実し、細い円錐形をしたものを条芩、桂芩、尖芩などと称し、
老根で内部が黒く空洞になってものを枯芩、
さらに片条に割れたものを片芩と称する。
性味:苦・寒
帰経:肺・脾 ・大腸・小腸・胆
効能:
①清熱燥湿
・湿温・暑温初期の湿熱阻滞気機の胸が苦しいや、悪心、嘔吐などに。
・湿が熱より重いとき。 → 黄芩滑石湯。
・熱が湿より重いとき 。→ 甘露消毒丹。
・湿熱中阻の腹満や嘔吐時に。 → 半夏瀉心湯。
・大腸湿熱の下痢や裏急後重に。 → 黄芩湯・葛根黄芩黄蓮湯。
・湿熱黄疸に。

②清熱瀉火・解毒・凉血
・肺熱の咳嗽や呼吸の促迫、黄痰などに。
方剤例 → 清肺湯。
・上焦火熱の高熱や口渇、喉痛などに。
方剤例 → 凉膈散。
・上焦火盛の喉の腫れや痛み、皮膚化膿症に。
・血熱妄行の鼻血や吐血に。
方剤例 → 黄蓮解毒湯・三黄瀉心湯。

③清熱安胎
・妊娠中の蘊熱による下腹痛に。
方剤例 → 当帰散。

白芍びゃくしゃく

芍薬
芍薬

ボタン科のシャクヤクのコルク皮を除去し、
そのままあるいは湯通しして乾燥した根。
性味:苦・酸・微寒
帰経:肝・脾
効能:
①補血斂陰
・血虚による顔色がよくない、ふらつき、眩暈、かすみ目などに。
方剤例 → 四物湯。
・陰虚陽浮による自汗や寝汗に。
・外感風寒・表虚の営衛不和の自汗や悪風に。
方剤例 → 桂枝湯。
②柔肝止痛
・肝鬱気滞による胸脇部の張りや痛み、憂鬱感、イライラなどに。
方剤例 → 四逆散・柴胡疏肝散。
・肝脾不和の腹痛や下痢に。
方剤例 → 痛瀉要方・逍遙散・当帰芍薬散。
・血虚肝乗の筋肉の痙攣や痛みに。
方剤例 → 芍薬甘草湯・桂枝加芍薬湯・小建中湯。
・大腸湿熱の下痢や腹痛に。
方剤例 → 芍薬湯・黄笒湯。

③平肝斂陰
・肝陰不足・肝陽上亢の頭痛や眩暈に。
方剤例 → 鎮肝熄風湯・七物降下湯。

④その他
・利水剤として。
方剤例 → 真武湯。
・血痺に。
方剤例 → 黄耆桂枝五物湯。

石膏せっこう

石膏
石膏

含水硫酸カルシウム鉱石。
性味:辛・甘・大寒
帰経:肺・胃
効能:
①清気分実熱
・外感熱病の気分証で高熱や煩燥、口渇、発汗などに。
方剤例 → 白虎湯。
・気分証に血熱をともなったもの。
方剤例 → 清瘟敗毒散・化斑湯。
・気分証の回復期で胸苦しいなどに。
方剤例 → 竹葉石膏湯。

②清肺熱
・肺熱の呼吸促迫や咳嗽、胸苦しいなどに。
方剤例 → 麻杏甘石湯。

③清胃火
・胃火の頭痛や歯痛、歯齦の腫れや痛みに。
方剤例 → 清胃散。
・陰虚の胃火上炎の歯痛や頭痛。
方剤例 → 玉女煎。

④生肌斂瘡
・切り傷や潰瘍、熱傷などに。

柴胡さいこ

柴胡
柴胡

セリ科のミシマサイコ。
又はその変種の根。
性味:苦・微辛・微寒
帰経:肝・胆・心包・三焦
効能:
①透表泄熱
・外感表証の発熱に。
方剤例 → 柴葛解肌湯。
・少陽在邪の寒熱往来、口苦、胸苦しい、悪心などに。
方剤例 → 小柴胡湯。

②疏肝解鬱
・肝鬱気滞の憂鬱やイライラ、月経不順などに。
方剤例 → 四逆散・柴胡疏肝散・逍遙散。

③昇拳陽気
・気虚下陥の慢性下痢や脱肛、子宮下垂に。
方剤例 → 補中益気湯・昇陥湯。

④その他
・瘧疾の寒熱発作に。
方剤例 → 柴胡達原飲。

知母ちも

知母
知母

ユリ科のハナスゲの根茎。
性味:苦・寒
帰経:肺・胃・腎
効能:
①清熱瀉火
・外感熱病の高熱や煩燥、口渇、冷飲を欲すなどに。
方剤例 → 白虎湯。

②清肺潤燥
・肺熱の咳嗽や黄色の痰などに。
・肺陰虚の乾咳、少痰に。
方剤例 → 二母丸。

③滋陰・退虚熱
・外感熱病後期の傷陰微熱に。
方剤例 → 青蒿鼈甲湯。
・陰虚火旺の骨蒸潮熱や夢精、寝汗に。
方剤例 → 知柏地黄丸・大補陰丸。

④生津止渇
・胃熱の口渇、肺腎陰虚の消渇に。
方剤例 → 玉液湯・麦門冬飲子。

⑤その他
・陰虚の排尿困難に。
方剤例 → 通関丸。
・陰虚の腸燥便秘に。

黄柏おうばく

黄柏
黄柏

ミカン科のキハダ。
またはその他の同属植物の
周皮を除いた樹皮。
性味:苦・寒
帰経:腎・胆・膀胱
効能
①清熱燥湿:黄疸、下痢、臭いのある帯下、排尿痛など。
方剤例 → 白頭翁湯・易黄湯・二炒散。

②清熱瀉火:陰虚火旺の遺精、盗汗など。
方剤例 → 知柏地黄丸。

③清熱解毒:皮膚の化膿症、口内炎、火傷など。
方剤例 → 苦参、白鮮皮などと用いる。

木通もくつう

木通『中医臨床のための中薬学』より
木通『中医臨床のための中薬学』より

アケビ科のアケビ、
及び同属植物の蔓性茎。
性味:苦・寒
帰経:心・肺・小腸・膀胱
効能
①降火利水
・心火が小腸に移り生じる焦燥や不眠、口内炎、排尿痛、排尿困難に。
方剤例 → 導赤散。
・下腿の浮腫や痛み、尿量の減少に。
方剤例 → 木通散。

②宣通血脈
血瘀の無月経、乳汁分泌不全、湿熱の痺症の関節痛や運動障害に。


<参考文献>
『万病回春解説』 創元社
『万病回春.巻之1-8』 早稲田大学 古典籍総合データベース
『中医臨床のための中薬学』 医歯薬出版株式会社
『本草綱目』 国立国会図書館デジタルコレクション
『東方栄養新書』 メディカルユーコン

※画像や文献に関して、ご興味がおありの方は
是非参考文献を読んでみて下さい。

下野

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