【受付アルバイト募集!(鍼灸学生向け)】
鍼灸の学生さんを対象に受付アルバイトを一名募集中です。
一年契約(希望により更新可能)で時給制となります。

https://www.1sshindo.com/blog/zenith12350/


升麻
升麻

張仲景の古医書『傷寒論しょうかんろん』の解説です。

今回の傷寒論は弁厥陰病脈証并治 三百三十八章。
この章では、臓厥と蛔厥、及び蛔厥証の治療について
詳しく述べております。


三百三十八章

傷寒脉微而厥、至七八日、膚冷、其人躁無暫安時者、
此爲藏厥、非蚘厥也。蚘厥者、其人當吐蚘。
令病者靜、而復時煩、此爲藏寒。
蚘上入膈、故煩、須臾復止、得食而嘔、
又煩者、蚘聞食臭出、其人當自吐蚘。
蚘厥者、烏梅圓主之、又主久利方。

烏梅三百枚    細辛六兩   乾薑十兩   黄連十六兩   當歸四兩   
附子六兩、炮、去皮   蜀椒四兩、出汗    桂枝六兩、去皮   人參六兩    黄蘗六兩

右十味、異擣篩、合治之、以苦酒、漬烏梅一宿、
去核、蒸之五斗米下、飯熟擣成泥、和藥令相得、内臼中、
與蜜杵二千下、圓如梧桐子大、先食、
飮服十圓、日三服、稍加至二十圓、禁生冷滑物臭食等。

和訓:
傷寒脉微にして厥し、七八日に至り膚冷え、
其の人躁して暫くも安き時なきものは、
此れ藏厥と為し、蚘厥にあらざるなり。
蚘厥は、其の人当に蚘を吐すべし。
病者をして静かならしめ、
而るに復た時に煩せしむるものは、此れ蔵寒と為す。
蚘上りて其の膈に入り、故に煩し、
須臾に復た止み、食を得て嘔し、
又煩するものは、蚘食臭を聞いて出で、
其の人常に自ら蚘を吐す。
蚘厥は、烏梅丸之を主る、又久利を主る。方一。

烏梅三百枚 細辛六両 乾薑十両 黄連十六両 当帰四両
附子六両、炮ず、皮を去る 蜀椒四両、汗を出す 桂枝六両、去皮 人参六両 黄蘗六両各一両
右十味、擣き篩いを異にし、合して之を治め、苦酒を以て烏梅を漬けること一宿、
核を去り、之を五斗の米の下に蒸し、飯熟して擣きて泥と成れば、薬と和して相得しめ、臼中に内れ、
蜜と杵くこと二千下、梧桐子大の如く丸め、食飲に先だち、
十丸を服し、日に三服し、稍加えて二十丸に至り、生冷滑物臭食等を禁ず。


傷寒脉微而厥、至七八日、膚冷、
其人躁無暫安時者、此爲藏厥、非蚘厥也

臓厥とは即ち、少陰臓機が虚敗したことにより生じる厥証であり、
少陰の陰寒が盛大な重症である。
そして真陽不足で寒邪を感受するので、
脈微を示して、陰盛陽衰となり、厥が形成されるが、
7〜8日経過して陽経の主気する時期になっても厥証は治らず、
さらに皮膚が冷たいのは、真陽の虚が己に極まって
表の営衛両気が交流しないためである。
また病人が落ち着かず不安で静まらないのは、
正気が遂に邪気に勝てず、臓気が敗脱したことを示す悪候である。
臓厥証は純陰無陽を原因とするので、
厥陰病の寒熱が錯雑して生じる蛔厥証とは異なる。

蚘厥者、其人當吐蚘
蛔厥証の特徴は病人に蛔虫の寄生があれば
蛔虫を吐き(吐蛔)、四肢厥冷が生じる場合をいう。

・令病者靜、而復時煩、此爲藏寒
病人は安静にしているが、時々気分が落ち着かなくなる。
これは内臓に寒があるからだ。

・蚘上入膈、故煩、須臾復止、得食而嘔、
又煩者、蚘聞食臭出、其人當自吐蚘
隔膜より下に寒があり、隔膜より上には熱があるときに、
蛔虫が下焦の寒を避けて熱のある温かい場所に移動するためであり、
それにより心煩が生じる。
しかし蛔虫は上焦に長くいられないので
しばらくして蛔虫が下焦に戻れば、心煩もなくなる。
寒が膈下にあれば、本来は食べられないが
それでも食事を摂れば胃気上逆して嘔吐が起こる。
そして蛔虫は”食物の匂いを嗅ぎつけて”再び
膈上に侵入して心煩を引き起こす。
このように心煩と嘔吐が同時にみられる時は
蛔虫が決して下焦に降りることはないので、
病人は自ら蛔虫を吐くのである。

蚘厥者、烏梅圓主之、又主久利方
蛔厥証の本質は、厥陰病の寒熱錯雑を病機とするので、
「又主久利」から、烏梅丸は寒証と熱証の二証に
併用してもよい薬であることが分かる。
これは蛔厥を主治するのだが、
他に厥陰病による慢性の下痢にも効果を発揮する。

烏梅丸

烏梅
基原:バラ科のウメの未成熟果実を薫製させたもの。

烏梅は酸渋で清凉収渋に働き、
渋腸止瀉・斂肺止咳・固崩止血の効能が主であり、
さらに酸で益胃生津し、「蛔は酸を得ればすなわち伏す」
で安蛔止吐の良薬でもある。
それゆえ、肺虚久咳・脾虚久痢・崩漏便血・煩熱口渇・胃呆不食・
蛔虫による嘔吐腹痛などに適する。
この他、外用すると開竅啓閉して胬肉死肌を去る。

細辛
細辛

細辛
基原:ウマノスズクサ科のケイリンサイシン、
またはウスバサイシンの根をつけた全草(中国産)。

日本薬局方では根および根茎を規定している。
細辛は辛温の性烈であり、外は風寒を散じ、内は寒飲を化し、
上は頭風を疏し、
下は腎気に通じ、開竅・止痛にも働く。
外感風寒の頭痛・身痛・鼻塞および
寒飲内停の咳嗽気喘・痰多に対する主薬であり、
とくに外感風寒に寒飲を兼ねる場合に適し、
風寒湿痺の関節拘攣・疼痛にも用いる。
また、辛香走竄で、粉末を吹鼻すると通竅取嚔の効果が得られるので、
開関醒神の救急に使用される。

乾薑
乾薑

乾薑
基原:ショウガ科のショウガの根茎を乾燥したもの。
古くは皮を去り水でさらした後に晒乾した。

乾姜は生姜を乾燥させてもので
辛散の性質が弱まって
辛熱燥烈の性質が増強され、
無毒であり、温中散寒の主薬であるとともに、
回陽通脈・燥湿消痰の効能をもつ。
陰寒内盛・陽衰欲脱の肢冷脈微、脾胃虚寒の食少不運・
脘腹冷痛・吐瀉冷痢、
肺寒痰飲の喘咳、
風寒湿痺の肢節冷痛などに適し、
乾姜は主に脾胃に入り温中寒散する。

黄連
黄連

黄連
基原:キンポウゲ科のオウレン、
及びその他同属植物の根をほとんど除いた根茎。
以上は日本産である。
中国産は同属の川連・味連、雅連・峨眉連、
野黄連・鳳眉連、雲連などに由来する。

黄連は大苦大寒で、寒で清熱し苦で燥湿し、
心・胃・肝・胆の実火を清瀉し、
胃腸積滞の湿熱を除き、
清心除煩・消痞・止痢に働き、湿火欝結に対する主薬である。
それゆえ、心火熾盛の煩熱神昏・心煩不眠、
肝胆火昇の目赤腫痛・羞明流涙、
胃熱の清穀善飢、
腸胃湿熱の痞満嘔吐・腹痛泄瀉などの要薬である。
また、清熱泄火・解毒にも働くので、
疔毒癰腫・口舌潰瘍・湿瘡瘙痒および
迫血妄行の吐血衄血にも有効である。

当帰
当帰

当帰
基原:セリ科の根。
根頭部を帰頭、主根部を当帰身、支根を当帰尾、
帰身と帰尾を含めて全当帰という。

当帰は甘補·辛散·苦泄·温通し、
辛香善走するので「血中の気薬」ともいわれ、
補血活血·行気止痛の効能をもち,心·肝·脾に入る。
心は血を主り、肝は血を蔵し,脾は統血するので、
血病の要品であり、血虚血滞を問わず主薬として用い、
婦人科の良薬である。
それゆえ、婦女の月経不調·経閉·痛経および
胎前(妊娠中)·産後の諸病に常用する,このほか、
癰疽瘡瘍には消腫止痛・排膿生肌に、
瘀血作痛·跌打損傷には行瘀止痛に、虚寒腹痛には補血散寒止痛
に,痺痛麻木には活血散寒に、血虛萎黃には養血補虛に、それぞれ働く。
また、潤腸通便の効能をもつので腸燥便秘にも有効である。
すなわち、血虛血滯によるすべての病証に使用でき、血分有寒に最適である。

附子
附子

附子
基原:
キンポウゲ科のカラトリカブト、その他の同属植物の子根。

加工・炮製して利用することが多い。
附子は辛熱壮烈であり、「走きて守らず」で
十二経を通じ、
下焦の元陽(命火)を峻補して裏の寒湿を除き、
皮毛に外達して表の風寒を散じる。
それゆえに亡陽欲脱の身冷肢冷・大汗淋漓・
吐利不止・脈微欲脱てんなどには回陽救逆し、
腎陽不足の陽痿滑精・腰膝冷弱には補火壮陽し、
脾腎陽虚・陰寒内盛の心腹冷痛・吐瀉転筋には温裏散寒し、
陽虚不化水湿の身面浮腫・腰以下種甚には
助陽行水して冷湿を除き、
風寒湿痺の疼痛麻木には祛風散寒止痛し、
陽気不足の外感風寒で
悪寒発熱・脈沈を呈するときは助陽発表する。
このほか、補益薬と用いると
一切の内傷不足・陽気衰弱に使用できる。

蜀椒
基源:ミカン科のサンショウ属植物、
イヌザンショウなどの成熟した果実の果皮。

蜀椒は辛熱で、燥散して陰寒を除き、
脾に入って散寒燥·止痛するので、
寒湿傷中の脘腹冷痛·飲食不消·吐瀉冷痢などに適し、
また肺の寒邪を散じ命門の火を補うので、
肺寒の咳嗽や命門火衰·腎気上逆による痰喘などにも用いる。
このほか、辛辣麻酔の性質があり
回虫などを駆殺し,虫積による腹痛·吐蛔に効果がある。
散寒燥補火の効能を利用し、風寒湿痺·呃噫短気·
痰飲水腫などにも使用する。
煎液を外用すると,瘡腫·痔漏·湿疹·陰部瘙瘁などに有効である。

桂枝
桂枝

桂枝
基原:クスノキ科のケイの若枝または樹皮。

桂枝は辛甘・温で、主として肺・心・膀胱経に入り、
兼ねて脾・肝・腎の諸経に入り、辛散温通して
気血を振奮し営衛を透達し、
外は表を行って肌腠の風寒を緩散し、
四肢に横走して経脈の寒滞を温通し、
散寒止痛・活血通経に働くので、
風寒表証、風湿痺痛・中焦虚寒の
腹痛・血寒経閉などに対する常用薬である。
発汗力は緩和であるから、
風寒表証では、有汗・無汗問わず応用でき、
とくに体虚感冒・上肢肩臂疼痛・体虚新感の
風寒痺痛などにもっとも適している。
このほか、水湿は陰邪で陽気を得てはじめて化し、
通陽化気の桂枝は
化湿利水を強めるので、
利水化湿薬に配合して痰飲・畜水などに用いる。

人参
人参

人参
基原:ウコギ科のオタネニンジンの根。
加工調整法の違いにより種々の異なった生薬名を有する。

人参は甘・微苦・微温で中和の性を稟け、
脾肺の気を補い、生化の源である
脾気と
一身の気を主る肺気の充盈することにより、
一身の気を旺盛にし、
大補元気の効能をもつ。
元気が充盈すると、益血生津し安神し智恵を増すので、
生津止渇・安神益智にも働く。
それゆえ、虚労内傷に対する第一の要薬であり、
気血津液の不足すべてに使用でき、
脾気虚の倦怠無力・食少吐瀉、
肺気不足の気短喘促・脈虚自汗、
心神不安の失眠多夢・驚悸健忘、
津液虧耗の口乾消渇などに有効である。
また、すべての大病・久病・大吐瀉による
元気虚衰の虚極欲脱・脈微欲絶に対し、もっとも主要な薬物である。

黄柏
黄柏

黄蘗
基原:
ミカン科のキハダまたはその他同属植物の周皮を除いた樹皮。
南方に産するものほど樹皮が厚く良品とされる。

黄柏は苦寒で沈降し、清熱燥湿・解毒療瘡に働き
腎経相火を瀉し下焦の湿熱を清泄する効能に優れている。
湿熱蘊結による黄疸・尿閉・淋濁・帯下・熱痢・
泄瀉・便血・痔漏・足膝腫痛、
および陰虚火旺の骨蒸労熱・盗汗遺精・
癰腫瘡毒・湿瘡瘙痒などに用いる。

提要:
臓厥と蛔厥、及び蛔厥証の治療について。

『現代語訳 宋本傷寒論』訳を使用:
傷寒の病に罹って脉は微で四肢が逆冷し、
第七〜八日になった頃に全身の皮膚が冷たくなり、
患者は手足をせわしなく一時もおとなしくしていない場合は、
これは臓厥証であり、蛔厥証ではない。
蛔厥証の特徴は、患者が蛔虫を吐出することである。
患者はじっとしているが、また、たえずイライラもしているのは、
内臓に寒があるからだ。
蛔虫が胸膈に上ってあばれると、イライラするが、
しばらくするとまた落ち着く。
食事をしたあと嘔吐し、そしてイライラするのは、
蛔虫が食物の臭いを感じて動き出すからであり、
このような患者ではいつも蛔虫を吐き出している。
蛔厥証は、烏梅丸で治療しなければならない。
この処方はまた慢性の下痢証も治療する。処方を記載。第一法。

烏梅三百個 細辛六両 乾薑十両 黄連十六両
当帰四両 附子六両、炮じる、皮を除く 蜀椒四両、焙る 桂枝六両、皮を除く
人参六両 黄蘗六両
右の十味〔の烏梅以外〕は、それぞれを別々に搗いて篩い、
その後にこれらを合わせる。烏梅は酢に一晩漬けて、種を除き、
五斗の米と合わせて蒸し、米が軟らかくなったら搗いて泥状にして、
先に得た粉末とよく混ぜあわせ、臼に移し、
蜜を加えて杵で二千回ほど搗き、梧桐子の大きさの丸薬を作る。
飲食の前に十丸を、一日に三回服用するが、効果がなければ漸増して
一回二十丸まで服用する。
服薬中は、生もの、冷たい食品、ねばねばした物、
匂いの強い食品などを摂ってはならない。


参考文献:
『現代語訳 宋本傷寒論』
『中国傷寒論解説』
『傷寒論を読もう』
『中医基本用語辞典』   東洋学術出版社
『傷寒論演習』
『傷寒論鍼灸配穴選注』 緑書房
『増補 傷寒論真髄』  績文堂
『中医臨床家のための中薬学』
『中医臨床家のための方剤学』 医歯薬出版株式会社

生薬イメージ画像:為沢 画

※画像や文献に関して、ご興味がおありの方は
是非参考文献を読んでみて下さい。

為沢

返事を書く

Please enter your comment!
Please enter your name here