自由、権利、平等という概念を
徹底して叩き込まれたからでしょうか。
今の20代の人達は、
サラリーマンなどといった職業ではなく、
手に職を求めれば、上に書いた自由・権利・平等が得られると
楽園に描き、この鍼灸業界に入ってきます。
そのような学生達を目の当たりにしても
学校側は夢が膨らむ様なことを口にして、
ますます学生達は自分の夢の世界をこの業界に求めるという
現実があります。

さてさて、
その未来予想図に早速、言ってしまいましょう。
その認識は大きく間違っております。
何故ならば、
自由や権利などというものは、
鍼灸師になったからといって、国家資格を取得したからといって
あなたがたがその日を境に会得するものではなくて、
一生懸命仕事をして、
ゆっくりゆっくり認められる事で勝ち得るものだからです。
平等という概念なんてものも持ち得るものです。
免許取り立ての青二才が
いち患者という、人生の先輩の前に立ってですね、
確かに患者は先生とあなた方のことを呼ぶかもしれませんが、
それは社会的な儀式の有り様であり、
あなた方は尊敬されているわけではありません。
ましてや、患者とあなた方が対等なわけでもありません。
仕事人として出始める頃にあっては、
お前大丈夫か、信頼出来ないぞという目で見られるわけであります。
口には出しませんが、心では思われるわけであります。
それが現実です。
そこにですよ、
そこに、あなた方が思い描いていた
自由、権利、平等というものは全く存在しないことを
ようやく気付く訳です。
仕事人として相手との平等性が成り立つのは
あなたの仕事がしっかりと相手に伝わった時、
或いは、結果が伴わなくとも、
一生懸命戦う姿勢が伝わった時です。
その時に、あなた方は職業人としての権利をようやく手にするのであります。
患者もその世界で一生懸命戦っておられる方ばかりです。
白衣を着ている人間に無条件にひれ伏す、
そのような時代では無いことをまずは前提として受け入れることが、
まず、学生諸君には必要なのではないかと思います。
或いは、お花畑みたいなことばかりを言わずに、
誰かが示してやることだと思います。
でも、誰も言いませんよね。
そんなこと教員が言い出すと生徒が集まらないですから。
そんなこと勉強会で言い出すと集金出来ないですから。
そのような現状でありますから、
あなた方が避けたがっていたはずのサラリーマン、会社員の方々の世界の方が
我々、鍼灸師の世界よりも
よほども自由、権利、平等という概念が存在するっていう、
これが眼もあてられない現実です。
我々鍼灸師としての需要はどこにあるのか。
鍼灸師としての資格があることではありません。
それは必要条件です。
(無資格は論外)
現代医学で治せない疾患を抱えてらっしゃる方が
この医学で救われる。
その技術を持つ者を求めているのであり、
若者が生きがいを求め、
新しい社会人として鍼をもつ形、
そこに素晴らしさを感じて寄り集うわけではないのです。
困って、しかめっ面して、
助けてくれと這いつくばってくるのです。
今の業界においては、
需要と供給の意識にズレがあることに、
これからこの道を歩むもの達はまず、気付いた方が宜しいかと思われます。
これは何も上から言っているわけではありません。
僕自身が、師のところで仕事する機会が失われ、
自分自身で生きていくしか無く、
22、23歳の頃に一鍼堂を立ち上げて、
そういう辛い思いを経験してきたから言えるのです。
若者が良い仕事をしたとして、
100点取っても、40点ぐらいしか評価されませんよ。
100点の評価が欲しければ、230点ぐらい取るしかないんです。
100点しか採点表にない世界で、
ぶっ飛んで、230点取るしか無いんです。
規格外の仕事をしてみせて初めて始まるんです。
つまり、天才になるしかないんです。
名人になるしかないんです。
仮に誰にも治せないものを鍼一本で治した。
奇跡を度々起こした。
それでもね。
それでも、仕事がないんですよ。
そんなことってあるんですよ。
それはなんでだろう。
社会人としてまだまだ薄っぺらいから信頼されていないからなんですね。
当時の僕には誰々の弟子、
何々流の何々みたいな看板も全くなかった。
僕の師匠は現象であり、
天地だってずっと思ってましたけど、
そんなこと言うもんなら患者さん、へえ~の一言で終わってしまいますからね。
それが現実。
どこに温かい自由の風などありましょうか。
でも、そこの中で生まれる苦悩と経験は
何ものには変える事の出来ないかけがいのないものであります。
無駄と呼べるものは何一つありません。
良いですか、
自由、権利、平等なんてものは何十年もかけて勝ち得て下さい。
それがあって、初めてこの業界は変わるんだって気がしています。
お願いします。
お花畑なんてないですよ。
耳が痛いかもしれませんが、
そんな事を言う人間もいるんだということぐらいは認識して欲しいです。

一鍼堂 林

 

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