何か大事なものを失ったり
傷ついたり、
うまくいかなかったり、
そういう時はどうしようもないはずなのに、
素直に鍼と向き合うことが出来て、
ああ、俺にはこれしかないな
俺は鍼がやっぱり一番好きだ
と再確認する瞬間があり、
また、そういう時にはいつだってあの頃の、
自分には何もなく鍼の先にだけ夢を描いていたあの頃の匂いが漂い、
そういう苦境の中の、
自分と鍼の関係をものすごく愛してしまう。
故郷に感じてしまう。
ああ、こうあるべきだと
妙にそこに改めて居座ってしまいたくなることが多々あります。
今もそうです。
鍼を持っていて良かった。
底なしに傷ついた日の空って何故か妙に広く澄んでいる。
また、そんな空の下での鍼は妙に輝く何かがあるんです。
鍼師はまことに鍼のもとに生きよという示しなんでしょうね。
鍼はいつも術者としての本質を覗き続けている。
彼らの最高の相棒でいられるよう、鍼に対して無垢なまま一生向き合いたい。

一鍼堂 林

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