貝母
貝母

張仲景の古医書『傷寒論』の解説です。

今回の傷寒論は弁少陰病脈証并治 三百十三章。
この章では、少陰病で寒閉により
咽喉痛となった場合の証治について詳しく述べております。


三百十三章

少陰病、咽中傷、半夏散及湯主之。方十二。
半夏洗    桂枝去皮   甘草
右三味、等分、各別搗篩已、合治之、白飲和服方寸匕、日三服。
若不能散服者、以水一升、煎七沸、
内散兩方寸匕、更煮三沸、下火令小冷、少少嚥之。
半夏有毒、不当散服。

和訓:
少陰病、咽中痛むは、半夏散及び湯之を主る。方十二。
半夏洗う 桂枝皮を去る 甘草炙る
右三味、等分し、各別に搗きて篩い已え、
合せて之を治め、白飲に和して方寸匕を服し、日に三服す。
若し散にて服すること能わざるものは、
水一升を以て、煎ずること七沸し、
散両方寸匕を内れ、更に煮ること三沸し、
火を下して小し冷さしめ、少少之を嚥む。
半夏に毒あり、当に散にて服すべからず。


少陰病、咽中傷、半夏散及湯主之
寒邪が外表を束縛し、陽が鬱滞して
経気がスムーズに巡らないことにより
邪が少陰経脈を犯し、咽喉痛となっている。
これと火が上犯して肺を灼傷した場合の咽喉痛はとは、
全く病理が異なるので注意しなければならない。
寒・涼は禁忌であるから、辛・温・開・達の半夏散及び半夏湯で咽喉部に客している
寒気を除き、怫鬱(塞がって悶えている様子)させている熱を散じていくのである。

半夏散

半夏
半夏

半夏
基原:
サトイモ科のカラスビシャクの
塊茎の外皮を除去して乾燥したもの。

半夏は辛散温燥し、水湿を行らせ逆気を下し、
水湿を除けば脾が健運して痰涎は消滅し、
逆気が下降すると
胃気が和して
痞満嘔吐は止むので燥湿化痰・和胃消痞・降逆止嘔の良薬である。
それゆえ、脾虚生痰の多痰、痰濁上擾の心悸・失眠・眩暈、
痰湿犯胃の悪心嘔吐・飲食呆滞・心下痞結にもっとも適する。
また、適当な配合を行えば、
痰湿犯胃の咳喘・胃虚や胃熱の嘔吐・
痰湿入絡の痰核などにも使用できる。
このほか、行湿通腸するので老人虚秘にも効果がある。
生半夏を外用すると癰疽腫毒を消す。

桂枝
桂枝

桂枝
基原:
クスノキ科のケイの若枝または樹皮。

桂枝は辛甘・温で、主として肺・心・膀胱経に入り、
兼ねて脾・肝・腎の諸経に入り、
辛散温通して気血を振奮し営衛を透達し、
外は表を行って肌腠の風寒を緩散し、
四肢に横走して経脈の寒滞を温通し、
散寒止痛・活血通経に働くので、
風寒表証、風湿痺痛・中焦虚寒の腹痛・
血寒経閉などに対する常用薬である。
発汗力は緩和であるから、
風寒表証では、有汗・無汗問わず応用でき、
とくに体虚感冒・上肢肩臂疼痛・
体虚新感の風寒痺痛などにもっとも適している。
このほか、水湿は陰邪で陽気を得てはじめて化し、
通陽化気の桂枝は
化湿利水を強めるので、
利水化湿薬に配合して痰飲・畜水などに用いる。

甘草
甘草

甘草
基原:
マメ科のウラルカンゾウ、
またはその他同属植物の根およびストロン。

甘草の甘平で、脾胃の正薬であり、
甘緩で緩急に働き、補中益気・潤肺祛痰・止咳・
清熱解毒・緩急止痛・調和薬性などの性能を持つ。
そのため、脾胃虚弱の中気不足に用いられる。
また、薬性を調和し百毒を解すので、
熱薬と用いると熱性を緩め
寒薬と用いると
寒性を緩めるなど薬性を緩和し薬味を矯正することができる。

提要:
少陰病で寒閉により咽喉痛となった場合の証治について。

『現代語訳 宋本傷寒論』訳を使用:
少陰病に罹り、咽喉部が痛む場合は、
半夏散或いは湯で治療する。処方を記載。第十二法。
半夏洗う 桂枝皮を除く 甘草除く
右の三味は、等分量を、それぞれを別々に搗き砕いて篩にかけたあと、
混ぜ合わせ、方寸匕の量を重湯とよく混ぜあわせて、日に三服する。
もし散剤が服用できなければ、一升の水を、充分に沸かして、
前記の散薬を二方寸匕の量を入れ、
しばらく煮た後、火から降ろしてさまし、少しずつ呑む。
半夏には毒があり、散剤として服用すべきではない。


参考文献:
『現代語訳 宋本傷寒論』
『中国傷寒論解説』
『傷寒論を読もう』
『中医基本用語辞典』   東洋学術出版社
『傷寒論演習』
『傷寒論鍼灸配穴選注』 緑書房
『増補 傷寒論真髄』  績文堂
『中医臨床家のための中薬学』
『中医臨床家のための方剤学』 医歯薬出版株式会社

生薬イメージ画像:為沢 画

※画像や文献に関して、ご興味がおありの方は
是非参考文献を読んでみて下さい。

為沢

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