『かないくん』 東京糸井重里事務所より
『かないくん』 東京糸井重里事務所より

こんにちは、為沢です。
先日、「朝のリレー」で有名な
谷川俊太郎氏の詩が読みたいなとフと思い立ち
本屋で本を探してたんですが、気になる絵本と出会いました。
詩:谷川俊太郎 画:松本大洋 の『かないくん』という作品です。
(両氏、どちらもファンなので即買いです笑)
この作品のテーマは生けるものすべて必ず迎える”死”について。非常に考えさせられます。
絵本ですが、大人子ども関係なく読める作品ですので、御興味のある方は是非。


ここからは、張仲景の古医書『傷寒論』の解説です。

今回の傷寒論は弁太陽病脈証并治(下)百六十六章と百六十七章です。
百六十六章では、痰飲が胸中に痞塞した場合の証治について。
百六十七章では、臓結の危証について詳しく述べております。


百六十六章

病如桂枝證、頭不痛、項不強、寸脉微浮、胸中痞鞕
氣上衝咽喉、不得息者、此爲胸有寒也、當吐之、宜瓜蔕散。方二十八。
瓜蔕一分、熬黃 赤小豆一分
右二味、各別搗篩、爲散巳、合治之。取一銭匕、以香豉一合、
用熱湯七合煮作稀糜、去滓、取汁和散、溫頓服之。
不吐者、少少加、得快吐乃止。諸亡血虚家、不可与瓜蔕散。

和訓:
病桂枝の証の如きなれども、頭痛まず、項強ばらず、寸脉微浮に、胸中痞鞕し、
気上りて咽喉を衝き、息するを得ざるものは、此れ胸に寒ありと為すなり。
当に之を吐すべし。瓜蔕散に宜し。方二十八。
瓜蔕一分、黃に熬る 赤小豆一分
右二味、各別に搗きて篩い、散と爲し巳り、合して之を治む。
一銭匕を取り、香豉一合を以て、熱湯七合を用い煮て稀糜を作り、滓を去り、
汁を取りて散と和し、溫くして之を頓服す。吐せざるものは、少少加え、快吐を得れば乃と止む。
諸の亡血虚家、瓜蔕散を与うべからず。


病如桂枝證、頭不痛、項不強、寸脉微浮
桂枝湯証に似た病が現れているが、
頭痛はなく、項も強ばらないので邪は経脈中にないことが分かる。
脈は寸口で微浮を示している。
これは邪が表にはなく、上方にあるということである。

胸中痞鞕、氣上衝咽喉
胸中痞硬は痰飲が内を阻滞させるために引き起こしている症状で
「硬」は、胸中を塞いでいる鬱陶しい様子を表現している。
「氣上衝咽喉」は邪に上越する勢いがあることを示している。

不得息者、此爲胸有寒也、當吐之、宜瓜蔕散
邪が胸中の働きを妨げ、そのうえ正気は邪の上衝を拒んでいるので病人は呼吸ができない。
太陽の裏に病があり、表気(衝陽)が外を固めることができないので
表に発熱、汗出、悪風などの桂枝湯証で見られる症状が出現しているのである。
これは胸中に痰飲があることを指す。
この治療は瓜蔕散で邪の勢いにまかせて追い出していくようにすれば
太陽の表と裏が和して、諸症状を治療することができる。

瓜蔕散

瓜蒂『中医臨床のための中薬学』より
瓜蒂『中医臨床のための中薬学』より

瓜蔕(かてい)
基原:
ウリ科のマクワウリの瓜蒂。

瓜蒂は苦寒・小毒で、涌吐の専薬である。
痰熱が胸中に欝して生じる癲癇発作・喉痺喘息・煩躁不眠、
宿食が胃に停留したための胸脘痞硬、および誤食毒物などに用い、催吐させる。
研末を吹鼻すると引邪解外・宣泄湿邪の効能があり、
陽明経の湿熱を引去するので、湿熱黄疸や湿家の頭痛・身面浮腫に有効である。

 

赤小豆『中医臨床のための中薬学』より
赤小豆『中医臨床のための中薬学』より

赤小豆(せきしょうず)
基原:
マメ科のツルアズキ、またはアズキの成熟種子。

赤小豆は甘酸・偏凉で下行し水道を通利し
水湿を下出して消腫し、湿熱を外泄して退黃し、
かつ心経に入って降火行血して清熱解毒する。
利水消腫・利湿退黃・清熱解毒の効能により、
水腫・脚気・小便不利・黄疸・瘡毒などに適する。

提要:
痰飲が胸中に痞塞した場合の証治について。

訳:
病状はあたかも桂枝湯証のようであるが、しかし頭は痛まず、項部もこわばらず
寸脉は微浮で、胸が痞えて硬く、咽喉に気が衝き上がってきて、呼吸困難を覚えるのは
胸中に痰飲があるからで、催吐法で治療せねばならず、瓜蔕散がよい。処方を記載。第二十八法。
瓜蔕一分、黄色く焙る 赤小豆一分
右の二味を、それぞれ別に搗いて篩にかけ、散にし終えてから、両者を合わせる。
そこから一銭匕を取り、一合の香豉を、七合の熱湯で粒がなくなるまでよく煮て、滓を除き、
取れた汁と散をよく混ぜ、温かいうちに頓服する。服用しても吐かなければ、少しずつ増量し、気持ちよく吐いたら服用を止める。
亡血その他正気が衰弱した人は、瓜蔕散を与えてはならない。


百六十七章

病脇下素有痞、連在臍傍、
痛引少腹、入陰筋者、此名藏結、死。二十九。

和訓:
病脇下に素痞あり、連りて臍傍に在り、
痛み少腹を引き、陰筋に入るものは、此れ藏結と名づけ、死す。二十九。


病脇下素有痞、連在臍傍
病人が以前から胸窩に痞積があり、臍の横まで広がっている。
これは肝脾の臓気が虚衰し、脈絡閉阻、陰邪内伏の状態で日数が経過し、
病が累積して作られたものである。
このような重病の場合、生体は邪の少しの攻撃にも耐えられなくなっている。

痛引少腹、入陰筋者、此名藏結、死
この状態で寒邪が直接内に侵入すれば
寒邪は凝滞して痞積し、真臓の気は凝結して通らず
脇下、臍傍、少腹にかけて痛むようになる。
「入陰筋」というのは、病が陰に入って陽に出ず、
神が正常に働かず、陰陽が離絶することを表している、死証である。

提要:
臓結の危証について。

訳:
患者の脇下にもともと痞積があり、臍のそばまで達し、
痛む場合は少腹にまでひびき、また外性器が縮み上がるものは、
藏結と名付け、死証である。第二十九法。


参考文献:
『現代語訳 宋本傷寒論』
『中国傷寒論解説』
『傷寒論を読もう』
『中医基本用語辞典』   東洋学術出版社
『傷寒論演習』
『傷寒論鍼灸配穴選注』 緑書房
『増補 傷寒論真髄』  績文堂
『中医臨床家のための中薬学』
『中医臨床家のための方剤学』 医歯薬出版株式会社

生薬イメージ画像:
『中医臨床家のための中薬学』 医歯薬出版株式会社

※画像や文献に関して、ご興味がおありの方は
是非参考文献を読んでみて下さい。

為沢

2 コメント

  1. いい本ですね。学生時代に幼なじみを交通事故で亡くしているので最初からリアリティありすぎ、親の加齢や健康状態が気がかりな現状もあり、突かれたくないところを突かれたようで購入できませんでした。でもいつか、そういう心の曇った部分がなくなった時にもう一度手に取ってみたいな、と思っています。その時はまた今とは違う感じ方になるでしょうね。

    • おコメさん、コメントありがとうございます。
      とても丁寧に描かれている絵本だと思います。
      私も学生時代の友人が事故で亡くなっている経験があるので
      この本にはリアリティを感じました。感慨深いです。

      おコメさんの仰る通り、
      歳を重ねると死についての考え方、捉え方が違ってくるんでしょう。
      個人的な見解ですが、今は死について
      もの凄く恐い反面、楽しみでもあります。
      どんな世界が待っているのかな?なんて考えたりします。
      (地獄かも知れませんが^^;)

      すみません、軽い返信になってしまいました。
      親御様、御大事にして下さい。

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