呉茱萸
呉茱萸

張仲景の古医書『傷寒論』の解説です。

今回の傷寒論は弁少陰病脈証并治 三百十一章。
この章では、少陰病で火邪が咽喉を傷つけた場合の証治について
詳しく述べております。


三百十一章

少陰病、二三日、咽痛者、可與甘草湯。
不差者、與桔梗湯。十。

甘草湯
甘草二兩
右一味、以水三升、煮取一升半、去滓、溫分七合、日二服。

桔梗湯
桔梗一兩  甘草二兩 
右二味、以水三升、煮取一升、去滓、分溫再服。

和訓:
少陰病、二三日、咽痛するものは、甘草湯を与うべし。
差えざれば、桔梗湯を与う。十。

甘草湯
甘草二両
右一味、水三升を以て、煮て一升半を取り、滓を去り、
七合を温服し、日に二服す。

桔梗湯
桔梗一両甘草二両
右二味、水三升を以て、
煮て一升を取り、滓を去り、温めて分かち再服す。


少陰病、二三日、咽痛者、可與甘草湯。不差者、與桔梗湯
少陰経は心を絡い、上がって咽喉を循る。
少陰病にかかり、2〜3日目に咽喉が痛むのは、
心火の熱が経に沿って上犯し、そのため赤く腫れるからである。
この場合は甘草一味で清火・利咽して痛みを緩めていけばよい。

火気の上犯が激しく、紅腫が比較的激しければ、
気味が苦・甘てんの桔梗湯を与え、開結・利咽すればよい。
原文の「可与」は治療法はこの一方に限っていない
という意味を含んでいる。

甘草湯

甘草
甘草

甘草
基原:
マメ科のウラルカンゾウ、
またはその他同属植物の根およびストロン。

甘草の甘平で、脾胃の正薬であり、
甘緩で緩急に働き、補中益気・潤肺祛痰・止咳・
清熱解毒・緩急止痛・調和薬性などの性能を持つ。
そのため、脾胃虚弱の中気不足に用いられる。
また、薬性を調和し百毒を解すので、
熱薬と用いると熱性を緩め
寒薬と用いると
寒性を緩めるなど薬性を緩和し
薬味を矯正することができる。

桔梗湯

桔梗
桔梗

桔梗
基原:
キキョウ科のキキョウの根

桔梗は肺経気分薬で、辛散苦泄し質軽で昇浮し、
肺気を開堤し胸膈を開宣し、咽喉を利し
祛痰止咳に働き
外邪犯肺による咳嗽・喀痰・
鼻塞・胸悶・咽喉腫癰吐膿・癰疽腫毒にも使用できる。
なお、肺と大腸は表裏をなし、
肺気の壅滞を宣通すれば
腸胃を疎通することができるので、
痢疾の腹痛・裏急後重に有効である。
さらに、肺気を宣通すれば水道が通暢し小便が通利するために、
小便癃閉に有効であり、
「病は下にあればこれを上に取る」の例である。
このほか、古代から桔梗は諸薬の舟楫といわれ、
昇浮の性質をもとに胸膈以上の病変に引経薬として使用される。
下陥の病に対しては昇浮に作用する。

甘草
甘草

甘草
基原:
マメ科のウラルカンゾウ、
またはその他同属植物の根およびストロン。

甘草の甘平で、脾胃の正薬であり、
甘緩で緩急に働き、補中益気・潤肺祛痰・止咳・
清熱解毒・緩急止痛・調和薬性などの性能を持つ。
そのため、脾胃虚弱の中気不足に用いられる。
また、薬性を調和し百毒を解すので、
熱薬と用いると熱性を緩め
寒薬と用いると
寒性を緩めるなど薬性を緩和し
薬味を矯正することができる。

提要:
少陰病で火邪が咽喉を傷つけた場合の証治について。

『現代語訳 宋本傷寒論』訳を使用:
少陰病に罹り、二三日経った頃に、咽喉部が痛む場合は、甘草湯で治療するとよい。
効果がない場合は、桔梗湯に改めて治療するとよい。処方を記載。第十法。

甘草湯
甘草二両
右の一味を、三升の水で、一升半になるまで煮て、
滓を除き、七合を温服し、日に二回服用する。

桔梗湯
桔梗一両 甘草二両
右の二味を、三升の水で、一升になるまで煮て、
滓を除き、二回に分けて温服する。


参考文献:
『現代語訳 宋本傷寒論』
『中国傷寒論解説』
『傷寒論を読もう』
『中医基本用語辞典』   東洋学術出版社
『傷寒論演習』
『傷寒論鍼灸配穴選注』 緑書房
『増補 傷寒論真髄』  績文堂
『中医臨床家のための中薬学』
『中医臨床家のための方剤学』 医歯薬出版株式会社

生薬イメージ画像:為沢 画

※画像や文献に関して、ご興味がおありの方は
是非参考文献を読んでみて下さい。

為沢

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