人参
人参

張仲景の古医書『傷寒論』の解説です。

今回の傷寒論は弁陽明病脈証并治 二百四十七章と二百四十八章。
二百四十七章では、脾約証の証治について。
二百四十八章では、発汗後、熱邪が胃経に内伝した場合の証治について
それぞれ詳しく述べております。


二百四十七章

趺陽脉浮而濇、浮則而胃氣強、濇則小便數、
浮濇相搏、大便則難、其脾爲約、麻子仁丸主之。方三十一。
麻子仁二升 芍薬半斤 枳實半斤、炙 大黄一斤、去皮
厚朴
一尺、炙、去皮 杏仁
一升、去皮尖、熬、別作脂
右六味、蜜和丸如桐子大、飲服十丸、日三服、漸如、以知爲度。

和訓:
趺陽の脉浮にして濇、浮なれば則ち胃気強く、濇なれば則ち小便数、
浮濇相搏てば、大便則ち難く、其の脾約を為し、麻子仁丸之を主る。方三十一

麻子仁二升  芍薬半斤  枳実半斤、炙る 大黄一斤、皮を去る
厚朴一尺、炙る、皮を去る  
杏仁一升、皮尖を去る、熬る、別けて脂を作る
右六味、蜜で和し梧桐子の大きさの如くし、十丸を飲服し、日に三服し、漸く加え、知るを以て度と為す。


趺陽脉浮而濇
「趺陽脉」は足陽明胃経の衝陽穴で拍動する脈で、この経穴で胃気を候う。
胃経と脾経は絡属・表裏関係にあり、その気息は通じている。
胃は穀を納めて腐熟し、脾は津を運んで運化する。
この両者の協調によって正気は身体を巡っていく。

浮濇であった場合、
その病は陽明の胃気が亢進し、
太陰にあたる脾の陰が弱まっていることを示唆する。
浮脈は陽気が盛んであることを、
濇脈は陰液が衰えていることを示すからである。

浮則而胃氣強、濇則小便數
胃の気が亢進し、脾陰が衰えると、
脾はその束縛を受け、胃のために津液を送ることができなくなる。
津液が胃に還元できなくなると
胃腸は潤いを失い、乾燥し、便は硬くなる。
また、胃気が亢進すると津液は燥熱に追われるように
下へ向かって滲出するので、尿の回数は逆に多くなる。

浮濇相搏、大便則難、其脾爲約、麻子仁丸主之
強く盛んである者は、弱く虚している者に制約を与える。
つまり脾の陰気は胃熱の制約を受けるため、脾約証を呈するようになる。

これは津が虚して硬便となったのであり、
燥尿が内で結して硬便となった場合とは全く異なる病理である。
治療は徐々に排便させる必要があり、
麻子仁丸で滋脾・潤燥、扶陰・抑揚して便通させる。

麻子仁丸

麻子仁
麻子仁

麻子仁
基原:
アサ科のアサの種子。

麻子仁は、甘平油潤で、
潤燥滑腸通便の効能をもち、津枯の腸燥便秘に適する。
なお、補虚滋養の効能もそなえているので、
老人・体虚・産婦の血虚津枯による腸燥便秘にもよい。

芍薬
芍薬

芍薬
基原:
ボタン科のシャクヤクのコルク皮を除去し
そのままあるいは湯通しして乾燥した根。

芍薬には<神農本草経>では
赤白の区別がされておらず
宋の<図経本草>で
はじめて金芍薬(白芍)と木芍薬(赤芍)が分けられた。
白芍は補益に働き赤芍は通瀉に働く。
白芍は苦酸・微寒で、酸で収斂し苦涼で泄熱し、
補血斂陰・柔肝止痛・平肝の効能を持ち諸痛に対する良薬である。
白芍は血虚の面色無華・頭暈目眩・
月経不調・痛経などには補血調経し、
肝鬱不舒による肝失柔和の胸脇疼痛・四肢拘孿
および肝脾不和による
腹中孿急作痛・瀉痢腹痛には柔肝止痛し、
肝陰不足・肝陽偏亢による頭暈目眩・肢体麻木には斂陰平肝し、
営陰不固の虚汗不止には斂陰止汗する。
利小便・通血痺にも働く。

枳実
枳実

枳實
ミカン科のダイダイ、イチャンレモン、カラタチなどの幼果。

枳実は苦寒で下降し、
気鋭力猛で破気消積・化痰除痞に働き、脾胃の気分薬である。
積滞内停・気機受阻による
痞満脹痛・便秘・瀉痢後重には、
気血痰食を問わず用いる。
薬力が猛烈であることから、
「衝墻倒壁の功あり」
「消痰癖、祛停水、破結胸、通便閉、
これにあらざれば能わざるなり」といわれている。

大黄
大黄

大黄
基原:
タテ科のダイオウ属植物、
およびそれらの種間雑種の根茎。
しばしば根も利用される。

大黄は苦寒沈降し気味ともに厚く、
「走きて守らず」で下焦に直達し、
胃腸の積滞を蕩滌するので、
陽明腑実の熱結便秘・壮熱神昏に対する要薬であり
攻積導滞し瀉熱通腸するため、
湿熱の瀉痢・裏急後重や
食積の瀉痢・大便不爽にも有効である。
このほか、瀉下泄熱により血分実熱を清し
清熱瀉火・凉血解毒に働くので
血熱吐衄・目赤咽腫・癰腫瘡毒などの上部実熱にも用い、
行瘀破積・活血通経の効能をもつために、
血瘀経閉・産後瘀阻・癥瘕積聚
跌打損傷にも適し、
湿熱を大便として排出し清化湿熱にも働くので、
湿熱内蘊の黄疸・水腫・結胸にも使用する。
外用すると清火消腫解毒の効果がある。

厚朴
厚朴

厚朴
厚朴は苦辛・温で、
苦で下気し辛で散結し温で燥湿し、
下気除満・燥湿化痰の効能を持ち、
有形の実満を下すとともに無形の湿満を散じる。
それゆえ、食積停留・気滞不通の胸腹脹満・大便秘結、
湿滞傷中の胸腹満悶・嘔吐瀉痢に適する。
また、燥湿化痰・下気降逆にも働き、
痰湿壅肺・肺気不降による喘咳にも有効である。
ここでの厚朴の働きは輸脾寛胸に作用する。

杏仁
杏仁

杏仁
基原:
バラ科のホンアンズ、アンズなどの種子。
苦味のあるものを苦杏仁、
苦味がなく甘味があるものを甜杏仁と称するが
植物形態的な違いはない。

杏仁は苦辛・温で、肺経気分に入り、
苦降・辛散により下気・止咳平喘するとともに
肺経の風寒痰湿を疏散するので、
外邪の侵襲や痰濁内阻による
肺気阻塞で
咳喘・痰多を呈するときに適する。
熱には清熱薬を、寒には温化薬を、
表邪には解表薬を、燥邪には潤燥薬を、
それぞれ加えることにより邪実に対処することができる。
また、質潤で油質を含み、
滑腸通便の効能をもつので、腸燥便秘にも有効である。

提要:
脾約証の証治について。

『現代語訳 宋本傷寒論』訳を使用:
趺陽の脉が浮で渋の場合、浮は胃気が強いことを、
渋は小便回数が多いことを反映するが
浮脈と数脈とが同時に出現する時、
大便はしばしば乾いて硬くなるがこれは脾の津液が胃熱によって
制約束縛されて陰陽が不調和となったからで、麻子仁丸で治療する。
処方を記載。第三十一法。
麻子仁二升 芍薬半斤 枳実半斤、炙る 大黄一斤、皮を除く
厚朴一尺、炙る、皮を除く 杏仁一升、皮尖を除く、焙る、別にして脂を作る
右の六味を、蜜とよく混和して梧桐子の大きさの丸薬にして、
十丸を服用し、日に三回服用するが、次第に増量し、治ったら止める。


二百四十八章

太陽病、三日發汗不解、
蒸蒸發熱者、屬胃也、調胃承氣湯主之。三十二。

和訓:
太陽病三日、発汗するも解せず、
蒸蒸として発熱するものは、胃に属するなり。
調胃承気湯之を主る。三十二。


太陽病、三日發汗不解、
蒸蒸發熱者、屬胃也、調胃承気湯主之

太陽病にかかって3日目、発汗法により汗出すれば表は解けていくが
発汗しても解けず、全身が大変熱く発熱するのは
患者の胃陽が盛んで、発汗後邪が内陥して燥気と合わさり、
内で勢いが盛んになり、それが外に現れたためである。

この場合は調胃承気湯で瀉熱・和胃し
その熱の勢いを止めておけば、燥結・満痛の変証を防ぐことができる。

調胃承気湯
こちらを参照→【古医書】傷寒論: 弁陽明病脈証并治 二百七章・二百八章

提要:
発汗後、熱邪が胃経に内伝した場合の証治について

『現代語訳 宋本傷寒論』訳を使用:
太陽病に罹って三日経ち、発汗させたが病は治癒せず、
蒸蒸と発熱している場合は、病邪はすでに胃府の中に伝入しており、
蒸蒸発熱の要点は「胃に属するなり」であり、
腸に邪が結して現れる潮熱とは異なると指摘している。


参考文献:
『現代語訳 宋本傷寒論』
『中国傷寒論解説』
『傷寒論を読もう』
『中医基本用語辞典』   東洋学術出版社
『傷寒論演習』
『傷寒論鍼灸配穴選注』 緑書房
『増補 傷寒論真髄』  績文堂
『中医臨床家のための中薬学』
『中医臨床家のための方剤学』 医歯薬出版株式会社

生薬イメージ画像:
『中医臨床家のための中薬学』 医歯薬出版株式会社

※画像や文献に関して、ご興味がおありの方は
是非参考文献を読んでみて下さい。

為沢


【当院公式サイト】
 https://www.1sshindo.com/

《住所》
 大阪本院:大阪府豊中市東寺内町5-38
 神戸三宮院:兵庫県神戸市 中央区八幡通4丁目1番15号

《電話》
 大阪本院:06-4861-0023
神戸三宮院:078-855-4012

《問い合わせ・ご相談》
 https://www.1sshindo.com/inquiry/


返事を書く

Please enter your comment!
Please enter your name here