芍薬
芍薬

張仲景の古医書『傷寒論』の解説です。

今回の傷寒論は弁陽明病脈証并治 二百三十八章・二百三十九章。
二百三十八章では、攻下したが まだ燥尿が残っている場合の証治について。
二百三十九章では、燥尿が内で結した場合について弁証している。


二百三十八章

陽明病、下之、心中懊憹而煩、胃中有燥屎者、可攻。
腹微滿、初頭鞕、後必溏、不可攻之。若有燥屎者、宜大承氣湯。二十五。

和訓:
陽明病、之を下し、心中懊憹して煩し、
胃中に燥屎あるものは、攻むべし。
腹微かに満し、初頭鞕く、後必ず溏するは、之を攻むべからず。
若し燥屎あるものは、大承気湯に宜し。二十五。


陽明病、下之、心中懊憹而煩、胃中有燥屎者、可攻
陽明病腑実証で下法を行ったあと、
胸中が重苦しくてイライラがおこる場合、
その他の症状により詳細に虚実を弁別しなければならない。
燥尿で潮熱、譫語、手足濈然汗出、腹脹満痛拒按などの症状があれば
実証であるから大承気湯で攻下すればよい。

腹微滿、初頭鞕、後必溏、不可攻之。若有燥屎者、宜大承氣湯
腹部がわずかに膨満感があり、便が初めは硬く秘結して出にくいが
後は軟便の場合、これは虚証であるから、
攻下すれば心中懊憹は虚煩となる。この場合は攻下してはいけない。

大承気湯

大黄
大黄

大黄
基原:タテ科のダイオウ属植物、
およびそれらの種間雑種の根茎。
しばしば根も利用される。

大黄は苦寒沈降し気味ともに厚く、
「走きて守らず」で下焦に直達し、
胃腸の積滞を蕩滌するので、
陽明腑実の熱結便秘・壮熱神昏に対する
要薬であり
攻積導滞し瀉熱通腸するため、
湿熱の瀉痢・裏急後重や食積の瀉痢・大便不爽にも有効である。
このほか、瀉下泄熱により血分実熱を清し
清熱瀉火・凉血解毒に働くので
血熱吐衄・目赤咽腫・癰腫瘡毒などの上部実熱にも用い、
行瘀破積・活血通経の効能をもつために、
血瘀経閉・産後瘀阻・癥瘕積聚
跌打損傷にも適し、
湿熱を大便として排出し清化湿熱にも働くので、
湿熱内蘊の黄疸・水腫・結胸にも使用する。
外用すると清火消腫解毒の効果がある。

厚朴
厚朴

厚朴
厚朴は苦辛・温で、
苦で下気し辛で散結し温で燥湿し、
下気除満・燥湿化痰の効能を持ち、
有形の実満を下すとともに無形の湿満を散じる。
それゆえ、食積停留・気滞不通の胸腹脹満・大便秘結、
湿滞傷中の胸腹満悶・嘔吐瀉痢に適する。
また、燥湿化痰・下気降逆にも働き、
痰湿壅肺・肺気不降による喘咳にも有効である。

枳実
枳実

枳実
基原:
ミカン科のダイダイ、イチャンレモン、カラタチなどの幼果。

枳実は苦寒で下降し、気鋭力猛で破気消積・
化痰除痞に働き、脾胃の気分薬である。
積滞内停・気機受阻による
痞満脹痛・便秘・瀉痢後重には、
気血痰食を問わず用いる。
薬力が猛烈であることから、
「衝墻倒壁の功あり」
「消痰癖、祛停水、破結胸、通便閉、これにあらざれば能わざるなり」
といわれている。

芒消
基原:天然の含水硫酸ナトリウム
Na2 SO4・10H2O
または風化消Na2SO4・2H2O。
なお古来の芒硝は結晶硫酸マグネシウム MgSO4・7H2Oである。

芒硝は鹹渋・寒で、
鹹で軟堅し苦で降下し寒で清熱し、
瀉熱通便・潤燥軟堅の効能をもち、
胃腸三焦の実熱を蕩滌し燥屎を除去する。
それゆえ、実熱積聚の大便燥結・譫語発狂などを呈する
陽明腑実証や、
陽明の熱が水飲と結した結胸に適する。
外用すると清熱消腫に働き、
癰腫瘡毒・目赤喉腫口瘡などに有効である。

提要:
攻下したが、まだ燥尿が残っている場合の証治について。

訳:
陽明病の患者を、下して治療したところ、
心中懊憹して煩躁するようになったなら、
腸内に燥屎ができているので、薬で攻下すればよい。
もし腹部膨満が軽度で、大便の出始めは硬いが、
その後は水様の下痢便であれば、攻下してはならない。
もし燥屎がある場合は、大承気湯で治療するとよい。第二十五法。


二百三十九章

病人不大便五六日、繞臍痛、煩躁、
發作有時者、此有燥屎、故使不大便也。

和訓:
病人大便せざること五六日、臍を繞りて痛み、煩躁し、
発作するに時あるものは、此れ燥屎あり、故に大便せざらしむるなり。


病人不大便五六日、繞臍痛、煩躁、
發作有時者、此有燥屎、故使不大便也
陽明病で大便が5〜6日なく、
その傾向もないのは内に燥尿があるためである。

燥尿というのは尿が腸にあり、熱蒸、乾燥して結し、
排便されることもなくあるものを指す。

ここでは、臍周が痛み、煩躁し、
陽明の気が定期的に旺気する証候として現れている。
これは熱邪がすでに胃及び腸中に
内陥、内結して燥尿となっているからであり、
さらに腑気が通じず、濁熱が鬱滞して煩躁し、
定期的にますます激しくなっている。

提要:
燥尿が内で結した場合について弁証している。

訳:
患者はもう五六日も大便が出ていない。
臍周囲の疼痛と煩躁があり、これらが持続的ではなく定期的に出現するのは、
腸内に燥屎ができて降りないからだ。
燥屎が降りないので大便が出ないのである。


参考文献:
『現代語訳 宋本傷寒論』
『中国傷寒論解説』
『傷寒論を読もう』
『中医基本用語辞典』   東洋学術出版社
『傷寒論演習』
『傷寒論鍼灸配穴選注』 緑書房
『増補 傷寒論真髄』  績文堂
『中医臨床家のための中薬学』
『中医臨床家のための方剤学』 医歯薬出版株式会社

生薬イメージ画像:
『中医臨床家のための中薬学』 医歯薬出版株式会社

※画像や文献に関して、ご興味がおありの方は
是非参考文献を読んでみて下さい。

為沢

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