こんにちは、新川です。

東京で活躍されている
落語家 柳家三三〔サンザ〕さんの
独演会が大阪で開かれるということでいってきました。
場所は、大阪市福島区、
久しぶりに都会の川べりを歩くのもいいものです。

さて、
会場に到着し、暫くすると演目が始まります。
今回は『冬』をテーマにした構成になっており、
出囃子は「雪」(♪ゆ〜きやこんこ あられやこんこ♪)でした。

一席目、二席目と見ていると、
芸の緻密さを様々な所作や間の取り方などから感じていましたが、
最後の演目になると目頭が熱くなることしばしば。
気がつけば、
まんまと三三さんの世界に引きずり込まれてしまっておりました。

演目
演目

今回は、五常政大論篇について綴って参ります。
本来ならここにまとめてある以上の内容がありますが、
なるべく分かりやすくするため、
一部を抜粋して表現させて頂いております。

【五常政大論篇 七十】

【原文】

黄帝問曰、太虚寥廓、五運廻薄、衰盛不同、損益相従。
願聞平気、何如而名、何如而紀也。
岐伯対曰、昭乎哉問也。木曰敷和、火曰升明、土曰備化、金曰審平、水曰静順。
帝曰、其不及奈何。
岐伯曰、木曰委和、火曰伏明、土曰卑監、金曰従革、水曰涸流。
帝曰、太過何謂。
岐伯曰、木曰発生、火曰赫曦、上曰敦阜、金曰堅成、水曰流衍。

帝曰、三気之紀、願聞其候。
岐伯曰、悉乎哉問也。
敷和之紀、木徳周行、陽舒陰布、五化宣平、其気端、其性随、其用曲直、其化生栄、
其類草木、其政発散、其候温和、其令風、其蔵肝、肝其畏清、其主目、
其穀麻、其果李、其実核、其応春、其虫毛、其畜犬、其色蒼、其養筋、
其病裏急支満、其味酸、其音角、其物中堅、其数八。

升明之紀、正陽而治、徳施周普、五化均衡。
其気高、其性速、其用燔灼、其化蕃茂、其類火、其政明曜、其候炎暑、
其令熱、其蔵心、心其畏寒、其主舌、其穀麦、其果杏、其実絡、其応夏、
其虫羽、其畜馬、其色赤、其養血、其病瞤瘛、其味苦、其音徴、其物脈、其数七。

備化之紀、気協天休、徳流四政、五化斉修。
其気平、其性順、其用高下、其化豐満、其類土、其政安静、其候溽蒸、
其令湿、其蔵脾、脾其畏風、其主口、其穀稷、其果棗、其実肉、其応長夏、
其虫倮、其畜牛、其色黄、其養肉、其病否、其味甘、其音宮、其物膚、其数五。

審平之紀、收而不争、殺而無犯、五化宣明。
其気潔、其性剛、其用散落、其化堅斂、其類金、其政勁粛、其候清切、
其令燥、其蔵肺、肺其畏熱、其主鼻、其穀稲、其果桃、其実殼、其応秋、
其虫介、其畜鶏、其色白、其養皮毛、其病咳、其味辛、其音商、其物外堅、其数九。

静順之紀、蔵而勿害、治而善下、五化咸整。
其気明、其性下、其用沃衍、其化凝堅、其類水、其政流演、其候凝粛、
其令寒、其蔵腎、腎其畏湿、其主二陰、其穀豆、其果栗、其実濡、其応冬、
其虫鱗、其畜彘、其色黒、其養骨髄、其病厥、其味鹹、其音羽、其物濡、其数六。

故生而勿殺、長而勿罰、化而勿制、收而勿害、蔵而勿抑、是謂平気。

委和之紀、是謂勝生。
生気不政、化気迺揚、長気自平、收令迺早、
涼雨時降、風雲并興、草木晩栄、蒼乾凋落、物秀而実、膚肉内充。
其気斂、其用聚、其動緛戻拘緩、其発驚駭、其蔵肝、其果棗李、其実核殼、其穀稷稲、其味酸辛、其色白蒼、
其畜犬鶏、其虫毛介、其主霧露淒滄、其声角商、其病揺動注恐、従金化也。
少角与判商同。上角与正角同、上商与正商同。其病支廃、癰腫瘡瘍、其甘虫、邪気傷肝也。
上宮与正宮同、蕭飋粛殺、則炎赫沸騰、眚於三。所謂復也。其主飛蠹蛆雉、乃為雷霆。

伏明之紀、是謂勝長。長気不宣、蔵気反布、收気自政、化令乃衡、寒清数挙、
暑令乃薄、承化物生、生而不長、成実而稚、遇化已老、陽気屈伏、蟄虫早蔵。
其気鬱、其用暴、其動彰伏変易、其発痛、其蔵心、其果栗桃、其実絡濡、其穀豆稻、
其味苦鹹、其色玄丹、其畜馬彘、其虫羽鱗、其主氷雪霜寒、其声徴羽、其病昏惑悲忘、従水化也。
少徴与少羽同。上商与正商同。邪傷心也。
凝慘凓冽、則暴雨霖霪、眚於九、其主驟注、雷霆震驚、沈霒淫雨。

卑監之紀、是謂減化。化気不令、生政独彰、長気整、雨乃愆、收気平、風寒并興、草木栄美、秀而不実、成而粃也。
其気散、其用静定、其動瘍涌分潰癰腫。其発濡滯、其蔵脾、其果李栗、其実濡核、
其穀豆麻、其味酸甘、其色蒼黄、其畜牛犬、其虫倮毛、其主飄怒振発、其声宮角、其病留満否塞、従木化也。
少宮与少角同。上宮与正宮同、上角与正角同。其病飧泄、邪傷脾也。振拉飄揚、
則蒼乾散落、其眚四維、其主敗折虎狼。清気乃用、生政乃辱。

従革之紀、是謂折收。收気乃後、生気乃揚、長化合徳、火政乃宣、庶類以蕃。其気揚、其用躁切、
其動鏗禁瞀厥、其発咳喘、其蔵肺、其果李杏、其実殼絡、其穀麻麦、其味苦辛、其色白丹、其畜鶏羊、其虫介羽、
其主明曜炎爍、其声商徴、其病嚔咳鼽衄、従火化也。
少商与少徴同。上商与正商同、上角与正角同。邪傷肺也。炎光赫烈、則氷雪霜雹、眚於七。
其主鱗伏彘鼠、歳気早至、乃生大寒。

涸流之紀、是謂反陽。蔵令不挙、化気乃昌、長気宣布、蟄虫不蔵、土潤水泉減、草木条茂、栄秀満盛。
其気滯、其用滲泄、其動堅止、其発燥槁、其蔵腎、其果棗杏、其実濡肉、其穀黍稷、其味甘鹹、其色黅玄。
其畜彘牛、其虫鱗倮、其主埃鬱昏翳、其声羽宮、其病痿厥堅下、従土化也。
少羽与少宮同。上宮与正宮同、其病癃閟、邪傷腎也。
埃昏驟雨、則振拉摧抜、眚於一、其主毛顕狐狢、変化不蔵。

故乗危而行、不速而至、暴虐無徳、災反及之、微者復微、甚者復甚、気之常也。

発生之紀、是謂啓[東攵]、土疏泄、蒼気達、陽和布化、陰気乃随、生気淳化、万物以栄。
其化生、其気美、其政散、其令条舒、其動掉眩巓疾、其徳鳴靡啓坼、其変振拉摧抜、
其穀麻稲、其畜鶏犬、其果李桃、其色青黄白、其味酸甘辛、其象春、其経足厥陰少陽、其蔵肝脾、
其虫毛介、其物中堅外堅、其病怒。
太角与上商同。上徴則其気逆、其病吐利。不務其徳、則收気復、秋気勁切。甚則粛殺、清気大至、草木凋零、邪乃傷肝。

赫曦之紀、是謂蕃茂。陰気内化、陽気外栄、炎暑施化、物得以昌。
其化長、其気高、其政動、其令鳴顕、其動炎灼妄擾、其徳暄暑鬱蒸、其変炎烈沸騰、其穀麦豆、其畜羊彘、
其果杏栗、其色赤白玄、其味苦辛鹹、其象夏、其経手少陰太陽、手厥陰少陽、其蔵心肺、其虫羽鱗、其物脈濡、其病笑瘧瘡瘍血流狂妄目赤。
上羽与正徴同、其收斉、其病痓。上徴而收気後也。暴烈其政、蔵気乃復、時見凝慘、甚則雨水霜雹切寒、邪傷心也。

敦阜之紀、是謂広化。厚徳清静、順長以盈、至陰内実、物化充成、煙埃朦鬱、見於厚土、
大雨時行、湿気乃用、燥政乃辟。其化円、其気豊、其政静、其令周備、其動濡積并稸、
其徳柔潤重淖、其変震驚飄驟崩潰、其穀稷麻、其畜牛犬、其果棗李、其色黅玄蒼、其味甘鹹酸、
其象長夏、其経足太陰陽明、其蔵脾腎、其虫倮毛、其物肌核、其病腹満、四支不挙。大風迅至、邪傷脾也。

堅成之紀、是謂收引。天気潔、地気明、陽気随陰治化、燥行其政、物以司成、收気繁布、化洽不終。
其化成、其気削、其政粛、其令鋭切、其動暴折瘍疰、其徳霧露蕭飋 、其変粛殺凋零。
其穀稲黍、其畜鶏馬、其果桃杏、其色白青丹、其味辛酸苦、其象秋、
其経手太陰陽明、其蔵肺肝、其虫介羽、其物殼絡、其病喘喝胸憑仰息。
上徴与正商同、其生斉、其病咳。政暴変、則名木不栄、柔脆焦首、長気斯救、大火流、炎爍且至、蔓将槁、邪傷肺也。

流衍之紀、是謂封蔵。寒司物化、天地厳凝、蔵政以布、長令不揚。
其化凛、其気堅、其政謐、其令流注、其動漂泄沃涌、其徳凝慘寒雰、其変氷雪霜雹、其穀豆稷、
其畜彘牛、其果栗棗、其色黒丹黅、其味鹹苦甘、其象冬、
其経足少陰太陽、其蔵腎心、其虫鱗倮、其物濡満、其病脹。
上羽而長気不化也。政過則化気大挙、而埃昏気交、大雨時降、邪傷腎也。

故曰、不恒其徳、則所勝来復、政恒其理、則所勝同化。此之謂也。

帝曰、天不足西北、左寒而右凉。地不満東南、右熱而左温。其故何也。
岐伯曰、陰陽之気、高下之理、太少之異也。東南方陽也。
陽者、其精降於下。故右熱而左温。西北方陰也。
陰者、其精奉於上。故左寒而右凉。是以地有高下、気有温凉、高者気寒、下者気熱。
故適寒涼者脹、之温熱者瘡。下之則脹已、汗之則瘡已。
此腠理開閉之常、太少之異耳。

帝曰、其於寿夭何如。
岐伯曰、陰精所奉、其人寿。陽精所降、其人夭。
帝曰、善。其病也、治之奈何。
岐伯曰、西北之気、散而寒之。東南之気、收而温之。所謂同病異治也。
故曰、気寒気涼、治以寒涼、行水漬之。気温気熱、治以温熱、強其内守。
必同其気、可使平也。仮者反之。
帝曰、善。
一州之気、生化寿夭不同、其故何也。
岐伯曰、高下之理、地勢使然也。崇高、則陰気治之、汚下、則陽気治之。
陽勝者先天、陰勝者後天、此地理之常、生化之道也。
帝曰、其有寿夭乎。
岐伯曰、高者其気寿、下者其気夭、地之小大異也。小者小異、大者大異。故治病者、
必明天道地理、陰陽更勝、気之先後、人之寿夭、生化之期、乃可以知人之形気矣。帝曰善。

其歳有不病而蔵気不応不用者、何也。
岐伯曰、天気制之、気有所従也。
帝曰、願卒聞之。
岐伯曰、少陽司天、火気下臨、肺気上従、白起金用、草木眚、火見燔焫、革金且耗、大暑以行、
咳嚔鼽衄、鼻窒口瘍、寒熱胕腫、風行於地、塵沙飛揚、心痛、胃脘痛、厥逆、鬲不通。其主暴速。

陽明司天、燥気下臨、肝気上従、蒼起木用而立、土乃眚。
淒滄数至、木伐草萎、脇痛目赤、掉振鼓慄、筋痿、不能久立。
暴熱至、土乃暑、陽気鬱発、小便変、寒熱如瘧、甚則心痛。火行於槁、流水不氷、蟄虫乃見。

太陽司天、寒気下臨、心気上従、而火且明、丹起、金乃眚。寒清時挙、勝則水氷、
火気高明、心熱煩、嗌乾、善渇、鼽嚔、喜悲、数欠。
熱気妄行、寒乃復、霜不時降、善忘、甚則心痛。土乃潤、水豐衍。
寒客至、沈陰化、湿気変物、水飲内稸、中満不食。皮[疒君巾]肉苛、筋脈不利。甚則胕腫、身後癰。

厥陰司天、風気下臨、脾気上従、而土且隆、黄起、水乃眚。
土用革、体重、肌肉萎、食減口爽、風行太虚、雲物揺動、目転耳鳴。
火縱其暴、地乃暑、大熱消爍、赤沃下、蟄虫数見、流水不氷。其発機速。

少陰司天、熱気下臨、肺気上従、白起金用、草木眚、喘嘔寒熱嚔鼽衄鼻窒。
大暑流行、甚則瘡瘍燔灼、金爍石流。地乃燥清、淒滄数至、脇痛、善太息。粛殺行、草木変。

太陰司天、湿気下臨、腎気上従、黒起水変、埃冒雲雨。
胸中不利、陰痿、気大衰、而不起不用、当其時、反腰脽痛、動転不便也、厥逆。
地乃蔵陰、大寒且至、蟄虫早附、心下否痛、地裂氷堅、少腹痛、時害於食。
乗金則止。水増、味乃鹹、行水減也。

帝曰、歳有胎孕不育、治之不全、何気使然。
岐伯曰、六気五類、有相勝制也。同者盛之、異者衰之。此天地之道、生化之常也。
故厥陰司天、毛虫静、羽虫育、介虫不成。在泉、毛虫育、倮虫耗、羽虫不育。
少陰司天、羽虫静、介虫育、毛虫不成。在泉、羽虫育、介虫耗不育。
太陰司天、倮虫静、鱗虫育、羽虫不成。在泉、倮虫育、鱗虫不成。
少陽司天、羽虫静、毛虫育、倮虫不成。在泉、羽虫育、介虫耗、毛虫不育。
陽明司天、介虫静、羽虫育、介虫不成。在泉、介虫育、毛虫耗、羽虫不成。
太陽司天、鱗虫静、倮虫育。在泉、鱗虫耗、倮虫不育。

諸乗所不成之運、則甚也。
故気主有所制、歳立有所生、地気制已勝、天気制勝已、天制色、地制形、五類衰盛、各随其気之所宜也。
故有胎孕不育、治之不全、此気之常也。
所謂中根也。根於外者亦五。故生化之別、有五気五味五色五類五宜也。
帝曰、何謂也。
岐伯曰、根於中者、命曰神機。神去則機息。
根於外者、命曰気立。気止則化絶。故各有制、各有勝、各有生、各有成。
故曰、不知年之所加、気之同異、不足以言生化。此之謂也。

帝曰。気始而生化、気散而有形、気布而蕃育、気終而象変、其致一也。
然而五味所資、生化有薄厚、成熟有少多、終始不同、其故何也。
岐伯曰、地気制之也。非天不生、地不長也。
帝曰、願聞其道。
岐伯曰、寒熱燥湿、不同其化也。故少陽在泉、寒毒不生。其味辛。其治苦酸、其穀蒼丹。
陽明在泉、湿毒不生。其味酸、其気湿。其治辛苦甘、其穀丹素。
太陽在泉、熱毒不生。其味苦。其治淡鹹、其穀黅秬。
厥陰在泉、清毒不生、其味甘。其治酸苦、其穀蒼赤。其気専、其味正。
少陰在泉、寒毒不生。其味辛。其治辛苦甘、其穀白丹。
太陰在泉、燥毒不生。其味鹹、其気熱。其治甘鹹、其穀黅秬。化淳則鹹守、気専則辛化而倶治。

故曰、補上下者、従之、治上下者、逆之。
以所在寒熱盛衰而調之。
故曰、上取下取、内取外取、以求其過、能毒者、以厚薬、不勝毒者、以薄薬。此之謂也。
気反者、病在上、取之下、病在下、取之上。病在中、傍取之。
治熱以寒、温而行之、治寒以熱、涼而行之。治温以清、冷而行之、治清以温、熱而行之。
故消之、削之、吐之、下之、補之、写之。久新同法。

帝曰、病在中、而不実不堅、且聚且散、奈何。
岐伯曰、悉乎哉問也。無積者、求其蔵、虚則補之、薬以袪之、食以随之、行水漬之、和其中外、可使畢已。
帝曰、有毒無毒、服有約乎。
岐伯曰、病有久新、方有大小。有毒無毒、固宜常制矣。
大毒治病、十去其六。常毒治病、十去其七、小毒治病、十去其八、無毒治病、十去其九。
穀肉果菜、食養尽之。無使過之傷其正也。不尽、行復如法。必先歳気、無伐天和。
無盛盛、無虚虚。而遺人夭殃。無致邪、無失正。絶人長命。

帝曰、其久病者、有気従不康、病去而瘠、奈何。
岐伯曰、昭乎哉聖人之問也。化不可代、時不可違。夫経絡以通、血気以従、復其不足、与衆斉同、
養之和之、静以待時、謹守其気、無使傾移、其形乃彰、生気以長。
命曰聖王。故大要曰、無代化、無違時。必養必和、待其来復。此之謂也。
帝曰、善。


平気
黄帝が問う。
「宇宙は奥深く広大で果てしなく、五運はやむことなく循環し続けている。
それらの中には盛んなものがあり衰えたものがあって様々であり、
それに従って、気も多くなったり少なくなったりするものだ。
では、五運のうちで『平気』は、どのように名づけられているのか、
その気はどのような特徴によってとらえられるのか、お聞かせ願いたい。」
岐伯が答える。
「意義深いご質問です。
いわゆる平気についていえば、

・木の気=『敷和
→温和な気を敷き広げ、万物を茂らせる。

・火の気=『昇明
→明るく物を生育させる気が現れて、万物を繁茂させる。

・土の気=『備化
→万物を化育する気を具備して、万物にその形体を完備させる。

・金の気=『審平
→静かで穏やかな気を発して、万物を結実させる。

・水の気=『静順
静寂で柔順な気を現し、万物を潜伏させる。」

万物を生み出してしかも殺傷せず、万物を生長させてしかも罰を加えず、
育んでしかも制止せず、収斂してしかも害(そこな)わず、
伏蔵させてしかも抑えつけない場合をば、平気と呼ぶのです。
『黄帝内経素問 下巻—現代語訳』より


不及
黄帝がいう。
「もし不及であればどうなのか。」
岐伯がいう。
「もし不及であれば、

・木の気=『委和
→温和な気がなく、万物は萎縮して振るわない。

・火の気=『伏明
→温暖な気が少なく、万物はほの暗くて光らない。

・土の気=『卑監
→化育の気がなく、万物は萎えて力がなくなる。

金の気=『従革
→堅固にする気がなく、万物はたるんで弾力がなくなる。

・水の気=『涸流
→収蔵させる気がなく、万物はひからびてしまう。」

「運気が不及の年には、
運気が本来打ち勝つ気と打ち勝ち得ない気とが、
あたかも招かれざる客が勝手にやってくるように、
運気の衰弱につけ込んで政令を行使し、
少しの恩徳もなく暴虐を働くので、
その結果、反って侵入した気それ自身が損害を被ることになりますが、
それは、
運気の子に当たる気が到来して報復するためなのです。
一般に暴虐を働く程度が軽微であれば、被る報復も軽微であり、
激しい場合には、被る報復も激しくなります。
このように、
侵入して打ち勝てば必ず報復されるということは、
運気の中に貫かれた不変の法則なのです。

『黄帝内経素問 下巻—現代語訳』より


太過
黄帝がいう。
「太過の場合はどうか。」
岐伯がいう。
「もし太過であれば、
・木の気=『発生
→時令より早く温和な気を敷き広げ、
万物を早めに発育させる。

・火の気=『赫曦
強烈な火の気を敷き広げ、万物を激しく燃え上がらせ、
落ち着きなくさせる。

・土の気=『敦阜
→濃く堅い気を現し、
逆に万物が形体を作り上げられないようにする。

・金の気=『堅成
→硬くこわばった気を現し、万物を硬直化させる。

・水の気=『流衍
→満ち溢れる気を現し、万物が漂って落ち着き場所がないようにさせる。」

「運気が太過の年に、
その気が行使する力が、正常な働きを失い、
妄りに暴虐を加え、その気に打ち負かされる関係にある気を侮るならば、
その結果として、
必ずその気に打ち勝つ関係にある気が到来して報復する。
もし政令の行使が穏やかであり、
正常な法則にかなっていれば、
その気に打ち勝つ関係にある気も一緒になって
生成化育の働きを行う」
『黄帝内経素問 下巻—現代語訳』より

 


【従治と逆治】
司天、在泉の気の不足のゆえに、
人体に気の不足を引き起こした場合には、気を補充すべきであり、
補充するには、不足する気と同じ性質の気によって補充し、
他方、気の過多のゆえに引き起こされた病変に対しては、
政治して、気の均衡を回復させるが、
その場合には、逆治法、つまり、過多である気とは反対の性質の薬物で
攻める治療薬を用いればよいといわれています。

それぞれ、
司天、在泉の気の寒熱の性質や盛衰の情況に依據して、調和させて治すのです。
だから、病が上部に在るのか、下部に在るのか
内部に在るのか、外部に在るのかをまず診察して、
病の原因を捜し求めなければならず、
もし身体が頑強で、
毒性をもつ薬物の服用に耐えられるならば、
味性の濃厚な薬物を投与し、
もし身体が虚弱で、毒性をもつ薬物に耐えられなければ、
味性の薄い穏やかな薬物を投与するといわれてますが、
この意味です。
もし、病気が病理に反する症候をもつ場合には、
反治の療法を施すべきであり、
たとえば、病が上部に在れば下部を政治し、
病が下部に在れば上部を政治し、
病が中央に在れば周辺部を政治します。
また発熱性の病を政治するために寒性の薬物を投与する場合、
温めて服用する方法を取り、
悪寒を伴う病を政治するために熱性の薬物を用いる場合、
凉(さ)まして服用する方法を取り、
温性の病を政治するために凉性の薬物を用いる場合、
冷やして服用し、逆に、凉性の病を政治するために温性の薬物を用いる場合、
熱くして服用します。
また、このゆえに、病症が病理と相反しない場合には、
消去によって滞りを解消し、削法によって鬱結を攻め、
吐法によって上部の充満した気を下し、
また気が虚になれば補充し、実になれば瀉下します。
長期化した病気も発病直後の病気も、
ともにこの原則に準據してかまいません。」
『黄帝内経素問 下巻—現代語訳』より

【治療方】
黄帝がいう。
「もし病気が体の内部にあって、邪気が実(充実して旺盛)でもなく、
堅固でもなく、時によって一箇所に集中して症状が現れ、
また時によって分散して症状が現れなくなったりする場合は、
どうしたらよいのか。」
岐伯がいう。
「詳細なご質問です。
この種の病気は、
もし邪気の鬱積がなければ、内蔵を観察すべきであり、
もし内蔵の気が虚弱であれば、
気を補充する方法を用います。
もしそれとともに外からの邪気があれば、
まず薬でその邪気を追い払い、
その後、飲食によって気を補い、
あるいは、水分で浸たす方法を用いて肌目を疎通させ、
内外を調和させます。
このようにすれば治癒することができます。」
『黄帝内経素問 下巻—現代語訳』より

【薬の服用】
黄帝がいう。
「有毒の薬物と無毒の薬物には、
服用方法に一定の規則があるのか。」
岐伯がいう。
「病気には長期化したものと発病直後のものとの区別があり、
処方には大きなものと小さなものとの区別があるので、
有毒の薬と無毒の薬との服用方法にも当然一定の規則があります。
およそ、強度の毒性をもつ薬は病の十分の六を除去し、
それ以上服用してはいけません。
平常の毒性をもつ薬は、病の十分の七を除去し、
それ以上服用してはいけません。
弱度の毒性をもつ薬は、病の十分の八を除去し、
それ以上服用してはいけません。
毒性のない薬でも、病の十分の九を除去したら、
それ以上服用する必要はありません。
それ以後は、
穀物・肉類・果実・蔬采などの飲食によって、
気を調え養って、正常な気を回復させ、
邪気をすっかり取り除いてゆきます。
過度に薬を服用して、正常な気を損なってはいけません。
もし、それでもまだ邪気が尽されない場合には、
上述の服用法をくりかえします。
まず最初に、
歳気が太過であるか不及であるかを理解しておけば、
薬物を誤って服用して正常の調和した気を損なうことは避けられます。

実の病症に対して、補法を用いて、気をより一層実にしたり、
また、虚の病症に対して、下法を用いて、
気を一層虚にしてはいけません。
盛んな気をより盛んにしたり、
虚弱なる気をより虚弱にする誤りを犯せば、
人に命を失わせることになります。
誤って気を補い、邪気をより旺盛にしたり、
誤って気を瀉下して、正常な気をなくしたりしてはいけません。
人を殺すことになるのです。」
『黄帝内経素問 下巻—現代語訳』より

【病後の保養】
黄帝がいう。
「長期化した病気の場合、
正常な気がすでに順調に通じているのに、
まだ健康を回復することができなかったり、
また、病気がすでに去ったのに、
体が依然として衰弱したままであったりするのは、
どうしたわけか。」
岐伯がいう。
「まことに詳細なご質問でございます。
そもそも天地の気の生化の作用は、
人間の力で取って代わることはできぬものであり、
春夏秋冬のめぐりは、
背くことのできぬものであることをわきまえねばなりません。
そのゆえに人間は天地に順応し、経絡を疎通させ、
血気を順調にし、血気の不足を回復させて、
平常の人々と同じようにし、
充分に補い養い、調和させ、忍耐強く時のめぐりを待ち、
慎重に平常な気の働きを見守り、
それを消耗させないようにすれば、
その人の身体は自然に充実し、生気がみなぎってきます。
これこそ、聖王の治療の原則なのです。
だから『大要』にも、
人の力で天地の気の生化に取って代わろうとしてはならず、
四時の運行に逆らってはならない。
うまく気を養い調和させ、心を落ち着けて正気の回復を待て

といわれていますが、この意味に外なりません。」
黄帝がいう。
「よろしい。」
『黄帝内経素問 下巻—現代語訳』より


参考文献:
『黄帝内経素問 上巻—現代語訳』
『黄帝内経素問 中巻—現代語訳』
『黄帝内経素問 下巻—現代語訳』
『中医基本用語辞典』 東洋学術出版
『臓腑経絡学』 アルテミシア
『鍼灸医学事典』 医道の日本社
『内経気象学入門』 緑書房

※画像や文献に関して、ご興味がおありの方は
是非参考文献を読んでみて下さい。

新川

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