こんにちは、大原です。前回の続きです。
前回の記事 → 鍼灸甲乙経を読む その45

前回の内容は、
血絡と呼ばれる場所を刺した様々な場合についての質問で、
その回答が今回の内容になります。



<原文>


「脉氣盛而血虚者、刺之則脱氣、脱氣則仆。
血氣倶盛而陰氣多者、其血滑、刺之則射。
陽氣畜積、久留不寫者、其血黒以濁、故不能射。
新飮而液滲于絡、而未合和于血、故血出而汁別焉。
其不新飮者、身中有水、久則爲腫。
陰氣積于陽、其氣因于絡、故刺之血未出而氣先行、故腫。
陰陽之氣、其新相得而未和合、因而寫之、則陰陽倶脱、表裏相離、故脱色蒼蒼然也。
刺之血出多色不變而煩悗者、刺絡而虚經、
虚經之屬於陰者、陰気脱、故煩悶。
陰陽相得而合爲痺者、此爲内溢於經而外注于絡、如是者、陰陽倶有餘、雖多出血弗能虚也。」

<読み>
曰く
「脉氣盛んにして血虚なる者、
これを刺すときは則ち気を脱す、気を脱するときは則ちたおる。

血氣ともに盛んにして陰氣多き者は、その血滑なり、これを刺すときは則ち射す。
陽氣畜積し、久しく留して寫さざる者は、
その血黒くしてもって濁る、ゆえに射することあたわず。

新飲して液絡に滲していまだ血に合和せざるや、ゆえに血出でて汁わかるるなり。
その新飮せざる者、身中に水あること久しきときは則ち腫となす。
陰氣陽に積し、その氣絡による、
ゆえにこれを刺せば血いまだ出でずして氣ず行く、ゆえに腫するなり。

陰陽の氣、その新相得ていまだ和合せず、
よってこれを寫すときは則ち陰陽ともに脱し、
表裏相離る、ゆえに色を脱し、蒼蒼然なり。

これを刺して、血出ずること多く色変ぜずして煩悗する者は、
絡を刺して経虚す、

虚経の陰に属する者、陰気を脱するがゆえに煩悶す。
陰陽相得て合して痺をなす者は、
これうち経に溢れてそと絡に注ぐ、
是のごとき者は、陰陽ともに有餘にして、
多く出血するといえども虚することあたわずなり。」

<意味>
脈気が甚だ盛んであって血の虚している病人は
之を刺すと気が脱してしまいます。
気が脱しますと病人は昏仆こんふして倒れます。
血気が充実し盛んであって、
特に脈中の陰気が比較的多い病人は、その結構は滑利であります。
したがって之を刺すと血は射出します。
これに反し陽気が蓄積されて久しく留まっていて、寫したことのない患者は、
その血の色は黒くてまたドロドロに濁っています。
それゆえに刺しても射出することはありません。
飲んだばかりで液は絡にしみこんではいますが、血と合体しておらず和合しておりません。
そのようなときには一般に血は出ても
一部の汁が別れるものです。
飲んだばかりでない者は体中に見ずがあり、
それが久しくなると腫ができます。
陰気が陽中に積聚し、
そのような状態においては一般にこれを刺しますと
血のまだ出ないうちに気がまず行く為にそこがふくれます。
陰陽の気が今出会ったばかりでまだ和合しておらず、
そのような場合にこれを刺せば、陰陽ともに脱し、
表裏が分離いたします。
それゆえに顔の色が抜けて真っ青になります。
またこれを刺して血をたくさん出してもその顔色は変わらないが、
いらいらしてもだえるものは、絡を刺して経が虚します。
虚経の陰に属する者は陰を脱するがゆえに煩悶するのであります。
また、陰と陽とがいっしょになって痹をなす者は、
これは内には経に溢れ外は絡に注し、
このような者は陰陽ともに有余であって、
多く出血しても虚することはないのであります。

続きます。

新幹線から夕焼けを撮りました。静岡県あたりにて。
新幹線から夕焼けを撮りました。静岡県あたりにて。

参考文献
『黄帝内経霊枢』 東洋学術出版社
『鍼灸医学大系 黄帝内経素問』
『鍼灸医学大系 黄帝内経霊枢』雄渾社
『完訳 鍼灸甲乙経(上巻)』三和書籍
『基礎中医学』 燎原

興味のおありの方は、ぜひ参考文献もお読みください。

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