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こんにちは、大原です。
前回(鍼灸甲乙経を読む その25)の続きです。
今回で、第7「十二経水と十二経」は最後になります。

<原文>

「夫經脉之大小、血之多少、膚之厚薄、肉之堅脆及膕之大小、可以爲度量乎?」

「其可爲度量者、取其中度也、不甚脱肉而血氣不衰也。
若夫度之人痟、痩而形肉脱者、烏可以度量刺乎。
審切循捫按、視其寒温盛衰而調之、是謂因適而爲之眞也。」

<読み>
曰く
「それ経脈の大小、血の多少、膚の厚薄、肉の堅脆及び膕の大小は、
もって度量をなすべきか?」
曰く
「その度量を為すべき者は、その中度を取るなり。
脱肉すること甚しからずして血氣衰えざるなり。
もしそれこれを人の痩して形肉脱するをはかって、
いずくんぞ度量をもって刺すべけんや。
つまびらかに切し循捫し按じて、その寒温盛衰を視てこれを調う。
これ適に因ってこれが眞を為すと謂うなり。」

<意味>
「経脈の大小、血の多少、皮膚の厚薄、肌肉の堅脆、肉付きの大小などは
すべて度量(はかること)すべきものであろうか?」

「その度量を為すべきは
中程度の人を標準として刺鍼施灸をするもので、つまり
脱肉することも甚だしくなく、
血気もまだ衰えていないものを標準とするものであります。

もしも人のやせ衰えて計肉ともに脱するものをはかり、
それを標準として刺すことなどできるものではありません。
そのような患者に対しては
患者の身に吾が手を当て、経脈にしたがってしっかりとさぐり、
あるいは寒温盛衰の状態を見てそれらを調えなければなりません。
それがすなわち患者さんの現況に即応しての、
欠け目のない正しい治療法ともうすべきものであります。

<語句解説など>
循捫:
一定のルートにしたがって(
手探りで目的物を探り求める()ことを言う。

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さて、最後の一文が
「是謂因適而爲之也。」となっておりますが、
「是謂因適而爲之也。」である、とされているものもあります。

なぜこのように二つの説があるかというと、
今でこそ便利な印刷技術やスキャナーがありますが、
黄帝内経の編纂された紀元前にはそのような技術がなく、
黄帝内経が今の時代に伝わるまで
手書きで写されてきた歴史があり、
似た漢字を書き写し間違えた可能性があるのは否めません。
この「」と「」も文字の形が似ているので、
途中で間違って書き写したのではないかといわれ、
二つの説があるということのようです。

上の文章の中の「」には
「欠け目のない」という意味があるそうで
文脈から
これこそが欠け目のない、しっかりとした正しい治療である
という意味になります。
そして下の「」の場合、これは
目を直線上にまっすぐに向けること」という意味だそうで、
文脈から
患者さんをしっかりと見る、正しい治療法である」となると思います。

・・前者の方が自然な感じもしますが、
どちらが正しいか微妙なところですね。

夕方の電車の駅のホームです。帰宅ラッシュの前の静けさです。
夕方の電車の駅のホームです。帰宅ラッシュの前の、一時の静けさがあります。

参考文献
『鍼灸医学大系 黄帝内経素問』
『鍼灸医学大系 黄帝内経霊枢』雄渾社
『完訳 鍼灸甲乙経(上巻)』三和書籍

興味のおありの方は、ぜひ参考文献もお読みください。

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