RESEAU FERRE DE FRANCE from W & CIE on Vimeo.

こんにちは、為沢です。
こちらの動画はフランスの鉄道会社のCM
(作:Thomas Stern、Ivan Pierens)なのですが、
だまし絵を見ているようで大変面白い動画です。
息抜きにどうぞ。

では、今回の傷寒論は弁太陽病脈証并治(中)四十章と四十一章。
四十章では表寒証に水飲を兼ねる場合の証治について。
四十一章では、小青龍湯を服用し、
病が次第に癒えようとしている様子について述べております。


弁太陽病脈証并治(中)四十章

傷寒表不解、心下有水氣、乾嘔、發熱而欬、
或渇、或利、或噎、或小便不利、少腹満、或喘者小青龍湯主之。方十。
麻黄去節 芍藥 細辛 乾薑
甘草桂枝各三両、去皮
五味子半升 半夏半升、洗
右八味、以水一斗、先煮麻黄、
減二升、去上沫、内諸藥、煮取三升、去滓、溫服一升。
若渇、去半夏、加栝楼根三兩。
若微利、去麻黄、加蕘花、如一鶏子、熬令赤色。
若噎者、 去麻黄、加附子一枚、炮。
若小便不利、少腹満者、去麻黄、加茯苓四両。
若喘、去麻黄、加杏仁半升、去皮尖。
且蕘花不治利、麻黄主喘、今此語反之、疑非仲景意。

臣億等謹按、小青龍湯、大要治水。又按本草蕘花下十二水、若水去、利則止也。
又按千金、形腫者応内麻黄、乃内杏仁者、以麻黄發其陽故也、以此証之、豈非仲景意也。

 

和訓:
傷寒表解せず、心下に水気ありて、
乾嘔、発熱して欬し、或いは渇し、
或いは利し、或いは噎し、或いは小便利せず、
少腹満し、或いは喘するものは、小青竜湯之を主る。方十。
麻黄節を去る 芍薬 細辛 乾薑
甘草炙る 桂枝各三両、皮を去る 五味子半升 半夏半升、洗う
右八味、水一升を以て、先ず麻黄を煮て、二升を減じ、上沫を去り、
諸薬を内れ、煮て三升を取り、滓を去り、一升を温服す。
若し渇せば、半夏を去り、栝楼根三兩を加う。
若し微かに利せば、麻黄を去り、蕘花、
一鶏子の如きを、熬りて赤色ならしめて加う。
若し噎するものは、麻黄を去り、附子一枚を炮じて加う。
若し小便利せず、少腹満するものは、麻黄を去り、茯苓四両を加う。
若し喘せば、麻黄を去り、杏仁半升を、皮尖を去りて加う。
且に蕘花は利を治せず、麻黄は喘を主り、
今此の語之を反し、疑うらくは仲景の意にあらざらん。

臣億ら謹んで按ずるに、小青龍湯、大要は治水。
又た『本草』に按れば、蕘花は十二水を下し、若し水去らば、利則ち止むなり。
又た『千金』に按れば、形腫るるものは、応に麻黄を内れるべきに、
乃ち杏仁を内れるは、麻黄を以て其の陽を発するが故なり。
此れを以て之を証し、豈に仲景の意にあらざらんや。


傷寒表不解
太陽病で寒邪が表を覆って解表しないため、
悪寒・発熱・無汗・身疼痛の表証が存在する。

心下有水氣
胃脘部(心窩部)に水飲の邪がある。
もとから水飲が内停して胃を犯している状態。

乾嘔、發熱而欬
水飲が停滞しているため、
胃気の正常な下降作用を妨げ上逆して嘔気を生じる。
さらに上では肺に影響し、
肺気の宣発と粛降が失調して咳喘が起こる。

或渇、或利、或噎、或小便不利、少腹満、或喘者
水飲のため気が津液に化さないと口渇が起こる。
もし水飲が腸にいけば下痢となる。
水飲が上焦に内停して鬱滞すると気機の流注が阻まれ咽がつまる(噎)
膀胱にいき気化作用が失調すれば
小便不利となって下腹部の腹満が起こる。

小青龍湯主之
上記のような傷寒に属して同時に
水飲を兼ねた外寒内飲証を小青龍湯は治療する。

方義

麻黄
麻黄

麻黄
基原:
マオウ科のシナマオウをはじめとする
同属植物の木質化していない地上茎。
去節麻黄は節を除去したもの。
辛温・微苦で肺・膀胱に入り、
辛散・苦降・温通し、肺気を開宣し腠理を開き
毛窮を透して風寒を発散するので、
風寒外束による表実無汗や肺気壅渇の喘咳の常用薬である。
また、肺気を宣発して水道を通調するとともに、
膀胱を温化して利水するので、
水腫に表証を兼ねるときにも適する。
辛散温通の効能により、
散風透疹・温経散寒にも使用できる。
ここでは、麻黄を加えることで発汗を強くする。

芍薬
芍薬

芍藥
芍薬には<神農本草経>では
赤白の区別がされておらず、宋の<図経本草>ではじめて
金芍薬(白芍)と木芍薬(赤芍)が分けられた。
白芍は補益に働き赤芍は通瀉に働く。
基原:ボタン科のシャクヤクのコルク皮を除去し、
そのまま湯通しして乾燥させた根。
白芍は苦酸・微寒で、酸で収斂し苦涼で泄熱し、
補血斂陰・柔肝止痛・平肝の効能を持ち諸痛に対する良薬である。
桂枝と白芍を等量ずつ合わせると、
肌表の風邪が発散し、営衛を調和させることができる。

細辛
細辛

細辛
基原:
ウマノスズクサ科のケイリンサイシン、
またはウスバサイシンの根をつけた全草(中国産)。
日本薬局方では根および根茎を規定している。

細辛は辛温の性烈であり、
外は風寒を散じ、内は寒飲を化し、上は頭風を疏し、
下は腎気に通じ、開竅・止痛にも働く。
外感風寒の頭痛・身痛・鼻塞および
寒飲内停の咳嗽気喘・痰多に対する主薬であり、
とくに外感風寒に寒飲を兼ねる場合に適し、
風寒湿痺の関節拘攣・疼痛にも用いる。
また、辛香走竄で、粉末を吹鼻すると
通竅取嚔の効果が得られるので、
開関醒神の救急に使用される。

乾薑
乾薑

乾薑
基原:
ショウガ科のショウガの根茎を乾燥したもの。
古くは皮を去り水でさらした後に晒乾した。
乾姜は生姜を乾燥させてもので
辛散の性質が弱まって辛熱燥烈の性質が増強され、
無毒であり、温中散寒の主薬であるとともに、
回陽通脈・燥湿消痰の効能をもつ。
陰寒内盛・陽衰欲脱の肢冷脈微、
脾胃虚寒の食少不運・脘腹冷痛・吐瀉冷痢、
肺寒痰飲の喘咳、風寒湿痺の肢節冷痛などに適し、
乾姜は主に脾胃に入り温中寒散する。

甘草
甘草

甘草
基原:マメ科のウラルカンゾウ、
またはその他同属植物の根およびストロン。
甘草の甘平で、脾胃の正薬であり、
甘緩で緩急に働き、補中益気・潤肺祛痰・止咳・
清熱解毒・緩急止痛・調和薬性などの性能を持つ。
そのため、脾胃虚弱の中気不足に用いられる。
また、薬性を調和し百毒を解すので、
熱薬と用いると熱性を緩め
寒薬と用いると寒性を緩めるなど
薬性を緩和し薬味を矯正することができる。
ここでは胃の気を和し虚を扶け、
さらに芍薬でもって陰と調和し、
正気を助け邪気を取り除き内と外の調和をとる働きがある。

桂枝
桂枝

桂枝
基原:クスノキ科のケイの若枝または樹皮。
桂枝は辛甘・温で、
主として肺・心・膀胱経に入り、
兼ねて脾・肝・腎の諸経に入り、
辛散温通して気血を振奮し営衛を透達し、
外は表を行って肌腠の風寒を緩散し、
四肢に横走して経脈の寒滞を温通し、
散寒止痛・活血通経に働くので、
風寒表証、風湿痺痛・中焦虚寒の腹痛・
血寒経閉などに対する常用薬である。
発汗力は緩和であるから、
風寒表証では、有汗・無汗問わず応用でき、
とくに体虚感冒・上肢肩臂疼痛・
体虚新感の風寒痺痛などにもっとも適している。
このほか、水湿は陰邪で陽気を得てはじめて化し、
通陽化気の桂枝は化湿利水を強めるので、
利水化湿薬に配合して痰飲・畜水などに用いる。

五味子
五味子

五味子
基原:
マツブサ科のチョウセンゴミシの成熟果実。
五味子は五味を備えているが、
酸味がもっとも勝っており、温ではあるが潤であり
上は肺気を収斂して咳喘を止め、
下は腎陰を渋潤して渋精止瀉し、
内は益気生津して安神・止瀉し、外は斂汗止汗する。
それゆえに、肺虚の久咳・咳喘、
腎虚の滑精・五更泄瀉・自汗盗汗・津枯口渇、
心虚の心悸・失眠多夢に、
すべて応用することができる。
肺虚寒飲の外感による
咳喘・希薄な痰には、温肺散寒の乾姜・細辛などと用いる。
辛散による肺気の耗散を酸収で防止し、
酸収による斂肺渇邪の弊害を辛散で防止し、
散と収が相互に助け合って
止咳平喘の効能を強めることができる。

半夏
半夏

半夏
基原:
サトイモ科のカラスビシャクの
塊茎の外皮を除去して乾燥したもの。
半夏は辛散温燥し、水湿を行らせ逆気を下し、
水湿を除けば脾が健運して
痰涎は消滅し、逆気が下降すると
胃気が和して痞満嘔吐は止むので
燥湿化痰・和胃消痞・降逆止嘔の良薬である。
それゆえ、脾虚生痰の多痰、
痰濁上擾の心悸・失眠・眩暈、
痰湿犯胃の悪心嘔吐・飲食呆滞・心下痞結にもっとも適する。
ここでは、降逆止嘔に働き胃気を和降する。

小青竜湯について
滌飲解表の方剤である。
風寒と水飲が同時に存在し、風寒によって水飲が誘発産出され、
水飲が肺気の宣粛を阻滞しており、
単に解表するだけで水飲を除かなければ
肺気の宣発が阻滞されるために邪を外解できず、
風寒を除かなければ水飲の産出が止まないので、
両面を同時に解決する必要がある。

麻黄は発汗解表・平喘・
宣肺行水の効能をもち、本方は主薬である。
辛温の桂枝は、麻黄の発汗解表をつよめるとともに、
温陽化気の効能により麻黄の行水滌飲を補助している。

芍薬(白芍)・甘草は酸甘化陰によって
営陰を保護し、麻黄・桂枝の辛散のいきすぎを防止する。

乾姜は肺脾の虚寒を補温するほか、
麻黄・細辛とともに水道を宣通して水飲を除く。
祛痰降逆の半夏・散寒止咳の細辛・斂肺平喘の五味子は、
麻黄を助けて平喘止咳をつよめる。

辛散の細辛と酸収の五味子の配合は、
辛散が過度になるのを酸収で抑制し、
酸収により邪を引き留める恐れがあるのを辛散で防ぎ、
「一散一収」によって相互に助け合い、
止咳平喘の効能を強めている。

全体で滌飲解表・止咳平喘の効能が得られる。
痰飲の喘咳には、滌飲・止咳平喘の効能によって
効果をあらわすが、標治にすぎない。
風水に対しては、宣肺滌飲・行水の効能によって効果をあらわす。

提要:
表寒証に水飲を兼ねる場合の証治について

訳:
傷寒の病に罹って未だ表証がとれておらず、
さらに心下には水飲が停留しており、
そのために乾嘔、発熱して咳嗽、或いは口渇し、
或いは大便を下痢し、或いは咽がつかえ、
或いは小便の出が悪く、少腹が膨満し、
或いは息が喘ぐ場合は、小青竜湯で治療する。
処方を記載。第十法。
麻黄節を除く 芍薬 細辛 乾姜
甘草
炙る 桂枝各三両、皮を除く 五味子半升 半夏半升、洗う
右の八味は、一斗の水で、先に麻黄を、水が二升減るまで煮て、浮かんだ泡を除き、
残りの諸薬を入れて、三升になるまで煮て、滓を取り去り、一升を温服する。
もし、微かに下痢するなら、麻黄を去り、鶏子大の蕘花を、焙って赤くして加える。
もし咽がつかえるなら、麻黄を去り、附子一個を炮じて加える。
もし小便が出にくくて、少腹が膨満する場合は、麻黄を去り、茯苓四両を加える。
もし息が喘ぐなら、麻黄を去り、杏仁半升を、皮尖を去って加える。
ところで蕘花は下痢を治さないし、麻黄は喘に対して用いる薬であるが、
このことに反する記述になっており、恐らく仲景の考えではないのであろう。

億ら謹んで考えるに、小青竜湯の効能は、要するに治水である。
また『本草経』によると蕘花は十二水を下すとあり、もし水が去るなら、下痢は止まるはずである。
また『千金方』には、形の腫れるものはまさに麻黄を内れるべしとあるのに、
麻黄でなく杏仁を入れているのは、麻黄は陽気を発散させるからで、これらのことから仲景の考えでないとは断言できない。


四十一章

傷寒表心下有水氣、欬而微喘、發熱不渇。
服湯己渇者、此寒去欲解也、小青龍湯主之。十一。
用前第十方。

和訓:
傷寒心下に水気ありて、欬して微かに喘し、発熱して渇せず。
湯を服し己りて渇するものは、此れ寒去りて解せんと欲するなり。
小青竜湯之を主る。十一。前の第十方を用う。


傷寒表心下有水氣、欬而微喘、發熱不渇。
傷寒では発熱という症状を示すが、
この熱が水を化す以前であれば「口乾」は示さない。
心窩に水があるので、「欬而微喘」(咳をして微かに気喘する)という症状を示す。

服湯己渇者、此寒去欲解也、小青龍湯主之。
小青竜湯を服用後に口乾が起こった場合は、
水邪が去り表裏の気の調和されたということである。

提要:
小青龍湯を服用し、病が次第に癒えようとしている様子について

訳:
傷寒で表証がとれておらず、
また心下の部位に水飲の邪気もあり。
咳嗽、軽微な喘ぎ、発熱するも
口渇せずなどの証が見られるものは、小青竜湯で治療する。
そして小青竜湯服用後に、口渇が現れたなら、
寒飲はすでに解消されており、
病はまもなく癒えることがわかる。第十一法。前記第十法の処方を用いる。


参考文献:
『現代語訳 宋本傷寒論』
『中国傷寒論解説』
『傷寒論を読もう』
『中医基本用語辞典』   東洋学術出版社
『傷寒論演習』
『傷寒論鍼灸配穴選注』 緑書房
『増補 傷寒論真髄』  績文堂
『中医臨床家のための中薬学』
『中医臨床家のための方剤学』 医歯薬出版株式会社

生薬イメージ画像:
『中医臨床家のための中薬学』 医歯薬出版株式会社

為沢

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