ペンギンさん
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張仲景の古医書『傷寒論』の解説です。

今回の傷寒論は弁陽明病脈証并治 二百十章・二百十一章。
二百十章では、譫語と鄭声及び、その死兆について。
二百十一章では、過度の発汗によって譫語になった場合の
脉象を根拠にした予後について詳しく述べております。


二百十章

夫実則讝語、虚則鄭声。鄭声者、重語也。
直視讝語、喘滿者死、不利者亦死。

和訓:
夫れ実すれば則ち譫語し、虚すれば則ち鄭声す。鄭声は、重語なり。
直視譫語、喘滿するものは死し、不利するものも亦死す。


夫実則讝語、虚則鄭声。鄭声者、重語也
譫語は心気が実して神が煩乱したことにより、
狂言(でたらめな言葉)や粗壮(あらあらしい言葉)を言う症状。
邪気の実による症状なので実証。
鄭声は心気が虚して心身を主る神がなくなることにより
声がとても小さくて、同じ言葉をブツブツと繰り返すもの→「鄭声者、重語也」
であり、正気の虚によるものなので虚証。

直視譫語、喘滿者死、不利者亦死
胃の絡脉は上行して心に通じている。
陽明病で譫語が現れるのは燥と火がともに神明を惑わせたことにより現れる。
直視して譫語を発するものは、さらに邪熱が昂ぶって盛んになり、
陰に入って心と腎を傷つけたのである。
少陰の精気が目に注がれないために、目や目系の機能が減退している。
これはかなり危険な状態である。
さらに喘満或いは下痢をもし併発すれば、
これは上焦の陽気が脱したか、下焦の陰気が漏れ出たか、
陰と陽が離脱した状態であるので、手を尽くすことができない。

提要:
譫語と鄭声及び、その死兆について。

訳:
陽明病の実証では譫語をみることがあり、虚証では鄭声が出現することがある。
いわゆる鄭声とは、同じ言葉をくり返すことである。
もし両眼が一点をみつめそして譫語し、息が喘いで胸満すれば
死証に属し、もし下痢するならこれも死証である。


二百十一章

發汗多、若重發汗者、亡其陽、
讝語、脉短者死、脉自和者不死。

和訓:
発汗多く、若し重ねて発汗するものは、其の陽を亡す。
譫語し、脉短なるものは死し、脉自ら和するものは死せず。


發汗多、若重發汗者、亡其陽、讝語
本来太陽病で、過度の発汗により陽明病に転属した後、
さらに発汗法を行ったことにより、燥熱が甚だしくなって
心神をかき乱し譫語を発するようになった。

脉短者死
また心は血脈を主るため、多汗により津気が大量に亡失したので
血脈もまた同じように虚して、その流れはスムーズに行かなくなり
脉が短ければ、津血の亡失がかなり甚だしい危険な状態と言える。

脉自和者不死
脉に上焦と下焦の調和が取れていることを現すような
脉状を示していれば、それは陰と陽の気が内にあることを現しているので
病は危険な状態ではない。

提要:
過度の発汗によって譫語になった場合の
脉象を根拠にした予後について。

訳:
発汗が多すぎたり、或いは何度も発汗をくり返すと患者の陽気は損傷を受ける。
このような時に譫語があって、脉が短であれば予後不良の兆であり、
もし脉象が相対的に穏やかであれば予後良好である。


参考文献:
『現代語訳 宋本傷寒論』
『中国傷寒論解説』
『傷寒論を読もう』
『中医基本用語辞典』   東洋学術出版社
『傷寒論演習』
『傷寒論鍼灸配穴選注』 緑書房
『増補 傷寒論真髄』  績文堂
『中医臨床家のための中薬学』
『中医臨床家のための方剤学』 医歯薬出版株式会社

生薬イメージ画像:
『中医臨床家のための中薬学』 医歯薬出版株式会社

※画像や文献に関して、ご興味がおありの方は
是非参考文献を読んでみて下さい。

為沢

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