自然界の営みというものは四季に従い
常に変化し続けるものである。
その営みは、正常を状況では万物をよく
成長、発育させるものである。
つまり、
「天に四時五行あり。もって成長収蔵し、もって寒暑燥湿風を生ず」
「寒暑燥湿風火は天の陰陽なり。三陰三陽は上にこれを奉く。
木火土金水火は地の陰陽なり。成長化収蔵は下にこれに応ず。」

というのである。
そこには、
適度な風 適度な寒さ 適度な暑さ
適度な湿気 適度な燥き 適度な火
が、地域や季節によってそのバランスは異なるとは言えど、
その運気に応じた営みが行われているものである。
しかし、四季が崩れたり、
寒いはずの冬に妙に温かい日が続いたり、
逆に夏が寒かったりなど、
季節外れな環境になると、自然の営みが今度は
人体を侵し始め、疾病を引き起こす。
これを「六淫」或いは
「六邪」と呼ぶ。
これに対して、六種の正常な自然の営みを
「六気」と呼ぶ。
六淫とは、つまり
風邪
寒邪
暑邪
湿邪
燥邪
火邪
の六つがこれなり。
 



春の主気
五臓では””に相応する。
この風は体の皮膚表面(皮毛という)から侵入しやすい。
風は百病の長である
風邪(ふうじゃ)はとても動きが早く、変化が多様である。
どのようなところには隙あらば侵入しようとする邪気と言える。
善く(よく)行り(めぐり)数々(しばしば)変ず。
風はその侵す部位も一定せず、あちこちを荒らしまわす。
自然界の風を想像してみて下さい。
ピューピューと吹いて 早いでしょう。
形もない。 取り留めのない邪気がこの風。
変化自体も早いので、他の邪気があれば
それと合わさって体を侵すのが得意で、
ころころ状態を変える器用な邪気です。
まるでゲゲゲのキタロウの「ねずみ男」みたいですね。

冬の主気
寒は侵入部位によって
以下の傷寒と中寒に分けられる。
傷寒
皮膚表面から侵入するもの
中寒
直接臓腑を犯すもの。
次に、寒の特徴を挙げよう
陰邪であり陽気を損傷させる。
寒が表(皮膚表面)を犯すと、ソウ理(毛穴)が閉まり、
悪寒や悪風がして毛が逆立つ。
裏(体の臓腑に影響する)を損傷すると、下痢をしたり四肢(手足)や体が冷えてしまう。
寒は凝滞、収引を主る
気血はのびやかに流れていなければならないのに、
気血がギューッと凝縮しようとするので流れが阻害されて滞り、持病で痛みのあるものなどは悪化する。
冷えて頭がギューッといたくなる、あれである。
寒が関節や経絡に入ると、関節を曲げにくくなったり、
気血の流れが阻害されると痺れがでたりする。

夏の主気
『素問』五運行大論篇に、
「それ天にありては熱となし、地にありては火となし・・・その性は暑である。」とあるように、天地における火熱の気である。
特徴を挙げよう。
陽邪でありその性質は炎熱である。
熱エネルギーであるから体を侵すと、体内に熱がこもり、
極まるにしたがって、体内の津液(体に有用な水分)を
蒸発させてしまうのであり、高熱、口渇、
尿の色が濃くなるなどの症状が現れる。
また『素問』生気通天論に
「暑によりて、汗し、煩すればすなわち喘喝し、
静かなればすなわち言多く、体は燔炭のごとく、
汗出ずんれば散ずる」ともある。
暑の性質は昇散であり、気や津液を消耗させる。
「暑ければすなわち皮膚緩みて奏理開く」とあるように、
暑邪に侵されると奏理(毛穴)が開き汗が止まらなくなる。
また暑邪が、直接心包という経絡を損傷して火盛がため、
風を発生させるので、昏厥・抽搐(ちゅうちく:四肢のコントロールできないひきつり)といった証が現れることもある。
これに対して、葉天士は「夏に熱を感受すれば混迷して
驚証のようになる・・・それは熱気が孔竅を閉塞したためであり、
邪は絡に入る」と述べている。
驚証とは手足のひきつけ、意識の昏迷を主症状とする病症である。
湿

湿は長夏の主気。
長夏とは夏~秋の間で、大暑~白までの期間をいう。
この時期天の気は下降し、地の気は昇るため、
その中の人は湿邪を最も感受しやすい状況となる。
『直指方』に曰く
天気が下降し、地気が上騰し、二気が燻蒸すれば湿になる」である。
湿はどのようにすれば体に溜まるのか。
1つは、外湿を受けるということ
長時間、外作業をしたり、湿気の多い場所にいたりすると、
外界の湿が体内に侵入するのである。
もう1つは内生。
内臓の弱りで、体の中で作り出す湿邪である。
脾胃という臓腑があるが、この脾胃は栄養分(飲食物)を吸収して、
気血を生成する働きがあるのだが、これが弱ると、
飲食物をうまく処理できず、体にゴミとして残ってしまう。
これを湿邪という。
この時、同時に栄養分をうまく吸収できないので、湿邪は溜まるし、
栄養も取れないという非常に効率の悪い状況になる。
○湿は重く濁った邪であり、粘滞の性質をもつ
体が湿に侵されると、
頭は包み込まれたように重くなり、
手足はだるくて重い、
関節が重いなど、‘重’を表す症状が出る。
‘濁’とは、湿濁の濁に通じ、
目やにが出る
痰が出る
便が泥状になる
女性の帯下(おりもの)が下りる
尿が濁る
などがこの‘濁’の表す症状である。
粘滞とはネバネバして停滞するということであり、
便や汗、尿がネバネバし、その上頑固で取り去り難く、病も慢性化しやすいとい
った意味を表す。
これらは分けられるものではなく、
湿と濁、粘滞の性質を併せ持つものである。
○湿は陰の性質を持ち、陽気を損傷させ、気の流れを阻害させやすい
先程も書いた通り、
湿はネバネバしていて取り去り難いもので、
この湿邪が体内にあると、気の流れを大いに阻害し始めます。
気滞というのが気の固まりによる気機の閉塞ですが、これよりも湿邪はより取り
にくいものです。
湿邪が脾胃を塞ぐと、
脾胃そのものの機能が失調し、
嘔吐 下痢 腹部の脹りなどの症状が出ます。
湿邪が耳を塞げば耳がこもったように詰まるなど、
各々侵す場所により多彩な症状が出てきます。
湿邪をさばくのは、
五臓六腑のうち、
脾胃の役割であり、
湿邪が長居すると、
脾胃が傷つき、消化機能が落ちてしまいます。
湿邪は陰邪なので、脾胃のうちでも陽気を侵し、
脾胃の気虚 陽虚という陽気不足の証を呈します。
更に進行すると、腎の陽気を喰らい、
一身の陽気が不足するために体が冷えるなどの症状が出ます。
ここまでいくと、治すのにも時間がかかります。
これらに対し、
薛生白は『湿熱病篇』で
悪寒して顔が黄色く、口渇がなく、精神疲労し、四肢がだるく、
脈沈弱で腹痛下痢があるものは湿が太陰の陽を苦しめているのである
」と述べ、
葉天士は「湿が勝てば陽は微弱になる」と『外感温熱篇』で述べている
○湿は下に向かう
火炎は上に昇り、水湿は下に向かう、集まるというのが
自然界の法則。
湿はとても重く、粘着質なので下に溜まりやすいのである。
これが原因の病も、下部に現れることが多いのである。
水便で脾胃の力を出したり、帯下(おりもの)、脚気、
水腫(むくみ)などは湿邪によるものが大変多い。
外から入ってきたものは、水便より出してやり。(利水便)
内生のものは、脾胃の機能を強めて、湿が体内で
さばけるように育ててやる。

燥とは秋の主気
燥邪が人を侵すと、皮膚の乾燥、唇の乾き、目が渋る、大便が乾燥し固くなるな
どの症状が現れる。
この燥は、寒によっても熱によっても出来る。
寒からの由来は、寒の侵入によって津液(体に有用な水分)を凝結させることに
よって、津液が巡らないために乾燥することであり、これを涼燥と呼ぶ。
熱による由来は、
津液を熱で焼いて乾燥するためであり、
これを温燥と呼ぶ。
これらは問診にてよくよく判断するものであるし、臨床家ならば切診(東洋医学
の独特の触診のこと、よく経絡、気血の状態を候い知ることが出来る)
燥邪の特徴は以下の通り
○津液を損傷する 「燥勝てば即ち乾く」(『素問』陰陽応象大論篇)ので、人の津液を損傷させ、皮
膚や唇、舌、咽、眼、鼻が乾燥し、あかぎれ、大便の乾燥、尿量の減少などの症
状が現れる。
つまりは乾き、水分が足りない状態なので乾燥地帯の地面が割れた赤茶けた大地

植物も実らない状態を想像して頂ければよい。
○燥邪は肺をまず犯しやすい
燥邪は口鼻から入りやすく、まず肺、特に肺陰(肺の水分、血液)を侵す。
あるいは肺の気を引き下げる作用が失調する(宣降作用)
そのため、口や鼻の乾燥、咳や痰に異常が出る(痰の出ない干咳であったり痰が粘ってなかなか出なかったり)
病状が重くなると、鼻血や痰に血が混じるなど、出血をみる
肺と大腸は表裏一体につき肺燥があれば必然的に大腸が乾き、便秘をする。

暑邪は夏の主気であったが、
火邪は、はっきりとした季節性はなく、
どの季節にも起こり得るものである。
伝染性邪や、他の邪が体内でうっ滞して
出来た火が、これである。
そこで劉河間は六気は全て火に従火しうるという説を出した。
特徴は以下の通り。
○火は熱の極めであり、炎上する性質がある。
メラメラと自然界の炎が燃え、このようになる。
その性は火熱であり、上へ上へと炎上する。
症状は、高熱や、煩熱、顔と眼の紅潮などが出る。
また、症状は体の上部に出やすい。
内生した火邪が、心に走らば、口や舌のびらん
胃に走らば、歯齦の腫れ(はぐきの腫れ)
心包(体にある経路の1つ)に走らば、精神的に不安定になり、暴れ始めたりする。
(神明逆乱、狂躁妄動、神昏、●語と)

これに対しての古典による記載を紹介しよう。
『素問』至真要大論篇
「諸逆衝上、みな火に属す」「諸躁狂越、みな火に属す」
○火は陽邪であり、体の津液(体に有用な水分)を消耗させ、同時に気を消耗させる。
火が盛んになると、大いに汗をかく。
ものを蒸すようにその水分は外へ(この場合は汗)と出て、
それが続くと、しだいに体で水分不足に陥る。
よって、よくのどが渇き、水をよく飲む。
大便が硬くなる、小便が濃く、黄色くなる。
などの症状が現れる。
(口渇、咽干、口燥、大便秘結、小便黄赤色、舌苔黄にして乾く)
また気を消耗し、元気がなくなるので、
ぐったり疲れてしまい気力が出ない。
無力感、無力になるといった状態に陥る。
進行すると、体の陽気の損傷が激しくなり、体が冷えてしょうがない、
冷たい汗が止まらない、といった状態になる。
(陰の損傷が陽に及ぶ)
○風を発生させて血を動かす。
火邪の勢いが強くなると出血しやすくなり、皮膚に斑点が出るなどする。
また盛んな火は風を生じ、風に伴う症状(上記の「風」参照)

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