こんにちは、為沢です。

今回は張景岳ちょうけいがくの『質疑録しつぎろく』の第二章「論真中風外有六経之形症」の其の四です。


和訓:
若し中風を論ずれば、則ち十二経皆見症有り、而して六経に止まらざるなり。
如し四肢収まらず、手足拘攣する者は、風の足太陰脾に中るものなり。
口眼喎斜かしゃし、口噤こうきんして開かざるものは、風の足陽明胃に中るものなり。
痰涎の壅塞ようそくして、声ののこを曳く如きものは、風の中手太陰肺に中るものなり。
大便閉結するものは、風の手陽明大腸に中るものなり。
もつれて語れざるものは、風の足少陰腎に中るものなり。
くらみて昏迷し、人事不省なるものは、風の手少陰心と手厥陰心包絡に中るものなり。
瘈瘲けいしょう強直し、角弓反張するものは、風の足厥陰肝と足太陽膀胱に中るものなり。
耳聾し、脇痛するものは、風の足少陽胆に中るものなり。
此皆中風の形症なり、いずくんぞ六経を以て之に拘る可きや。
其の傷寒の六経と同じからざること明らかなり。


・中風という病証は十二経の全てに
中風の時に出現する病証が存在する。
傷寒の六経だけにしか出現するものではない。

・足太陰脾経
四肢に力が入らない・手足が拘攣する

・足陽明胃経
口眼喎斜(顔面神経麻痺)を起こし歯を食いしばって開かない

・手太陰肺経
痰涎が口からあふれて咽を塞ぎ、
声が鋸を曳くような感じがする

・手陽明大腸経
大便が秘結して出ない

・足少陰腎経
舌がもつれて失語症になる

・手少陰心経・手厥陰心包絡
目がくらんで昏迷し、人事不省におちいる

・足厥陰肝経・足太陽膀胱経
瘈瘲(抽風と同じ。”瘈”は筋肉の強直。”瘲”は筋肉の弛緩の状態)強直し、
角弓反張(体を後側に弓なりに反らしてしまうような痙攣)するもの

・足少陽胆経
耳が聞こえず、脇痛がする

これらは全て中風の形症であるのに、
どうして六経ということばかりにこだわるのか。
中風の形症と傷寒の六経の形症とは
全く異なるものであることは明白である。


参考文献:
『中国医典 質疑録』 緑書房
『中国医学の歴史』 東洋学術出版社
『中国鍼灸各家学説』東洋学術出版社

※画像や文献に関して、ご興味がおありの方は
是非参考文献を読んでみて下さい。

為沢

返事を書く

Please enter your comment!
Please enter your name here