下野です。

今回も『薬性の歌』の記事になります。
前回お伝えしておりました通り、
本来の順番とは異なっております。
ご了承ください(_ _)


【原文】
苦参味苦、癰腫瘡疥、下血腸風、眉脱赤癩。
竜胆苦寒、療眼赤疼、下焦湿腫、肝経熱煩。
五加皮寒、袪痛風痺、健步堅筋、益精止瀝。
防已気寒、風湿脚痛、熱積膀胱、消癰散腫。去皮酒浸洗。
地榆沈寒、血熱堪用、血痢帯崩、金瘡止痛。胃弱者少用

<第十六に続く>


【解説】
苦参の味は苦。
癰腫、瘡疥、下血、腸出血、
眉脱、赤癩の症状に。

竜胆は苦寒。
眼が赤く痛む、下肢の湿腫、
肝の実火に。

五加皮は寒。
風痺証の痛みを取り去り、
筋骨を強くし、精を益す。

防已は気・寒。
風湿による脚の痛み、下焦 膀胱の熱積に。
利水消腫の効能ももつ。
皮を去り、酒に浸す。

地榆は寒。
出血性の下痢や帯崩などの血熱による症状に用いる。
又、傷の痛み止めにも。
胃の弱い者には少量用いる。

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◉苦参

苦参
苦参

マメ科の多年草 クララの根。
性味:苦・寒
帰経:心・脾・大腸・小腸・肝・腎
効能:
①清熱燥湿
・大腸湿熱の下痢、裏急後重に。
方剤例 → 香参丸・治痢散
・血便や痔の出血に。
方剤例 → 苦参地黄丸
・湿熱による黄疸に。
方剤例 → 竜胆苦参湯
②殺虫止痒
湿疹などの痒みだけでなく、
湿熱の帯下、陰部の痒みにも。
方剤例 → 三物黄芩湯・治陰道滴虫方
③その他
・湿熱の小便不利に。
方剤例 → 当帰貝母苦参丸

◉竜胆草

竜胆草
竜胆草

リンドウ属の植物の根。
性味:苦・寒
帰経:肝・胆・膀胱
効能:
①清熱燥湿
・肝胆の湿熱の黄疸に用いる。
方剤例 → 竜胆苦参湯
・肝経の湿熱下注の排尿痛や排尿困難、
陰部の痒み、尿の混濁などに。
方剤例 → 竜胆瀉肝湯
②瀉肝降火
・肝胆の実火による目の充血や痛み、
胸の痛み、急性の難聴などに。
方剤例 → 竜胆瀉肝湯
・肝熱生風の発熱や痙攣に。
方剤例 → 涼驚丸

◉五加皮

ウコギの根皮。
性味:辛・苦・温
帰経:肝・腎
効能:
①祛風湿
・風湿による痺証で、湿邪偏盛の関節痛や拘縮、むくみなどに。
方剤例 → 五加皮散・五加皮丸
②補肝腎・強筋骨
肝腎不足の腰や膝の怠さ、無力感に。
また小児の歩行時期の遅れに。
方剤例 → 五加皮酒
③利水消腫
浮腫みや尿量の減少に。
方剤例 → 五皮散

◉防已

防已
防已

オオツヅラフジの根茎、もしくは茎。
性味:大苦・辛・寒
帰経:膀胱・脾・肺・腎
効能:
①利水退腫
・水湿停滞の浮腫や関節の腫れに。
方剤例 → 防已黄耆湯・防已茯苓湯
・腹水の腹満や口渇に。
方剤例 → 已椒藶黄丸
・肺水腫の呼吸困難に。
方剤例 → 木防已湯・木防已加茯苓芒硝湯
②祛風止痛
・風湿痺の関節痛や浮腫みに。
方剤例 → 疎経活血湯
・湿熱痺の症状に。
方剤例 → 宣痺湯・加減木防已湯
・寒湿痺の症状に。
方剤例 → 防已湯
③その他
下焦の皮膚化膿症に。
方剤例 → 防已地黄湯

◉地榆

バラ科のワレモコウの地下部。
性味:苦・酸・微寒
帰経:肝・胃・大腸
効能:
①涼血収渋止血
・血熱の鼻出血や吐血、血尿、血便などに。
・湿熱の出血性下痢に。
方剤例 → 地榆丸
・血熱の不正性器出血に。
方剤例 → 涼血止崩湯
②消腫止痛
・皮膚化膿症や熱傷に。


<参考文献>
『万病回春解説』 創元社
『万病回春.巻之1-8』 早稲田大学 古典籍総合データベース
『まんが漢方入門』 医道の日本社
『中医臨床のための中薬学』 医歯薬出版株式会社

※画像や文献に関して、ご興味がおありの方は
是非参考文献を読んでみて下さい。

下野

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