下野です。

今回は『万病回春』の
「薬性の歌」の記事になります。
実は作り終えてから気づいたのですが、
本来 この回で紹介する生薬が
五種類抜けてしまっており、
そちらに関しては次回 記事に致します。

本来の「薬性の歌」と
内容が前後してしまうことを
どうかご了承ください(_ _)


【原文】
茯神補心、善鎮驚悸、恍惚健忘、兼除怒恚。
遠志気温、能驅驚悸、安神鎮心、令人多記。
酸棗味酸、斂汗祛煩、多眠用生、不眠用炒。
菖蒲性温、開心通竅、去痺除風、出聲至妙。
柏子味甘、補心益気、斂汗扶陽、更除驚悸。

<第十五に続く>


【解説】
茯神は心を補って驚悸を鎮み、
恍惚や健忘に用いる。
怒りを取り除くことも兼ねる。

遠志は気温。
驚悸を取り除き、
心神を安定させ、
心神不寧の健忘を治す。

酸棗は味酸。
体虚多汗や虚煩を治す。
多眠には生を用い
不眠には炒を用いる。

菖蒲の性は温。
心竅を開いて
痺を取り、風をさばく。
難聴にも用いる。

柏子は味甘。
心を補って気を益し、
汗をおさめて陽気をたすける。
また驚悸を治す。

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◉茯神

茯苓
茯苓

マツホドの菌核の茯苓で松根を抱く部分。
効能:寧心安神に働き、不眠や驚きやすい、動悸、不安症に用いる。
方剤例 → 遠志丸

※茯神は茯苓と、
効果や効能は同じだとされてはいますが、
安神作用は茯苓より優れていると
言われています。

◉遠志

イトヒメハギの根、又は根皮。
性味:苦・辛・温
帰経:心・腎・肺
効能:
①安神益智・去痰開竅
・心神不寧による動悸や不眠に。
方剤例 → 朱砂安神丸・遠志丸・帰脾湯など
・痰阻心迷の健忘や痴呆など。
方剤例 → 不忘散・安神定志丸・定志丸
②散鬱化痰
寒痰の咳嗽や痰が多くすっきりしない時に。
また湿痰による皮膚化膿症に。

◉酸棗

サネブトナツメの成熟種子。
性味:甘・酸・平
帰経:心・肝・胆・脾
効能:
①補肝寧神
・血不養肝や虚火による焦躁や不眠、動悸などに。
方剤例 → 酸棗仁湯・天王補心丹・補肝湯
・心脾両虚の健忘や浅眠、疲れやすい、無気力などに。
方剤例 → 帰脾湯
②収斂止汗
虚証の多汗に。

◉菖蒲

セキショウの根茎。
性味:辛・苦・温
帰経:心・脾・胃
効能:
①除痰開竅
痰濁蒙閉心竅の意識障害、譫語などに。
方剤例 → 菖陽瀉心湯・菖蒲鬱金湯
②醒神健脳
心神不寧の怖がりや不眠、健忘、痴呆などに。
方剤例 → 安神定志丸・読書丸
③化湿開胃
・湿困脾胃の食欲不振や腹部の張りなどに。
方剤例 → 菖蒲六味飲
・食欲不振や下痢、腹痛などに。
方剤例 → 開噤散
④その他
難聴や耳鳴りに用いる。

◉柏子

コノテガシワの成熟した種仁。
性味:甘・平
帰経:心・脾・肝・腎
効能:
①養心安神
心血不足の不安や不眠、多夢、動悸などに。
方剤例 → 柏心養心丸・養心湯
②益陰止汗
陰虚の寝汗に。
方剤例 → 柏子仁丸
③益脾潤腸
陰虚、高齢者や産後の腸燥による便秘に。
方剤例 → 五仁丸


<参考文献>
『万病回春解説』 創元社
『万病回春.巻之1-8』 早稲田大学 古典籍総合データベース
『まんが漢方入門』 医道の日本社
『中医臨床のための中薬学』 医歯薬出版株式会社

※画像や文献に関して、ご興味がおありの方は
是非参考文献を読んでみて下さい。

下野

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