とある場所の風にふれる。
今までのどの場所とも異なる。

その風の中心は荘厳ではあるが、
一族を見届ける祖父のような眼差しであり、
同時に清らかで軽い透明なものをまとっていた。
実に、
それはよく周囲の木を抱き続けたし、
苔をよく養ったことを一見して知った。
通るべき道には木々や有形、無形の者が
自分の身分を知るようによく開き尊き動線を守った。

なんと美しい場であろう。
ここは、生きとし生ける者をこれより主人とする事を望んでいない。
その風は僕の向かうべき姿を示してくれたと言っても良い。

これから先に人生というものがあるのだとすると、
僕のふれた風
僕とともにあった風が
あのような振る舞いをして縁するものを包み込むという事が
ひとつ目標になろうと思う。

血なまぐさい場所にはやはりそのような風が、
怒れるものとあった風はやはりその怒りをまとっている。
無言の先にあのような風を残したい。
それが出来るならば、
なにかを残そうとやっけになることなど一切必要が無い。
伝わる人には伝わるし、
伝わらない人にも実は届けることは出来る。
そういう風にして
今は、鍼をもって
無形の作用を重ねたいと思っています。

一人の人間の語りが
死して尚、
あのように後世にまで存在感を保ち続けることが出来るのか。
邪なものを寄せまいとするキンと張り、美しいまでの霊性。
また、それを守護してきたものの強い忠誠心。
言葉にはならない。

また、一つ大事な故郷を知った日となった。
我が内に大きく刻印を残した。

僕は鍼のことを多くは語らないけれども、
黙し、自問自答し続ける事で
言葉では伝えられないものを
言葉以上の表現で
場とともに刻し続けようと思う。
これからもずっと。

 鍼師 林

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