新世界, 通天閣
新世界, 通天閣

こんにちは、為沢です。

今年は新世界の通天閣が開業100周年。
記念に通天閣に寄ってみました。
大阪人なのですが、通天閣に来たのは
3回目?くらいでしょうか。あまり来たことありません。
(いや、3回ならよく来ている方かも知れません)
100周年のためか、町の商店街は活気づいており
何故か「キン肉マン」の曲が終始流れていました(笑)

名物の串カツやビリケンさん、
味わい深い地元の方々など、
ディープな大阪を堪能できる下町です。
新世界に行かれたことのない方は是非どうぞ。


では、今回の傷寒論は弁太陽病脈証并治(中)七十章・七十一章。
七十章では、発汗後の虚・実について。
七十一章では、発汗法をおこなった後、
胃燥と蓄水になった場合の証治について詳しく述べております。


弁太陽病脈証并治(中)七十章

發汗後、惡寒者、虚故也。不惡寒、但熱者、実也。
当和胃気、与調胃承気湯。方三十三。
各玉函云、与小承気湯。
芒硝半升甘草二兩、炙 大黄四両、去皮、清酒洗
右三味、以水三升、煮取一升、去滓、内芒硝、更煮両沸、頓服。

和訓:
発汗して後、悪寒するものは、虚するが故なり。
悪寒せず、但だ熱するものは、実するなり。当に胃気を和すべし。
調胃承気湯を与う。方三十三。
玉函に云う、小承気湯を与うと。
芒硝半升
甘草二両、炙る 大黄四両、皮を去る、清酒で洗う
右三味、水三升を以て、煮て一升を取り、滓を去り、芒硝を内れ、
更に煮ること両沸、頓服す。


發汗後、惡寒者、虚故也
発汗法を施した後、悪寒が更にひどくなる者は虚証であるため。

不惡寒、但熱者、実也。当和胃気、与調胃承気湯
胃熱がもともと実である者に発汗法を行えば、津が傷つき易く、
燥熱と化し陽明の裏熱証を呈してしまう。
このような場合は、調胃承気湯で熱泄し、
胃を和すべきかを考慮しなければならない。

調胃承気湯

芒硝
基原:天然の含水硫酸ナトリウムNa2 SO4・10H2O
または風化消Na2SO4・2H2O。
なお古来の芒硝は結晶硫酸マグネシウム MgSO4・7H2Oである。
芒硝は鹹渋・寒で、鹹で軟堅し苦で降下し寒で清熱し、
瀉熱通便・潤燥軟堅の効能をもち、胃腸三焦の実熱を蕩滌し燥屎を除去する。
それゆえ、実熱積聚の大便燥結・譫語発狂などを呈する陽明腑実証や、
陽明の熱が水飲と結した結胸に適する。外用すると清熱消腫に働き、
癰腫瘡毒・目赤喉腫口瘡などに有効である。

甘草
甘草

甘草
基原:マメ科のウラルカンゾウ、
またはその他同属植物の根およびストロン。
甘草の甘平で、脾胃の正薬であり、
甘緩で緩急に働き、補中益気・潤肺祛痰・止咳・
清熱解毒・緩急止痛・調和薬性などの性能を持つ。
そのため、脾胃虚弱の中気不足に用いられる。
また、薬性を調和し百毒を解すので、
熱薬と用いると熱性を緩め
寒薬と用いると寒性を緩めるなど
薬性を緩和し薬味を矯正することができる。
ここでは甘緩和中と諸薬の調和に働く。

大黄
大黄

大黄
基原:タテ科のダイオウ属植物、
およびそれらの種間雑種の根茎。しばしば根も利用される。
大黄は苦寒沈降し気味ともに厚く、
「走きて守らず」で下焦に直達し、胃腸の積滞を蕩滌するので、
陽明腑実の熱結便秘・壮熱神昏に対する要薬であり
攻積導滞し瀉熱通腸するため、
湿熱の瀉痢・裏急後重や
食積の瀉痢・大便不爽にも有効である。
このほか、瀉下泄熱により
血分実熱を清し清熱瀉火・凉血解毒に働くので
血熱吐衄・目赤咽腫・癰腫瘡毒などの上部実熱にも用い、
行瘀破積・活血通経の効能をもつために、
血瘀経閉・産後瘀阻・癥瘕積聚
跌打損傷にも適し、湿熱を大便として
排出し清化湿熱にも働くので、
湿熱内蘊の黄疸・水腫・結胸にも使用する。
外用すると清火消腫解毒の効果がある。

調胃承気湯について
大承気湯から行気の枳実・厚朴を除き、和中調胃の炙甘草を加えたもので、
熱結を攻下する大黄・芒硝の峻猛性を甘草で緩和している。
大・小承気湯より瀉下の力が緩やかで、燥・実が主体の軽症に適する。
「緩下実熱」の方財と考えてよい。

提要:
発汗後の虚・実について

訳:
発汗したあと、悪寒が現れるのは、正虚の状態になっているから。
もし悪寒がなく、発熱だけがあるなら、体内に実邪があるためである。
この状態のものは胃気を調和せねばならず、調胃承気湯を選択して治療すればよい。
処方を記載。第三十三法。【玉函】には、小承気湯を投与するとある。
芒消半升
甘草二両、炙る 大黄四両、皮を除く、清酒で洗う
右の三味は、三升の水で、一升になるまで煮て、滓を除き、滓を除いてから、芒消を入れ、さらに二回程煮たたせて、頓服する。


七十一章

太陽病、発汗後、大汗出、
胃中乾、煩燥不得眠、欲得飲水者、
少少与飲之、令胃気和則愈。
若脉浮、小便不利、微熱消渇者、五苓散主之。
方三十四。
則猪苓散是。
猪苓十八銖、去皮 沢瀉一両六銖 白朮十八銖 茯苓十八銖 桂枝半両、去皮
右五味、搗爲散、以白飲和服方寸匕、日三服。多飲煖水、汗出愈。如法将息。

和訓:
太陽病、発汗して後、大いに汗出で、
胃中乾き、煩燥して眠るを得ず、水を飲むを得んと欲するものは、
少々与えて之を飲ましめ、胃気をして和せしむければ則ち愈ゆ。
若し脉浮に、小便利せず、微かに熱して消渇するものは、五苓散之を主る。
方三十四。
則ち猪苓散是れなり。
猪苓十八銖、皮を去る 沢瀉
一両六銖 白朮十八銖 茯苓十八銖 桂枝半両、皮を去る
右五味、搗きて散と為し、白飲を以て和し方寸匕を服し、日に三服す。
多く煖水を飲み、汗出でて愈ゆ。法の如く将息す。


太陽病、発汗後、大汗出、胃中乾、
煩燥不得眠、欲得飲水者、少少与飲之、令胃気和則愈

太陽病は発汗法を行なうべきであるが、
汗をかき過ぎると津傷、胃燥になる。
このような場合、病人は煩燥して安らかに横になって寝られない。
それは中焦・土が燥となり、
上焦と下焦の水気と火気の交流に影響を及ぼしたからである。
口渇は失水を示しているが、
これは汗をかき過ぎて胃気を虚してしまったことにより起こる。
このとき水を飲めば、
その飲んだ水は中焦に集まって留まり易くなるので、
ほんの少しだけ飲ませて、
燥に潤いを与え胃気を調和させれば治るのである。

若脉浮、小便不利、微熱消渇者、五苓散主之
これは表邪が解けずに経に沿って太陽の腑に入り、
太陽の本気が病を感受したことにより起こるもので、
下焦は小便不利、上焦では微熱や消渇等の症状をみる。
これらは水腑と水道の気化作用がスムーズに行われず、
津液が全身に行き渡らなくて起こる蓄水証である。
このような場合、五苓散で通陽、利水をはかり、
水腑を通して水道を巡らせれば、
小便がよく出て津液を全身に行き渡らせることができ、
諸症を治すことができる。

五苓散

猪苓
猪苓

猪苓
基原:
サルノコシカケ科のチョレイマイタケの菌核。
猪苓は甘淡・偏凉であり、
水道を利し主に滲泄し、利水滲湿の常用薬である。
利水消腫・利水止瀉・利湿清熱などすべての水湿に用いるが、
水湿の偏熱にもっとも適する。
猪苓は茯苓よりも利水滲湿の効力が強いが、
補益心脾の効能をもたない。
淡滲で津液を消耗するので、
水湿がない場合には使用してはならない。

沢瀉
沢瀉

沢瀉
オモダカ科のサジオモダカの周皮を除いた槐茎。
沢瀉は甘淡・寒で、
寒で除熱し淡で滲湿し、腎経の虚火を泄し、
膀胱の湿熱を除き、
通利小便・祛湿泄熱・除痰飲の効能をもつ。
湿熱内蘊による小便不利・短赤熱痛・淋瀝尿閉、
心下停飲の頭暈目眩および
水腫脹満・泄瀉、さらには陰虚火旺に用いる。
沢瀉は利水滲湿の効力は茯苓とほぼ同じであるが、
泄熱に働き補益の効能をもたない。
大量で滑精をひきおこし、
久服すると腎陰を損傷するので、
腎虚でも火熱の症候がみられないときや滑精があるときは
使用しない方がよい。

白朮
白朮

白朮
基原:キク科のオオバナオケラの根茎。
この他、日本薬局方では
オケラの周皮を除いた根茎を規定しており、
日本では一般にこれが流通している。
白朮は甘温で補中し苦で燥湿し、
補脾益気・燥湿利水の効能を持ち、健脾の要薬である。
脾気を健運し水湿を除いて痰飲・水腫・泄瀉を消除し、
益気健脾により止汗・安胎にも働く。
それゆえ、脾虚不運の停痰停湿・
泄瀉腫満に対する主薬であり、
表虚自汗および脘腹脹満・胎動不安にも用いる。

茯苓
茯苓

茯苓
基原:
サルノコシカケ科のマツホドの外層を除いた菌核。
茯苓は甘淡・平で、甘で補い淡で滲湿し、
補脾益心するとともに利水滲湿に働き、
脾虚湿困による痰飲水湿・食少泄瀉および
水湿内停の小便不利・水腫脹満に必須の品であり、
心脾に入って生化の機を助け寧心安神の効能をもつので、
心神失養の驚悸失眠・健忘にも有効である。
茯苓の特徴は「性質平和、補して峻ならず、利して猛ならず、
よく輔正し、また祛邪す。脾 虚湿盛、必ず欠くべからず」といわれるが、
性質が緩やかであるところから補助薬として用いることが多い。

桂枝
桂枝

桂枝
基原:
クスノキ科のケイの若枝または樹皮。
桂枝は辛甘・温で、主として肺・心・膀胱経に入り、
兼ねて脾・肝・腎の諸経に入り、
辛散温通して気血を振奮し営衛を透達し、
外は表を行って肌腠の風寒を緩散し、
四肢に横走して経脈の寒滞を温通し、
散寒止痛・活血通経に働くので、
風寒表証、風湿痺痛・中焦虚寒の腹痛・
血寒経閉などに対する常用薬である。
発汗力は緩和であるから、
風寒表証では、有汗・無汗問わず応用でき、
とくに体虚感冒・上肢肩臂疼痛・
体虚新感の風寒痺痛などにもっとも適している。
このほか、水湿は陰邪で陽気を得て
はじめて化し、通陽化気の桂枝は
化湿利水を強めるので、
利水化湿薬に配合して痰飲・畜水などに用いる。

五苓散について
利水滲湿と通陽化気によって小便を通利し、
水湿を除去する主方である。
主薬の沢瀉は膀胱に直達して利水滲湿に働き、
淡滲の茯苓・猪苓は利水下泄をつよめ、
白朮は健脾により水湿の運化を促進し、共同して三焦を通利させる。
辛温 の桂枝は、太陽表邪を外解するとともに、
通陽により膀胱・三焦の気化を促し、
水湿を蒸化して上承と下泄を回復させる。
なお、利水滲湿を通じて、
水湿下注による泥状〜水様便が消失するとともに
小便が通利するところから、水湿の「分利」と称される。
蓄水証に対しては解表・利水滲湿・通陽化気により、
霍乱には水湿の分利により、
水湿内停には健脾化湿と分利により、
痰飲には化気利水により、それぞれ効果をあらわす。

提要:
発汗法をおこなった後、胃燥と蓄水になった場合の証治について

訳:
太陽病の患者に、発汗法を用い、汗が出すぎると、
胃の中が乾き、患者は煩燥して安眠できなくなるが、
この時もし水を飲みたがれば、
少量の水を飲ませてやればよく、
それによって胃気が調和すると病は治癒する。
もし脉が浮で、小便が出にくく、
軽い発熱と、多量に水を飲んでも止まない強い口渇があれば、
五苓散で治療する。処方を記載。
第三十四法。猪苓散のことである。
猪苓十八銖、皮を除く 沢瀉一両六銖 白朮十八銖 茯苓十八銖 桂枝半両、皮を除く
右五味を、搗いて粉末にし、方寸匕(約十二ミリリットル)の量を重湯によく混ぜて服用し、
一日に三回服用する。温水を多目に飲めば、汗が出て癒える。療養の仕方は法の通りにする。


参考文献:
『現代語訳 宋本傷寒論』
『中国傷寒論解説』
『傷寒論を読もう』
『中医基本用語辞典』   東洋学術出版社
『傷寒論演習』
『傷寒論鍼灸配穴選注』 緑書房
『増補 傷寒論真髄』  績文堂
『中医臨床家のための中薬学』
『中医臨床家のための方剤学』 医歯薬出版株式会社

生薬イメージ画像:
『中医臨床家のための中薬学』 医歯薬出版株式会社

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