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六甲山系 @大石駅
六甲山系 @大石駅

下野です。
今回も引き続き「諸病の主薬」になります。


【原文】
六鬱、須用蒼朮、香附、為主。
結痰、須用瓜蔞、貝母、枳実、為主。
湿痰、須用半夏、茯苓、為主。
風痰、須用白附子、南星、為主。
痰在四肢経絡、須用竹瀝、姜汁、為主。
痰在両脇、須用白芥子、為主。
老痰、須用海石、為主。

<第十一に続く>


【解説】
気鬱、湿鬱、熱鬱、痰鬱、血鬱、食鬱の
六鬱には蒼朮、香附を使用すべし。

結痰には瓜蔞、貝母、枳実を使用すべし。

湿痰には半夏、茯苓を使用すべし。

風痰には白附子、南星を使用すべし。

痰が四肢の経絡にあるには竹瀝、姜汁を使用すべし。

痰が両脇にあるには白芥子を使用すべし。

老痰(慢性の喀痰)には海石を使用すべし。

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蒼朮そうじゅつ

蒼朮『中医臨床のための中薬学』より
蒼朮『中医臨床のための中薬学』より

キク科のホソバオケラ、
もしくはシナオケラの根茎。
性味:辛・苦・温
帰経:脾・胃
効能:
①祛風除湿
・風湿痺、寒湿痺の関節痛や肢体の痛みに。
方剤例 → 二朮湯・桂枝加朮附湯。
・湿熱痺の関節痛や腫れ、熱感に。
方剤例 → 二妙散・三妙丸。

②燥湿健脾
・湿困脾胃の腹満や胸苦しい、悪心嘔吐、下痢などに。
方剤例 → 平胃散・胃苓湯。

③散寒解表
・外感風寒の頭痛や発熱、無汗、悪寒などに。
方剤例 → 神朮散。

④除障明目
・夜盲や角膜混濁、白内障などに。
方剤例 → 蒼朮丸。

香附こうぶ

香附『中医臨床のための中薬学』より
香附『中医臨床のための中薬学』より

カヤツリグサ科のハマスゲの細根などを除いた根茎。
性味:辛・微苦・微甘・平
帰経:肝・三焦
効能:
①理気解鬱:
・肝鬱気滞による胸の脹痛、腹満、憂鬱など。
方剤例→柴胡疎肝散。
・気、血、痰、湿、熱、食鬱による胸苦しい、嘔吐、消化不良などに。
方剤例→越鞠丸。
・寒凝気滞による腹痛やお腹の張りに。
方剤例→良附丸。

②調経止痛:肝鬱気滞による月経の乱れや痛みに。
方剤例→香附芎帰湯・艾附丸。

瓜蔞かろ

栝楼仁
栝楼仁

ウリ科シナカラスウリなどの全果実。
又は果実の皮殻、種子、種子から油分を除いたもの。
性味:甘・寒
帰経:肺・胃・大腸
効能:
①清熱化痰
・痰熱の咳嗽や粘質の痰、胸が苦しいなどに。
方剤例 → 栝楼枳実丸・清気化痰丸。
・小児の呼吸困難や呼吸促迫に・

②利気寛胸・降濁散結
・痰濁阻滞の胸痛に。
方剤例 → 栝楼薤白半夏湯。
・痰熱互結の胸痛や胸苦しい、咳嗽などに。
方剤例 → 小陥胸湯。

③消腫散結
・肺化膿症の咳嗽、血痰、胸痛などに。
方剤例 → 治肺癰方。
・乳腺炎や皮膚化膿症の初期の腫れや痛みに。
方剤例 → 治父癰方・栝楼牛蒡湯・神効栝楼散。

④潤腸通便
・腸燥便秘に。
方剤例 → 栝楼散。
・食滞便秘に。
方剤例 → 栝楼丸。

貝母ばいも

貝母『中医臨床のための中薬学』より
貝母『中医臨床のための中薬学』より

ユリ科のアミガサユリ属植物各種の鱗茎。
性味:
川貝母→苦・甘・微寒
浙貝母→苦・寒
帰経:心・肺
効能:
①清化熱痰
・外感風邪、痰熱壅肺の咳嗽や咽痛、黄色の粘質痰に。
方剤例 → 貝母丸・二母丸。

②潤肺止咳
・肺熱咳嗽や陰虚の慢性咳嗽に。
方剤例 → 貝母散。

③泄熱散結
・頚部のリンパ節腫や皮下結節に。
方剤例 → 消瘰丸。
・皮膚化膿症の初起に。
方剤例 → 消癰散毒湯。
・痰熱互結や気鬱化熱の胸痛や胸苦しいなどに。

枳実きじつ

枳実
枳実

ミカン科のダイダイ、イチャンレモン、カラタチなどの幼果。
性味:苦・微寒
帰経:脾・胃・大腸
効能:
①破気消積
・調胃湿熱積滞の腹痛や便秘、或いは下痢などに。
方剤例 → 枳実導滞丸。
・熱結の便秘や腹満、腹痛に。
方剤例 → 大承気湯。
・気滞血瘀の腹痛や腹満などに。
方剤例 → 通導散・枳実芍薬散。

②化痰消痞
・胸脇の痰飲で胸が痞えて苦しいや呼吸促迫に。
方剤例 → 導痰湯・滌痰湯。
・痰濁阻滞胸陽の胸痛や胸の痞えなどに。
方剤例 → 枳実薤白桂枝湯。
・寒疑気滞の胃痛や上腹部の痞えに。
方剤例 → 橘皮枳実生姜湯。
・飲食停滞・脾胃不運の上腹部の痞えや腹痛、食欲不振に。
方剤例 → 枳実消痞丸・枳朮丸。

半夏はんげ

半夏
半夏

サトイモ科のカラスビシャクの塊茎。
性味:辛・温・有毒
帰経:脾・胃
効能:
①燥湿化痰
・湿痰の咳嗽や痰が多い、胸苦しいなどに。
又は痰濁のめまいや動悸、不眠症などに。
方剤例 → 二陳湯・半夏白朮天麻湯。
・上記に熱証を伴うもの。
方剤例 → 温胆湯・清気化痰丸。
・風痰による嘔吐、頭痛、めまいなどに。
方剤例 → 玉壺丸・青州白丸子。

②降逆止嘔
・胃寒や痰飲の嘔吐に。
方剤例 → 小半夏湯・小半夏加茯苓湯。
・胃虚の嘔吐に。
方剤例 → 大半夏湯・乾姜人参半夏丸。
・胃熱の嘔吐に。
方剤例 → 黄連橘皮竹筎半夏湯・温胆湯。

③消痞散結
・痰熱の心窩部の痞えに。
方剤例 → 半夏瀉心湯。
・痰熱の小結胸で心窩部に圧痛があるときに。
方剤例 → 小陥胸湯。

④その他
・老人の虚秘に。
方剤例 → 半硫丸。
・生半夏を、皮膚化膿症に用いる。

茯苓ぶくりょう

茯苓
茯苓

サルノコシカケ科のマツホドの外層を除いた菌核。
性味:甘・淡・平
帰経:心・脾・肺・腎・胃
効能:
①利水滲湿
・水湿停滞の尿量減少や浮腫に。
方剤例 → 四苓散・五苓散。

②健脾補中
・脾虚の食欲不振や元気がない、腹鳴、水様便などに。
方剤例 → 四君子湯・啓脾湯・参苓白朮散。
・脾虚の水湿停滞で悪心や嘔吐、めまいなどに。
方剤例 → 二陳湯・半夏白朮天麻湯・六君子湯・小半夏加茯苓湯。

③寧心安神
・心神不寧の不眠や動悸などに。
方剤例 → 帰脾湯・安神定志丸。

白附子はくぶし

白附子『中医臨床のための中薬学』より
白附子『中医臨床のための中薬学』より

サトイモ科リュウキュウハンゲ属植物の根茎、
又はキンポウゲ科キバナトリカブトの根。
性味:辛・甘・大温・有毒
帰経:胃・肝・脾
効能:
①祛風化痰・止痙・止痺
・中風痰壅の顔面麻痺や半身不随、発語の障害などに。
方剤例 → 牽正散。
・風痰壅盛の嘔吐や痙攣に。
方剤例 → 白附飲。
・破傷風の痙攣に。
方剤例 → 玉真散。
・痰厥の頭痛や眩暈、悪心嘔吐に。

②祛湿止痒
・湿疹の痒みに。

南星なんしょう

南星『中医臨床のための中薬学』より
南星『中医臨床のための中薬学』より

サトイモ科のテンナンショウ属の植物。
性味:辛・苦・温
帰経:肺・肝・脾
効能
①燥湿化痰
・湿痰による咳嗽・胸が苦しい等に。
方剤例 → 導痰湯・白朮丸
・寒痰の咳嗽・痰等に。
方剤例 → 姜桂丸
・肺熱によるもの。
方剤例 → 小黄丸

②祛風解痙
・風痰のめまい・半身不随・顔面神経麻痺などに。
方剤例 → 青州白丸子
・破傷風の症状に。
方剤例 → 玉真散・五虎追風湯

③解毒消腫
・皮膚化膿症・リンパ節腫・蛇の咬傷に。

竹瀝ちくれき

イネ科ハチクの竹竿を加熱し、
そこから流れ出た液汁。
性味:甘・寒
帰経:心・肺・胃
効能:
①清熱滌痰・定驚透絡
・痰壅の中風や癲癇に。
方剤例 → 竹瀝湯。
・痰熱による咳嗽や呼吸困難、喘鳴に。
方剤例 → 竹瀝達痰丸。
・小児の痰熱による痙攣に。
・痰留経絡のしびれやひきつりに。

姜汁きょうじゅう

生姜をすり下ろしたり、砕いた搾り汁。
性味:辛・微温
効能:
・中風痰迷の牙関緊急や意識消失、嘔吐に。

白芥子はくがいし

白芥子『中医臨床のための中薬学』より
白芥子『中医臨床のための中薬学』より

アブラナ科のシロガラシの成熟した種子。
性味:辛・温
帰経:肺・胃
効能:
①豁痰利気
・寒痰壅肺の痰や咳嗽・呼吸困難などに。
方剤例 → 三子養親湯
・痰飲積滞胸脇の咳嗽や呼吸困難、胸痛に。
方剤例 → 控涎丹

②散結消腫
・痰留経絡による四肢関節の痛みに、
方剤例 → 白芥子散
・流注膿瘍や慢性で化膿傾向に乏しい陰疽に。
方剤例 → 陽和湯
・痰核や陰疽に。

海石かいせき

一般に軽石と呼ばれるもので、
火山の岩漿で形成されたもの。
性味:鹹・寒
帰経:肺
効能:
①清肺化痰
・痰熱の咳嗽や呼吸困難、粘質の痰などに。
方剤例 → 清膈煎。
・肺熱の咳嗽で血痰に。
方剤例 → 喀血方。

②軟堅散結
・頚部のリンパ節腫やシコリに。

③消石通淋
・尿路結石や出血性の尿道炎などに。


<参考文献>
『万病回春解説』 創元社
『万病回春.巻之1-8』 早稲田大学 古典籍総合データベース
『中医臨床のための中薬学』 医歯薬出版株式会社
『本草綱目』 国立国会図書館デジタルコレクション
『東方栄養新書』 メディカルユーコン

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下野