<近日開催予定のイベント情報>
11月10日(日)に学生向け勉強会を開催します。
詳しくはこちら→https://www.1sshindo.com/blog/zenith19132/


こんにちは、大原です。
今回から
第1巻「第13 津液から化生する五液の区別」に入ります。
この篇は、『霊枢』の五癃津液別篇(第36)が
もとになっているようです。
(参考:前回の記事 鍼灸甲乙経を読む その41

<原文>
黄帝問曰
「水穀入于口、輸於腸胃、其液別爲五。
天寒衣薄則爲溺與氣、
天暑衣厚則爲汗、
悲哀氣并則爲泣、
中熱胃緩則爲唾、
邪氣内逆、則氣爲之閉塞而不行、
不行則爲水脹。不知其何由生。」

岐伯対曰、
「水穀皆入于口、其味有五、分注其海、津液各走其道、
故上焦出氣。出気、以温肌肉、充皮膚者、爲津、其留而不行者、爲液。
天暑衣厚則腠理開、故汗出。
寒留於分肉之間、聚沫則爲痛。
天寒則腠理閉、氣濇不行、
水下流於膀胱、則爲溺與氣。

<読み>
黄帝問いて曰く
「水穀は口に入りて、腸胃に輸す、その液は別れて五となす。
天寒く衣薄きときは、則ち溺と氣となる。
天暑く衣厚きときは、則ち汗となる。
悲哀して氣并するときは、則ち泣となる。
中熱して胃緩るときは、則ち唾となる。
邪氣内に逆するときは、則ち氣これがために閉塞して行かず。
行かざるときは、則ち水脹となる。
その何によって生ずるかを知らず。」

岐伯対えて曰く、
「水穀は皆口に入る、その味は五ありて分かれてその海に注ぎ、
津液はおのおのその道に走る、
ゆえに上焦は氣を出し、もって肌肉を温め、
皮膚を充たす者、津と為す。
その留まりて行らず者、液と為す。
天暑く衣厚きときは則ち腠理開き、故に汗出づ。
寒、分肉の間に留まり、沫聚るときは則ち痛となす。
天寒するときは則ち腠理閉じ、氣とどこおりて行らず、
水下りて膀胱に流れるときは、則ち溺と氣となる。

<意味>
「水穀は口に入り、輸送されて腸胃に至り、消化吸収された後、
その中の液体成分は分かれて五となる。
天候が寒く、薄着のときは、溺と氣とになる。
天候が暑く、厚着のときは、汗となる。
感情が悲哀して氣が1ヶ所に偏るときは、泣となる。
中が熱して胃が緩むと唾となる。
邪氣が内に逆するときは、氣道が閉塞されて水気行かず。
水気が行かないときには、水脹の病となる。
余はそのようになるということは、知っているのであるが、
どのような経緯によってそのようなことが発生するかを知らない。」

岐伯が申し上ぐるには
「飲食物はすべて口中に入ります、
その中には酸、苦、甘、辛、鹹という五味があり、
その精微な部分はそれぞれ分かれて
その海に注がれ全身の栄養になります。
また、水穀の精微から化生された津液は、
おのおのその一定の道に走るのであります。

一般的に申しますと、
上焦から発生した精氣は肌肉を温め皮膚を充足したあと、
汗となって流れ出るのであります。
その汗となって出ていかないものは体液となって内に注ぎ、
濡養の任となるのであります。
天候が暑く着る衣服が厚すぎると腠理が開いて汗が出るのであります。
もし寒さが分肉の間に留まって津液が凝して沫となり、
沫聚るときには痛みとなります。
天候が寒くなりますと、腠理は閉塞し、氣は湿を帯び、
体内の気化は不良となり、
水分は下って膀胱に注流するときには
溺とガス(屁)となります。」

この中で
「皮膚を充たすもの、これを津となす」
とあります。
ここでは「津」を「汗」と訳していますが、
この根拠は、2つ前の記事
「鍼灸甲乙経を読む その40」の中で
「津」とは何かについて、
「腠理発泄し、汗出づること溱溱たり、これ津という。」
と記されていることによるようです。

この記述は、
『霊枢』では決氣篇(第30)にあるため
少し分かりにくいですが、
この『甲乙経』では1つ前の篇に記されているため
読み手が理解しやすいように
編集されていることがうかがえますね。

続きます。

胃の腑(『臓腑経絡詳解』より)
胃の腑(『臓腑経絡詳解』より)

参考文献
『黄帝内経霊枢』 東洋学術出版社
『鍼灸医学大系 黄帝内経素問』
『鍼灸医学大系 黄帝内経霊枢』雄渾社
『完訳 鍼灸甲乙経(上巻)』三和書籍
『基礎中医学』 燎原

興味のおありの方は、ぜひ参考文献もお読みください。

返事を書く

Please enter your comment!
Please enter your name here