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こんにちは、大原です。

前回は「これを営という」という内容、すなわち
「営気とはこういうものだ」ということが
書かれた部分を見ていきました。
(前回の記事 : 鍼灸甲乙経を読む その35
さて、その続きを見ていきます。

<原文>

「血之與氣、異名同類何謂也?」

「營衛者、精氣也、血者、神氣也。
故血之與氣、異名同類也。故奪血者無汗、奪汗者無血。故人生有兩死而無兩生也。
下焦者、別於廻腸、注于膀胱而滲入焉。
故水穀者、常并居於胃中、成糟粕、而倶下于大腸、而為下焦、滲而倶下、滲泄別汁、循下焦而滲入膀胱也。」


「酒者、熟穀之液也、其氣悍以滑、故後穀而入、先穀而液出也。」
故曰
「上焦如霧、中焦如漚、下焦如涜。此之謂也。」

<読み>
曰く
「血と氣とは、異名同類とは何の謂ぞや?」と。
曰く
「營衛なる者、精氣なり。血なる者、神氣なり。
故に血と氣とは異名同類なり。故に奪血する者は汗なく、奪汗する者は血なし。
故に人生は両死有りて両生無し。

下焦なる者、廻腸を別ち、膀胱に注ぎて滲入す。
故に水穀なる者、常に并びて胃中に居し、糟粕と成りてともに大腸に下りて下焦と為す。
滲じてともに下り、滲泄して汁を別ち、下焦を循りて膀胱に滲入するなり。」

曰く
「酒なる者、熟穀の液なり、その氣悍もって滑、
ゆえに穀より後れて入り、穀に先んじて液出づるなり。」

故に曰く
「上焦は霧の如く、中焦は漚の如し。此れを之れ謂うなり。」

<意味>
「血と気とはその名称は異なるが、
その実質は同類であると言われるのはどういうわけか?」
「営気と衛気とは、ともに水穀の精気の化成によってできたものであり、
血もまた、水穀の精を微と化し、中焦の作用によりできるものでありますから、
気と血とは名称はおのおの異なりますが、そのもとは同類であります。
ゆえに血液の消耗甚だしいときには汗を発することができないようになり、
また汗の脱すること甚だしいものは、血の気を失します。
脱陰するときはすなわち死し、脱陽もまた死にます。
それゆえに人生には両死はありますが、両生はありません。

下焦は途中において廻腸を切り離して膀胱に向かって進み
そこに参入するのである。それゆえに
水穀は常に並んで胃の中に居り、
その腐熟消化の作用によりて糟粕と成りてともに大腸に下り、
下焦となるのである。
滲じてともに下り、滲泄して汁を別ち、下焦に循って膀胱に滲入するのであります」

「酒とは穀の熟したものの液であります。
その氣はあらあらしく滑らかでありますので、
穀よりも後れて胃に入っても、穀より先に液となって出るのであります。」
「上焦は霧の如く、中焦は漚の如く、下焦は涜の如し、
ということを聞いているが、
それはこのようなことを謂うものであろう。」

さて、「糟粕」という言葉が出てきましたが、
これはどういう意味でしょうか?
よく「カス」「絞りカス」の意に訳されることが多いと思いますが、
考えてみましょう。
故に水穀なる者、常に并びて胃中に居し、
糟粕と成りてともに大腸に下りて下焦と為す。

という一文がありますが、
ここで糟粕=「カス」と訳すには無理があるように思います。
(この文章が、大腸に下ってから「カス」と成る、であれば、
「カス」と訳しても問題無いかもしれませんが)

漢字の意味からすると
・糟:「米」+「遭」 → いろいろな穀物が雑然と寄せ集まっていること
・粕:「米」+「白」 → 役に立たない穀物=「カス」
となり、したがって「糟粕」とは
有用なもの、無用なものなど、
いろいろなものが雑然と入り混じっていることを意味し、
決して「カス」だけでは無いことがわかります。

長くなりましたので、この辺りで失礼します。
次回は、最後の
「上焦は霧の如く、中焦は漚の如く、下焦は涜の如し」
の解説から行っていきます。


参考文献
『黄帝内経霊枢』 東洋学術出版社
『鍼灸医学大系 黄帝内経素問』
『鍼灸医学大系 黄帝内経霊枢』雄渾社
『完訳 鍼灸甲乙経(上巻)』三和書籍

興味のおありの方は、ぜひ参考文献もお読みください。

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