下野です。
前回までの『素問』霊蘭秘典論篇の続きで
『素問』刺法論篇における
蔵象を記事にしようと思いましたが、
前記事に書いたように刺法論篇は
臨床面からの視点が多く、
中には治療家の心持ちについて書かれた箇所もあります。
そこで、
蔵象にいくまえに
治療家として必要なこと、
所謂「医の倫理」というものを
中国医学では有名な孫思邈著『千金方』からではなく、
江戸期の伊澤蘭軒著『醫範』より紹介します。
とは言いながら、
書いている内容は『千金方』の「大医精誠第二」から
重要なところを抜粋したものになります(^_^;)
【原文】
小心大膽 圓智方行
必当安神定志、無欲無求、
先発大慈惻隠之心、誓愿普救含霊之苦。
若有疾厄来求救者、不得問其貴賎貧富、
長幼妍蚩、怨親善友、華夷愚智、
普同一等、皆如至親之想、
亦不得瞻前顧後、自慮吉凶、護惜身命。
見彼苦脳、若己有之、深心凄愴、勿避嶮巇、
晝夜寒暑、飢渇疲労、
一心赴救、無作功夫形迹之心。
【現代語訳(意訳)】
細心でありながらも大胆に、知識はかけることなく、その行いは正しく真面目であれ
必ず神志を安定させ、欲求を無くし、
大いなる慈しみやあわれみいたむ心を発して
生ける者の苦を救うと誓いを立てるべきである。
もし、病にかかり救いを求める者がいれば、
貴賎貧富や年齢、美醜、憎き者、親しき者、
同族、異族、愚者、智者に関わらず、
皆同じ様に接し、親族のように思い、
後先に悩まず、己の吉凶を考えず、
自らの命を護り惜しむようになってはいけない。
その者(患者)の苦悩を見ることを、己の苦悩であるようにし、
深く心に悲しみいたみ、危険を避けて通らず、
昼夜寒暑は問わず、自分に飢えや疲労があろうとも、
一心に救いに赴き、断る理由を考えてはならない。
となります。
「己を捨てよ」ということですね。
アイキャッチ画像は
「大医精誠第二」が書かれている
『(元板翻刻)千金方 30巻序目1巻』(京都大学附属図書館所蔵)です。






















