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咽喉頭異常感症(いんこうとういじょうかんしょう)
の東洋医学解説

「のどに何か引っ掛かった感じがする」、
「何かのどが気持ち悪い」、「のどがイガイガする」etc.
現代では診察・検査結果次第で
「咽頭炎」や「逆流性食道炎」等の診断がつくかと思いますが、
中には「検査しても何も見つからない」、
「原因がわからないと言われた」と仰る方もおります。

こういった症状を
「咽喉頭異常感症(いんこうとういじょうかんしょう)」と
言うようです。

はっきり言って、
なかなか聞いた事がない病名だと思います。
「原因がわからない」と書いてはいますが、
本当に原因はないのか?
治療方法は?
東洋医学の観点から解説していきます。

※ 咽喉頭異常感症は
・何らかの疾患により、咽喉頭部に異常感を感じさせる広義のもの。
・器質的病変(原因疾患)が発見されず、
 原因不明の咽喉頭部の異常感を感じさせる狭義のもの。
に分けられる。
当疾患解説は、後者(狭義)のものを指します。


◎東洋医学における咽喉頭異常感症

◉概要

咽喉が異物で塞がったようになり、
出そうとしたり、飲み込もうとするも取れないが、
飲食物の通過には支障がなく、
また咽喉の発赤や腫脹がないものを言う。

古くは張仲景(ちょうちゅうけい)の著書
『金匱要略(きんきようりゃく)』の
婦人雑病(ざつびょう:内科疾患)第二十二篇に

「婦人咽中如有炙臠、半夏厚朴湯主之。」
(婦人で喉に炙た肉が引っ掛かった様な症状には、
半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)が適応する。)

という記載があり、これが始まりとされている。
これが後世になると、
その症状がまるで「梅の種が詰まったような感覚」から
「梅核気(ばいかくき)」と呼ぶようになった。


◉病の成り立ちと治療方法

① 肝鬱気滞(かんうつきたい)
肝の生理作用の一つに
臓腑と精神活動を円滑に保つ
気の疏泄(そせつ)機能がある。
ただ、怒りや不安・心配事が続くことにより
この機能が失われ、
その結果 気の動きが停滞したために発生するもの。

【主症状】
咽喉部の異物感・気分が良いと症状は消える・頭痛・
怒りっぽい・抑鬱感・両脇が脹ってくる・月経痛etc.

【治療方法】
肝気を動かし、気の滞りを散らす。
(疎肝解鬱:そかんかいうつ)


② 肝鬱脾虚(かんうつひきょ)
①の肝の病が
脾(ひ)に乗じ(肝が強くなり、脾を抑制する)て
肝鬱脾虚になる。
五臓の一つで、
飲食物からの栄養物を全身に運んだり、
体内の水液(水湿)代謝を主る
脾の運化作用が失われることにより
痰湿(たんしつ)が生じ、
その痰と気が結びついて起こるもの。

【主症状】
咽喉部の異物感・胸苦しい・粘りのある痰etc.

【治療方法】
肝気を動かして脾を強くし、
痰を取り除くようにする。
(疎肝解鬱・健脾化痰:そかんかいうつ・けんぴかたん)


③ 肺熱陰虚(はいねついんきょ)
自然界の気候やその異常気象によって生じた
燥熱(そうねつ)の邪が肺を侵い、
肺陰を消耗させることで
咽喉を潤すことが出来なくなって起こるもの。

【主症状】
咽喉部の異物感、乾燥・咳嗽・熱感・盗汗(とうかん:寝汗)etc.

【治療方法】
熱を取り除き、肺を潤す。
(清熱潤肺:せいねつじゅんはい)


④ 気血両虚(きけつりょうきょ)
節度のない食生活、睡眠不足、
情志の失調(過度な感情の起伏)や病の慢性化、
または大出血により気と血が消耗して
五臓六腑の機能が衰退し、症状が生じたもの。

【主症状】
咽喉部の異物感・動悸・息切れ・食欲不振etc.

【治療方法】
気と血を共に補う。
(気血双補:きけつそうほ)



◎西洋医学における咽喉頭異常感症

◉概要

咽喉の違和感があるにも関わらず、
診察・検査を行うも異常所見を認めないものに
この病名がつけられるようで、
好発年代は
30~50代に多く、男性よりも女性に多いとされています。
別名で「咽喉頭神経症」「ヒステリー球」とも呼ばれています。


◉原因と治療方法

冒頭に記した
広義の意味での咽喉頭異常感症であれば、
各原因疾患に対する治療を行うが、
原因不明の為 治療方法は確立されていない。
現時点としては、
ストレスや不安感等から
自律神経系のバランスが崩れ
発症する人が多いと言われています。

その為、治療方法としては
抗不安薬や精神安定薬を服用し、
経過観察をすることと、
定期的なストレス発散が必要とされています。


[記事]下野

[参考文献]
『中医弁証学』
『傷寒雑病論』
『中医学の基礎』
『中医病因病機学』
『中医基本用語辞典』
『針灸学[臨床篇]』 東洋学術出版社

『基礎中医学』
『症状による 中医診断と治療』 燎原書店

『鍼灸医学辞典』 医道の日本社

『のどに異物が!咽喉頭異常感症はこれで治せ』 日正出版

『最新 医学大事典』 医歯薬出版株式会社

 

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