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ベーチェット病の東洋医学解説

現代医学的解釈

ベーチェット病とは?
口の潰瘍
陰部の潰瘍
皮膚の炎症
目の炎症
の四つの症状を主として
炎症を繰り返す慢性炎症性疾患です。
国に難病指定されている疾患の
一つでもあります。

【〜疫学〜どんな人に多いのか?】
世界的にみると日本をはじめとして
韓国や中国のアジア圏、また地中海沿岸の国に多く見られ、
別名「シルクロード病」といわれます。
男女差はほとんどありませんが、
男性の方が重症化しやすいとされています。

また最近の研究で遺伝的に
かかりやすい人がいることも
わかってきました。
また日本人の場合、消化管に
症状があらわれる人の傾向が
高いことも明らかになってきました。

【〜病理〜なぜ起こるのか?】
ベーチェット病の原因はまだ
明らかにされていません。

ただし遺伝的な要素(内因)に
ウイルスや細菌などの微生物の要素(外因)が
合わさって血管炎を引き起こし、
さまざまな症状が現れると考えられています。

【〜所見〜どんな症状?】

•口腔内の症状
口内炎が頻発します。
口の中に潰瘍ができます。
大きさが1センチ以下であるものがほとんどです。

•陰部潰瘍
ベーチェット病での発症率は
高くはありませんが特徴的な症状の一つである。
陰核や亀頭には出現しにくく
陰唇や陰嚢によく起こる。
口腔内アフタと同じく痛みを伴う。

•皮膚の炎症
ベーチェット病患者の80%で起こります。
結節性紅斑とよばれる硬さを伴った皮膚の紅い腫れや
刺激に対する過敏性がある。

通常1〜2週間現れた後、あとを残さず治ってゆく。
全身のあらゆる所に複数現れる
のが特徴的である。

•目の症状
患者の約半数にみられる症状です。
両目のブドウ膜と言う部分全体に炎症を引き起こし、
場合によっては急速に進行して失明にいたることもある。
その他にも虹彩とよばれる部分の炎症や
視神経の炎症などを引き起こす場合もある。



・その他の症状
割合としてはすくないが
消化管(小腸や大腸など)に潰瘍をひきおこす腸管型
体内の大きな血管で炎症をひきおこす血管型
神経系への症状がつよい神経型
などがみられ重篤になる場合が多く注意が必要である。

また膝や足首の痛みや炎症が約半数でみられる。

【診断】
上記の口、外陰部、皮膚、目の症状の有無から
判断するとされる。



伝統医学的解釈

ベーチェット病は現代の
病名・分類であり、
それに完全に対応するものはない。

以下、それに相当すると言われる「孤惑病」と
ベーチェット病の主要な症状について述べる。

〜孤惑病(コワクビョウ)〜

孤惑病は「咽喉」「口腔」「眼」「肛門もしくは外陰部」
の異常に加えて精神不安などの症状を伴う病である。
歴代の医家によってこの病の解釈は分かれるが

「狐惑之為病,状如傷寒,默默欲眠,
 目不得閉,卧起不安,
 蝕于喉為惑,蝕于陰為狐,・・・甘草瀉心湯主之。
 病者脈数、無熱微煩、黙々但欲臥、汗出。
 初得之三四日、目赤如鳩眼。七八日、四目眥黒。」『金匱要略キンキヨウリャク』

(意訳:孤惑病の病は傷寒のようであり、眠たくなるが、
目を閉じることができず、常に不安となる。
喉を蝕むのを惑とし、陰部を蝕むのを孤とする。・・・甘草瀉心湯がこれを治す。
病は脈数で熱が無く微煩し、ただ横になろうとして、汗が出る。
病が表れて三四日は鳩の目のようにあかくなり、七八日経つと目尻が黒くなる)

*歴代の医家によって解釈はさまざまであるが
孤惑病での代表処方が甘草瀉心湯であることからも
胃の気虚と湿熱が中心的な病理であると考えられる。

【治法】
清利湿熱、益気和胃

以下、個別の症状について解説する。


眼症状

「三四日、目赤如鳩眼者、
 肝臓血中之熱、随経上注於目也。」
『金匱要約心典キンキヨウヤクシンテン』
(意訳:目の症状が現れてしばらくすると目は赤く鳩の目のようになるものは
肝の血熱が経絡に随い炎上し上部にある目へ注ぐからである。)

「七八日、四目眥黒者、是熱瘀血腐、故眥絡黒也」
『医宗金鑑イソウキンカン』
(さらに日が経つと、目の四隅が黒くなる。
これは熱によって血瘀ができそれによって黒くなるのである)

ここで眼の炎症症状は肝にある血熱ケツネツが熱の「炎上性」
によって上部にある目を焼くためにおこると考えられている。
また血熱が長く留まると血瘀ケツオを形成する。

【治法】
・清瀉肝実火セイシャカンジッカ
肝の熱を冷まし、熱を鎮める

・活血化瘀カッケツカオ
瘀血をくだき血の巡りをよくする


口内生瘡コウナイセイソウ

口の中の粘膜や舌に潰瘍やびらんが生じることを言う。
いわゆる口内炎である。

『黄帝内経コウテイダイケイ』のなかでは
「口糜コウビ」「口瘡コウソウ」「口瘍コウヨウ」と記載されている。

【病因病理】
 「手少陰、心之経也、心気於舌。
 足太陰、脾之経也、脾気通於口。

 府蔵熱盛、熱乗心脾、気衝於口与舌、
 故令口舌生瘡也。

 診其脈、浮則為陽、陽数者、口生瘡。」

『諸病源候論・口舌瘡候』
(意訳:手の少陰経は心の経絡であり、心の働きは舌にあらわれる。
足太陰経は脾の経絡であり、脾の働きは口に通じている。
府蔵の熱が盛んとなれば、熱は心脾に入り、炎上して口と舌を襲い、
口舌に瘡を生じさせるのである。)

ここでは蔵府に生じた熱が心脾を通って
上に突き上げることによって
症状があらわれると述べている。

「口舌生瘡、固多由上焦之熱、治宜清火、然有酒色労倦過度、
脈虚而中気不足者、又非寒涼可治、・・・」『景岳全書ケイガクゼンショ・口舌』
(意訳:口内炎を生じるのは、もとから上焦の熱が多いためであり、
火を冷ます治療(清火)を施せばよい。ただし飲食や性生活や過度の労働で
脈が虚して中気不足のものは、体を冷ます治療をしてはならない。)

ここでは口内炎の原因として「熱」だけでなく、
体が弱ることによる「中気の不足」があることがわかる。

【治法】
・清熱瀉火セイネツシャカ(脾、心)
(脾もしくは心の)余分な熱を除き、体の熱量を下げる。

・補気健脾ホキケンピ
脾の働きを健やかにする。


陰瘡インソウ

陰瘡は陰蝕インショクとも呼ばれ、外陰部に潰瘍を形成して
痒み、痛み、腫れ、帯下などの症状を表す病名である。

【病因病理】
「・・・若蔵府調和、気血充実、不能為害。
 若労傷経絡、腸胃虚損、

 則動作浸食於陰、軽者或痒或痛、重者成瘡也。」

『諸病源候論ショビョウゲンコウロン・陰瘡候インソウコウ』


「…此皆由心神煩鬱,胃氣虛弱致氣血流滯…」

『女科證治準繩・陰蝕』
(意訳:これらはみな心神の煩鬱によって、胃の働きが弱くなり気血が滞ってしまう)

ここでもやはり心との関わりが述べられる。
また胃気が虚弱になったために邪実がたまることを述べる

【治法】
補心和胃ホシンワイ
心の働きを高め、胃を調える

清利湿熱セイリシツネツ
湿と熱を身体から排泄する

[記事:盧]
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参考文献
『Harrison's Principles of Internal Medicine 19th ed 』
『黄帝内経素問』人民衛生出版
『霊枢経』人民衛生出版
『金匱要略集注』学園出版
『校釈 諸病源候論』緑書房


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