鍼灸師・林玄一より才能あふれる獅子達へ贈るメッセージ /大阪の鍼灸院 (針灸院)一鍼堂

神戸三宮院豊中院

眠れる獅子達へ。


自分は小さい頃、一番の特技が絵を描く事だった。
しかし、10歳頃か。
私の前には天才が現れた。
タナカ君。
圧倒的な能力。敵わない。
僕は将来 絵を描いて生きて行く事はその時諦めた。
ある時、絵を描いて生きて行かないかと美術の先生に
言われたが彼の存在に自分の能力を思い知らされていたため断った。
天才の彼は今、何をしているか。

少年時代、
勉強が第一の資質として測られた。
自分もどこまで出来るかやってみようと、
一度本気で勉強してみた。
クラスで一番は取れた。
なんとか学校で三番になった。
予備校に行ってみた。
頭のいい奴がわんさかいて僕は自分はこの世界では凡人だと知った。
まさに井の中の蛙だった。
勉学の世界では、通用しないのが明らかになった。
勉強が得意なあの友人達は、
何をしているのかな。

青年時代に、
悪い連中に
人通りの少ない場所に連れて行かれ
袋だたきにあった。
彼らの圧倒的な理不尽な力の前に
ああ、私はこの世界でも生きてはいけないなと感じた。
出来れば触れたくもなかった。
暴力の世界やパワーの世界は
理屈じゃなく、僕には向いてないと。
ブルース・リーはたまらなく好きで
よく真似をしたが、
それも僕には役に立たなかった。
理不尽さを感じるだけだった。
彼らは何をしているだろうか。

僕がこの世界(鍼の世界)に入る前、
周囲には僕を圧倒する天才達がいた。
各人がなんらかの才能を輝かせていた。
僕は彼らの前ではいつだって無力に思えた。

彼らの才能に僕は、なにから何まで敵わないと絶望し、
せめて一つ、人生でこれだと思うものだけは誰にも負けないよう
努力しようとたった一つ決めて生きて来た。
それが僕に対する鍼の道だ。
一つに定めないと才能あふれる彼らには到底敵わないからだ。
また、鍼の道においては
不思議と誰かの才能に対して自分の能力が
及ばずに絶望するといったことがない。
ゆえに自分では天職だと思っている。

あれから年月が経ち、
彼らの多くはあんなにも才能に溢れながらも
才能を過去の場所を置き去りにして
自分の才能に合わないことを生業として生きている。
こんなに残念な事はない。

鍼灸師・林玄一 2010.09.24